幕間 『欲望』の取引①
「『欲望』…!」
くそっ!
こんなときに…五大教皇の一人が来るなんて…!
最悪のタイミング…。
「あらあらあらあら…そんなに睨み付けて…。せっかくの顔が台無しよ?」
『欲望』…パルバリーナは一切焦ることなく微笑んでいる…。
まるで子供をあやすような表情…。
いったい何を考えているのだ…。
「ひっ…ひいいぃぃぃぃ!!?助けてくれえぇ!!」
「あがががが…!?」
「だっ…だれかぁぁぁぁぁ!!」
「殺されるぅぅぅ!!」
…グリムレック以外のメンバー四人は腰を抜かして震えている…。
突然の死の恐怖にまともな考えもできないようだ…。
当のグリムレックはというと…
「…」
ただ一人…椅子に座りながら静観…。
怯えるわけでもなく…逃げるわけでもなく…。
まるで死を恐れないかのように…。
…この男の心中はわからないが…今は目の前の敵に集中しなければ…。
「…パルバリーナ…王宮にたどり着くまで他の兵士たちもいたはずだ…まさかとは思うが…」
「えぇ…全員殺したわ…。今頃血まみれになっているはずよ…」
「…っ!?…この外道が!!」
「ふふふ…だって…この私に剣を振り回したり、銃を撃ってきたんだもの…当然でしょ?」
くっ…!
なんてやつ…。
やはり五大教皇の悪辣さは本物だ…!
すぐに始末しなくては…。
私は腰にかけていた刀剣を抜き、パルバリーナとの距離を保ちながら機を図ろうとした…。
やつの力は依然不明だが…一瞬の隙をつけばあるいは…。
「怖いわねぇ…剣聖さん…。あなたが相手だと私に分が悪いかしら…」
「…本気でそう思っているのか?」
「…ふふふ…どうでしょう?…でも…今日はあなたと戦うために来たわけじゃないのよ?」
「何?」
こいつ…強襲が目的ではないのか?
ならいったい何を…。
「ちょっとね…あなたたちと取引をしたいと思ってきたの…」
「取引?」
次の瞬間、パルバリーナの口から出た言葉は…予想もしなかったものだった。
「魔王…クリスティアーネちゃんを一緒に殺してみない?」