32 運命の日…。
「さて…いよいよですね…。準備はよろしいですか?」
「…めっちゃ緊張する…」
「でしょうね…」
ついにこの日が来た…。
フィールとの決闘まで残り5時間…。
俺はメーラと一緒に、決闘を行う闘技場の控え室で作戦の見直しをしていた。
なんか…体がピリピリするぜ…。
あれから血の滲むような特訓をし、大型モンスターを倒せるくらいにはレベルをあげた。
まぁ、ステータス的にはフィールやクリスよりも相当劣ってはいるものの、その点は…大丈夫だと思う。
多分…。
メーラはごそごそと袋から様々なアイテムを取り出すと、それぞれの説明をしてくれた。
「どうぞ。これらすべてがドーピングです。飲みすぎると身体に毒ですので、ほどほどに…」
すげぇ…。
どれもこれも高価なものばっかりだ。
中には市販では売られていないものまであるじゃねぇか…。
「念のためフィール側に渡らぬよう、ここら一帯のドーピングは買い占めました。向こうがパワーアップすることはないかと…」
いや、買い占めるって…。
どこの大富豪だよ!
「そしてこちらは…回復ポーションと罠です。手持ちにできる数は限られているので、慎重にお使いください」
おおぅ…こっちもすげぇ…。
一口飲んで全快するGポーションに、相手を一定期間痺れさせる電撃地雷まである。
どれもこれも必要なものばかりだ。
「サンキュー…メーラ。マジで助かる…」
「愚民様…なんとしても…勝ってくださいよ」
「あぁ!ぜってぇ勝つ!安心しろ!」
そんな俺の対応が滑稽だったのか、メーラは少し微笑んだ。
「…ふふっ」
「なっ…なんだよ…笑うなんて…お前らしくねぇ…」
「いえ…死ぬかもしれないのに、愚民様が前向きでしたのでつい…」
「くっそー…なんかバカにされた気分だわ…」
「安心してください。バカにしてますよ」
「ムッキィー!!」
「では、これにて…」
メーラはそう言うと、控え室の扉を開けて出ていった。
外には俺が逃げ出さないように監視員がいるから、もう誰も入ってこないはずだ。
だが…俺は一人じゃねぇ。
なんとしても、クリスの…みんなのために最善を尽くす!!