39 人間の勝利を望む者達①
眠い…。
けど頑張る!
ウザインの力を認めたクリス様は、ふと…ある点について指摘する。
「…それにしても…よくフィールにばれなかったな…」
「はい…。まぁ、私も決闘を運営する立場でしたから…。フィールも疑いの目は向けていませんでしたね…」
元々、決闘を提案したのは私。
それが二人のどちらにも肩入れしないという証になり、結果として愚民様の協力者である事実を隠すことができたと言える。
「いやぁ…驚きました!まさか、あの人間がメーラさんと繋がっていたなんてねぇ…。んでも、メーラさんが認める程の奴なら、こっちとしても協力しねぇとなぁ…と思ったわけですわ!」
ウザインはいつものハイテンションで私との協力関係を語りだした…。
…本当に憎めない性格ですね…。
オークといえば醜く、思慮に欠ける印象を持ちそうだが、ウザインは例外。
戦況を判断する力に優れ、前線で敵をなぎ倒す戦闘力を持っている。
私もそうした彼の強みを認め、何度か彼を助け、また彼に助けられたことがあるのだ。
まさに信頼に足る兵士…ウザインほど優秀な者はそうはいない。
…やや面倒事を起こすこともあるが…。
「…そんで…どうですかね?今のままならあの人間は…勝てそうですかい?」
ウザインは眉間にシワを寄せ、私たちに愚民様の様子について質問してきた。
…言うべきことは決まっている。
「ええ…大丈夫です。きっと彼なら勝てるはずです」
私の…そしてクリス様の表情から何かを感じたのか…ウザインは真剣な眼差しを向けてきた…。
「…冗談…じゃあなさそうですね…」
「えぇ…彼の力を信じてますから…」
例えどれ程の絶望的な状況であっても信じきる…相手があのヴァンパイアの女王、フィールであっても…。