34 メーラの思い②
「おーい!!誰か人間に賭けるやつぁいねぇのか?これじゃー賭け事になんねぇよ!」
「おいおい…ロッシ…人間に賭けるなんてバカのすることだろ…。相手はあのフィール様だぜ?どうやって人間が勝つんだよ!」
「はっはっはっ!言えてるぜ!おい!ロッシ!諦めろ!」
私たちがいる特等席から少し離れた所で、複数の魔物たちがたむろしている。
話の内容からして決闘の勝ち負けを予想しているようだ…。
…こんなときに…。
クリス様のことを少しは考えられないのか…。
私は手荒い制裁を加えようと席を立つ…が
「メーラ…やめてくれ。事を荒立てることはしたくない」
クリス様が私の腕をひしと掴み、制裁を止めようとした。
「…クリス様…」
「あいつらのことなど気にする必要はない…。ユキは必ず勝つからな…」
「…そうですね…」
私は一旦頭を冷静にさせ、再びクリス様の隣に座る…。
…苦しい…。
私としたことが…ここまで気持ち悪いものを感じるとは…。
そんな思いを抱いていると、突然クリス様が私に尋ねてきた。
「メーラは…信じているのか?ユキの事を…」
…信じているか…。
正直な話、自信はなかったものの…
「…私は信用していますよ…」
嘘をついた。
クリス様を不安にさせないために…。
しかし
「嘘だな…本心ではユキが負けるかもしれない…と思っているのではないか?」
あっさりと看破される。
…さすが…です。
「…申し訳ありません…。下らぬ嘘を…」
「いや…私を思ってのことだろう?気にするな…」
「はい…」
…だめだ…これでは余計に…。
「私は信じているぞ」
「えっ?」
「ユキは必ず勝つ…。あいつの悪運は強いからな」
「クリス様…」
「そして…きっとフィールのしがらみ…人間に対する恨みも晴らしてくれる…。あいつは約束したんだ…助けるって…」
…本当に…強い絆です…。
実際は出会ってまだ日も浅いはずなのに…。
私は…未熟ですね…。
「クリス様…一つ…約束してくださいますか?」
「ん?なんだ?」
今…どうしても話したかった事をここで…。
「ユキ様が…その…万が一負けても…心中するようなことは…しないでください…」