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53 突然の乱入者

 「さぁ…ユキ君?どうするの?今ならクリスちゃんは助けられるかもよ?…『狂愛』を解除して…適切な処置をすれば死ぬことはないわ…♪」


 「なんで…お前なんかの言う通りに…!」


 「…これはお願いじゃないわよ?それは…わかってるわよね?」


 「くっ…!」


 何とかしてこの現状を変えたいってのに…なにも思い浮かばねぇ…!時間は限られている…クリスが死ぬかもしれない…!

 一番手っ取り早いのは、パルバリーナのやつをブッ倒すことだが…ほぼ一般人の俺じゃあそんなことできるわけない…。そもそもそんなことしてたら、クリスを余計に危険な目に遭わせるだけ…。

 …そうなると…くそ!やっぱりこいつの言う通りにするしか…!


 「…教えろよ…」


 「…教えるって…何を?」


 「お前らの本当の目的だよ!別に俺は特別なやつでもなんでもねぇ…!吹けば飛ぶような…ただの人間だろが!」


 「…そうかしら?少なくともあなたはただの人間じゃないわよね?」


 「…いったいなんのこと…」


 そう俺が口にしたとき…



 ゴソゴソ… 



 「…きゅーん…」



 …!…そういえば…キューちゃんも一緒だった…!とりあえず俺の胸ポケットの中で休ませていたことをすっかり…。

 だが…今はあまりにもタイミングが悪すぎる…!こんな危険な状況…キューちゃんを巻き込ませるわけには…。


 「あらあらあらあら…やっぱりねぇ…。白きドラゴンはあなたに夢中なようね…」


 「!…お前…なんでキューちゃんのこと…」


 「フィールちゃんとの戦い…知らないわけないでしょう?」


 パルバリーナはクスクス笑うと、まるで俺を小馬鹿にしたように微笑む…。なにもかもお見通しってわけか…。


 「…白きドラゴンには特別な力が宿っている…それを操ることは世界を支配することと同義…なーんて言われたことはない?」


 なんだよそれ…。キューちゃんがそんなにスゴいのかよ…。そりゃ強いことは知ってるけど…。

 …ってまさか…


 「俺が…キューちゃんと一緒にいることが…お前たちの目的に関係してんのか?」


 「あらあらあらあら…ものわかりがよくて助かるわぁ…。つまりはそういうことね…」


 こいつ…!そういうことか…!

 たぶん…俺の推測だが、キューちゃんには特別な力があって…その力を利用するために俺を連れ去りたいんだ…。

 未知の存在であるキューちゃん…。あいつらの真の目的は…キューちゃんにあるんだ!そんなこと…させるわけには…!


 「うぐっ…うっ…!」



 ボタボタ…ピチャッ…



 くそっ!ダメだ!クリスをこのままにしたらマズい!…けど…助けるためには俺がこいつらについていくしか…。

 そして…それはクリスを助けることにも、裏切ることにもなる…。俺は…


 「白きドラゴンを操るだけでもあなたは普通じゃないわね…。だからこそ…私たちはあなたに目をつけたわけだけど…」


 「目をつけた…俺にそれだけの価値があるってのかよ…」


 「そうねぇ…少なくとも白きドラゴンを操ることができるのはあなただけみたいだしね…」


 「…キューちゃんを…てめぇらの目的に巻き込ませるわけには…!」


 「何度も言うけど…これはお願いじゃないの…。あなたには退路はないのよ?」


 …くっ!どっちにしても俺に残された道は一つ…か…。俺はその場で立ち上がり、パルバリーナの要求に答えるよう、頭を下げ…



 ガシャァァァ…ン…!バリンッ…!



 「…!!?な…何が…」


 「あらあらまぁまぁ…これはこれは…」


 突然…壁をぶち壊す音が部屋に響き渡る…。元々がボロい家なだけあって、壊れ方は相当激しい…。破片がそこらじゅうに散らばり、さっきまで過ごした家の中は一気に崩壊しそうなほどに…。

 そんな中で姿を表した張本人は…









 「…ったく…まさかこうなるたぁ…ね…。パル…まだ生きてたのかよ…くそったれ…!」


 大きく隆起した腕の筋肉…見たものを震え上がらせる体格…。間違いねぇ…こいつは…


 「ウザイン!…なんで…ここに!」


 「…お前さんたちに依頼を頼んだっていう果物屋に行ってみたら…なんか店主が死んでたんでよ…。そんで…んまぁ…怪しいと思ってな…」


 「嘘だろ…店主のおっちゃんが…!」


 「…あとはお前たちの匂いを便りにここまで来たんだが…ちと遅かったみてぇだ…わりぃ…」


 …まさかウザインが来てくれるなんて…!あんまりにも突然だから驚いちまった…。…いや!これはマズい!


 「ウザイン!すぐに逃げろ!こいつ…無差別に殺しち…」


 「『狂愛』…だろ?」


 えっ…なんで…!


 「俺とこいつにはぁ…ちょいとした因縁があってよ…。こいつのことはなんでも知ってる…。もっとも、今も生きてる…なんてのは知らなかったが…」


 ウザインの表情は落ち着いてるように見えるが、なんか…相当ブチ切れているような…。少なくともパルバリーナへの怒りは本物のようだ…。

 対するパルバリーナは…


 「ふふふ…そんなこと言わないでよ…。私はあなたのことをずっと忘れてなかったのに…」


 因縁の相手だというのに微笑みを崩さない…。まるで…喜んでいるような…そんな思いが伝わってくる…。

 それにしても…ウザインとパルバリーナが知り合い…?こんな人殺しと…因縁があったなんて…。ウザインって…ナニモんなんだ…?


 「ここは俺に任せろ…。こいつの力…『狂愛』は俺がいれば影響はなくなるからよ…。早く魔王さんを連れて逃げろ!」


 「えっ…なっ…なんで…!」


 「いいから逃げろ!どうやらこいつ…この国の人間と手を組んだみてぇだ…!この家の周辺…人間のやつが取り囲んでやがる!」


 「…はっ!?思考が追い付かねぇ…!わかるように…」


 「黙って逃げろ!死にてぇのか!?」


 ぐっ…!くそっ…!わけわかんねぇが…ウザインの言う通りにするしかねぇ…!

 俺はぐったりしたクリスを抱えると、そのまま全速力でその場をあとに…。


 「ウザイン…死ぬなよ!」


 「…お前もな…」


 立ち去る瞬間…ウザインの顔にはいつもの余裕はなかった…。そこにあったのは、パルバリーナヘの憤りのみ…。このあとどうなるのか…このときの俺はそこまで頭が回らず…ただ走り去ることしかできなかった…。

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