幕間 剣聖の労苦①
「だからねぇ~…チミィ~…そんな情報いらないんだよぉ…わかるぅ?そんなだからダメなんだょぉ…。仮にも『剣聖』なんでしょぉ?」
「…ご期待にお答えできず申し訳ありません…」
「困るねぇ…レイヴォルトくーん…。そんなんだと騎士団団長としての威厳が問われるよぉ~?」
「…善処します…」
早朝から行われる『天啓神教会』の面々と行う会議…。
私はいつも通りの話し合いをしていた…。
―
グリンシュテン王国…人間が治める独立国家…。
最近では魔物との戦争で躍起になっているとされている。
その国を実質的に治めているのが『天啓神教会』に所属しているものたちだ…。
皆それまでの実績や経歴を考慮して選ばれているらしく、現在在籍しているものは五名。
それぞれ齢五十を過ぎた老君ばかり…。
常に国の情勢を把握するため、私を含めた六人で王宮にある議場にて会議をすることになっているわけだが…。
いつも話される内容は変わりない…。
税収の引き上げ…富裕層の優遇措置…戦争への援助資金の検討…。
一般市民への配慮は一切考えず…常に上流階級の生活保証等に目を向けている。
今も日々の食料に困っているものはいるというのに…。
私としてもなんとかしたいと日々思っていたが…。
国そのものを改革するには私一人では不可能。
どうすることも出来ない…。
人類最強の騎士…だが誰一人救うことが出来ない…。
皮肉な話だ…。
―
「聞いているのかねぇ?レイヴォルトくーん…。今にもやつらが来るかもしれないんだよぉ?しっかり調べたまぇ~…」
「…はい…」
今日の議題…。
いつもなら緩い政治改革を題材にしていたが、今回は違う。
とある反社会勢力について話し合っていたところだった…。
「『ハルア教』のアホどもが今日も暴れているかもしれないんだよぉ?わかってるぅ?」
「はい…重々承知しております」
『ハルア教』…。
世界の創造主…女神ハルアを信仰する宗教団体…。
しかし最近では過激な活動を繰り返しており、多くの犠牲者を生み出している…。
目的も構成員も資金の流れも不明…。
世界最大の敵とされている組織だ…。