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60 一筋の光

「…つーか…話はそれだけかよ?こっちは早く寝転びてぇんだけど…」


「おい貴様!レイヴォルト様に失礼だろう!」


 俺の無礼な言葉に憤る看守のおっさん…。んまぁ…当然の話なんだが…。ただ…こんな優等生っぽいやつとなんのためにもならない話をしても疲れるだけだ…。


 早く寝転んで…脱獄の計画を立てた方がいいような…。


 そんな俺の様子を見てレイヴォルトは…


「ふっ…まったく…少年の豪胆さには驚かざるを得ないな…。それとも…この状況を打破する自信でもあるのか?」


「…俺がそんなふうに見えんのか?」


「…正直に言うと…そうは思わんが…」


「…っておい!」


「ただ…なにか修羅場を潜ってきた雰囲気だけは感じるよ…。私の直感だが…」


 うーむ…。こいつ…なかなかに鋭い…!フィールとの激闘を経験したからそんなふうに見えたのかねぇ…。俺って…大物感あるかも!


 そんな俺の自画自賛の気持ちに気づくことのないレイヴォルトは、はぁ…とため息をつくと口を開いていく…。


「仕方ない…出直すことにしよう…。少年…それまでになにか思い出すことがあれば連絡するように…」


「おっ…思い出すって…なにを?」


「まぁ…なにを…と言われるとわからんが、大切なことがあれば…というところだな…。特にハルア教や白き竜に関することであればありがたい…」


「そっ…そんなもん…わかるわけ…」


「おい!時間だ!囚人!出るぞ!」



 ガタッ…!ガタガタ…バタン…!


 …カチャン…



「ちょっ…!痛い痛いっ!もうちょい優しく…」


「この馬鹿っ!暴れるな!机がレイヴォルト様にも当たってしまったではないか!」


 くそっ!あんまりにも看守のやつが乱暴にするから、机が倒れちまった…。しかもレイヴォルトの体にぶつかったような…。


「む…」


 レイヴォルトも表情は曇ってる…。うわぁ…やっちまった…。文句は看守のおっさんに…


「来い!早く!」


「うげぇっ!だから…!もうちょっと…!」 





 こうして…


 俺の必死の言葉もむなしく…この日はこのままお開きとなってしまった…。この国に来てわからないことだらけだってのに…どうしたもんか…。


 あー…ヤバイ…。めんどくさいことこの上ないわ…。






「ふぁぁぁぁ…眠い…」


「お前っ!結局なにもしてないのねっ!!」


「いやぁ…申し訳ない…」


「そんなこといいから…早く脱獄計画を立てるのね!」


「…疲れた…」


「むぅぅぅぅ!!!」


 あれから…俺は無事に部屋までたどり着くと、そのまま寝転んで…今に至るわけだ…。影から出てきたティナにポコポコ叩かれながらぐーたら…。


 だってよ…脱獄計画とか…無理じゃね?寝転んでいた方が有意義な気がしてきた…。


「はぁ…なんかこう…素晴らしいアイデアとか浮かべねぇもんかなぁ…」


「だ・か・ら!それをティーと一緒に考えるのね!」


「無理…疲れた…」


「こっ…このっ…あんぽんたんっ!」



 ポコッ…!



「…つーかお前って…力弱いのな…」


「…っ!!…そっ…そんなの…仕方ないのね!か弱い女の子なんだから…当たり前なのね!」


「か弱いねぇ…」


 一応…魔王軍の三大幹部なんだよな…。なんかこう…予想外って言うか…。


 そんなことを思っていると、ティナは疲れたような表情を浮かべると…


「はぁ…せっかく面白いものを持ってきたのに…こんな調子じゃ期待できないのね…」


「おん?面白いもの?」


 なっ…なんだ?こいつ…なにを持ってるってんだ…?


「レイヴォルトとの面会の時…机が倒れたのは覚えてるのね?そのときにあの男…妙なものを落としていったのね!」


「レイヴォルトが…妙なものを?」


「これなのね!」



 ジャラッ…ジャララ…



 うむ?なんか金色に光る…ロケットペンダント?…みたいなものだなぁ…。なんかスゴく高価なものって言うか…何て言うか…。


「つーか…お前盗んだのかよ…」


「ふん!落ちてたものを拾ったのね!他のやつらに見つからないように…手だけ抜け出るのは大変だったのね!」


「はぁ…お前ってなんかすげえわ…」


 …しかし…気になるなぁ…。レイヴォルト…剣聖の私物ってどんなもんなんだろ…。実はどんな魔法でも繰り出すことのできるアイテムとかかもしんねぇし…。これは確認しなくては…。


「なぁ…ちょっと見せてくれよ!」


「…やっとその気になったのね…」


「んまぁ…もしかしたらなんかに使えるような気がしてよ…」


「ふぅ…ほら…受けとるのね!」



 ヒョイッ…カチャッ…



「おいおい!投げ渡すことねぇだろ!あぶねぇじゃん!」


「まっ…無事に手にしてるならいいのね!」


 はぁ…まったく困ったお嬢ちゃんだよ…。確かに受けとりはしたけどよ…。


 それにしても…


「なんつーか…よくわかんねぇな…こーいうの…。なんかのアイテムなら使えそうなんだけど…」


「…一応言っとくけど…それはアイテムでもなんでもないのね!」


「…はぁ?」


「さっき中を確認してみたのね!なんか…男の子と女の子が写ってる写真があったのね…」


 そっ…そんなぁ…。そんなもん…脱獄にはなんの関係もねぇじゃん…。


 んまぁ…確認だけでもしてみるか…。



 カチャッ…パカッ…



 ほほう…なるほど…。この小さなスイッチみたいなもんをさわると開く仕組みかぁ…。


 そして…中にはティナの言ってた通りの写真が…。やや茶色く汚れているが、見れないほどじゃない…。


 一方は緋色の…短い髪の毛を持った男の子…。もう一方はやや金色に光る…綺麗な髪の毛を持った女の子が…。二人仲良くこちらを向いて、笑顔で手を繋いでいるようだ…。ふーむ…和むねぇ…。


 あれ?…もしかして…


「…ん?この男の子…」


 俺のそんな疑問の声を聞いて…ティナは複雑そうな表情を浮かべながら答えることに…。


「ふぅ…気がついたようなのね…。その男の子は間違いなく…レイヴォルトなのね…」


「…マジか…」


「髪の毛もそうだし…顔もどこかしら雰囲気があるのね…。たぶんあの男にとって、この写真はかけがえの無いもの…なのね…」


「そうか…あいつにも…」


 俺にはわかる…。この写真に写ってる女の子があいつにとって大切な…それでいて忘れられない存在だってことが…。


 なんつーか…意外な面が見れて衝撃…


 …なんだけどなぁ…


「結局…脱獄の手がかりには…ならねぇか…」


「…そっ…そんな簡単に諦めることないのね!なにかないのね!?この写真から…こう…脱出できる…方法とか…」


「ティナ…こんな仲良く写ってるだけの写真に期待なんて…」


「むっ…むぅぅぅ!!お前なら…なにか手がかりをつかめると思ったのに…!!仮にも魔王軍軍師なんだから…ちょっとは…!」


「いや…そんな無茶な…」


 そうやって…俺はいつも通り首を降るだけの反応を送ろうとした…






 その時…







「…んぅぅ?この…女の子…」


 …なにか…変だ…。俺…なぜか…女の子の方を見たことがあるような…。それもごく最近…この世界で…。


 いやいや!!あり得ない!レイヴォルトと会ったのはちょっと前が初めてだ!なのに…女の子の顔を見ると…なんか…引っ掛かるような…。


 なにか…重大な何かを…知っているのか?


「?どうしたのね?そんなに頭を抱えて…」


 ティナの声を無視して…俺はひたすらに考えた…。











 これまでの旅路…戦い…出会い…。


 そして…この世界…『Wonder Slam Worker』…。


 それらすべてが重なりあい…俺の思考がフル回転し…そして…











 ひとつの結論へとたどり着いた…。











「…なぁ…ティナ…。ひとつ…俺の考えを聞いてくれないか?」


「なっ…なんなのね!突然…」


「もしかしたら…俺の推測が正しかったら…いけるかもしれねぇんだ…」


「?…何が…いけるのね?」


「決まってるじゃねぇか!」











「この…クソきったねぇ監獄からの…脱出だよ!」

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