40 人間の勝利を望む者達②
「ワッハッハッハッ!!あの人間もおもしれぇ奴だぁ!!天下の魔王様とメーラさんにここまで信頼されてるたぁ…羨ましいぜ!!」
ウザインは突然破顔させると、大笑いしながら愚民様を称える…。
彼の笑う姿を見るといくらか緊張が和らいでいくようだ…。
まったく…面白い方です。
「…ウザインはどうされますか?ここでフィールの応援でも…」
「おいおいおい…。なーに言ってんすかぁ!メーラさんが認める奴なら、そっち応援すんのがおもしれぇでしょ!!」
「ふふっ…。あなたならそう言うと思いました…」
他愛もない会話…。
これから始まる死の決闘を前に変な話だ…。
ウザインとのやり取りを見て、クリス様にも笑顔が戻ってきた。
「…アハハハハ!!ウザイン…お前は面白いやつだな!」
「いやぁ…嬉しい限りです!こんなアホですが、魔王様に誉められるなんて…一生の思い出になりそうです…」
「いやなに…見ず知らずの人間を認めてくれたんだ!嬉しいのは私も同じだよ」
さっきまでの陰鬱な雰囲気が吹き飛ぶのを感じる…。
もうそこには決闘に対する不安はない…。
愚民様はきっと…
「おーい!残り5分!人間に賭ける奴来いよ!」
「そうだぜぇ!早くよぉ!面白くねぇ!」
…そう言えば忘れていました…。
まだギャンブルを続けていたなんて…。
苛立ちが溢れそうになったその時
「…?なにしてんすか?あいつら?」
ウザインは騒ぎの方向を見ると、ギャンブルをしている者について尋ねてきた。
「…どうやら、どちらが勝つか賭けているようですね…。まったく腹立たしい…」
「なるほどね…んなら一肌脱ぎましょうかね!」
そう言ってウザインは腕をたくしあげると、騒ぎの方へ向かおうとする。
いけない…。
止めなくては…。
「ウザイン!手荒な真似は…」
「大丈夫ですよ!ちょっと荒らすだけなんで!」
「荒らすって…」
「まぁ見ててくださいよ!面白くなりますぜ!」
…一体何をする気なのか…。
不安です…。
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…くっそー!
誰も賭けてくれやしねぇ!
せっかくのギャンブルが台無しじゃねえか…。
人間とフィール様の決闘ってのがダメだな…。
戦力差がひどすぎんだよ…。
だれか人間に賭けるやつぁ…。
ん?
だれかこっちに来るぞ…。
あいつは…ウザインじゃねぇか!
「おっ!ウザインじゃねぇか!仕事の方はどうよ!」
俺の呼び掛けにウザインは笑顔と共に応える。
「おぅ!今終わったとこよ!ビーンズは?」
「俺も終わったとこだぜぇ!ウザインもどうよ!ギャンブルやってんだけど、お前も賭けてみねぇか?誰も人間にゃ賭けてねぇがよ!」
どうせウザインもフィール様に賭けるんだろなぁ…。
「よっしゃぁ!んじゃ俺は…」
「人間様に全財産かけてやらァ!!」
へ?
こいつ…何をいって…
「はっ?おまっ…何を…」
「ん?人間に賭けんだよ!わりぃか?」
「いや…悪くはねえけど…」
いや…全財産って…。
まぁ、ギャンブルが成り立つからいいけどよ…。
何て思ったら…
「マジかよ!ウザインが賭けんなら俺も人間に…」
「おっしゃあ!俺も人間に…」
「俺も!」
「俺も頼むわぁ!」
ぇ?
おいおい…お前らなんで人間に賭けるんだよ…。
「なんで…」
俺の疑問に横にいた魔物があっさりと答えた。
「ん?ビーンズは知らねぇの?ウザインってすんげぇ豪運持ってんだぜ?この前なんか大型カジノ挺をパンクさせたぐらい…」
えっ?
うそ…。
やべぇ…。
俺…フィール様に賭けちゃった…。
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「クリス様…これは…」
さっきまでの様子が一変…。
突如として愚民様に賭けるものが増えた…。
まさか、ウザインの一声でここまで…。
「あぁ…動機は不純だがユキの応援をするものが増えたようだ…。あいつには感謝しないとな…」
「えぇ…。さすがはウザインですね…」
きっと愚民様は驚くでしょうね…。
ここまで応援されると…。
自信にも繋がるというものです。
フィールとの決闘まで残り2分…!