35 信じてくれ…
「ふふっ…」
「?クリス…様?」
どうしたのだろう…。
私の言ったことがおかしかったのか、クリス様は突然笑いだした。
先程までの緊張感がふっと緩む。
「…メーラは勘違いをしているな」
「勘違い…ですか?」
「あぁ…確かに私はユキを愛している。おそらくこの世界で一番に…。だが、だからといって一緒に死ぬことまでは考えていないよ。そんなことしてもあいつは悲しむだけだ」
「そっ…そうだったの…ですね…」
…恥ずかしい…。
私はクリス様の事を理解しているようで、まるで理解していなかった。
そうだ…クリス様はそんなことはしない…。
私はいくらか安堵した…。
「さて…せっかくだ。メーラも約束してくれないか?」
「約束…?」
なんだろう…。
今ここでどんなことを言われるのか…。
…とはいえ、どんな約束も受けるつもりではあるが…。
「ユキを…信じてくれ」
「…ユキ様を…」
「あいつは…一人で戦うんだ…。誰か一人でも信じるものがいないと負けるかもしれない…。だから…」
…そうだ…。
信じなくてはいけない…。
ユキ様の意思を継ぐ愚民様を…。
なんとしても…。
それが今、私に出来る唯一のことなのだから…。
「…約束いたしたします…。必ず…ユキ様が勝ってくれることを…信じると…!」
フィールとの決闘まで残り3時間40分…。