32 魔王様の看病
そのとき…
ガチャ…
「…ユキ!気がついたか!良かった…」
部屋の中へクリスが入ってきた…。
いつもの鎧に身を包んだ姿ではなく…フードを被った状態…。
クリスの角を保護するために猫耳風のフードなわけだが…けっこう可愛いぞ…。
ほんのちょっぴり汗をかいてるようだが…俺のことを看病してくれたのかな…。
「まったく…無茶をして…。私がどれほど心配したか…」
「うっ…わりぃ…」
「だが…私を助けてくれたのは嬉しかったよ…。ありがとう…」
クリスに面と向かって感謝されるなんて…。
なんかこっ恥ずかしいぜ…。
少し小さめのお椀を持ってきたようだが…もしかして…
「医者に勧められてな…。栄養のある食べ物を持ってきたぞ…。…お粥のように見えるが少し変わった味がするようだ…」
「変わった味?」
「この国では『タムユ』…と言われる食べ物のようなんだが…」
タムユ…?
これまた異世界特有の名前だな…。
どんな食べ物だろ…。
俺はクリスから手渡されたお椀の中を覗いてみると…
「おぉ…確かにお粥っぽい…」
米を水と一緒に煮立たせた…それでいて少し赤みがかった色合いを持っている…。
匂いはお粥っぽいけど…。
初めての食べ物だ…。