幕間 現実世界の混乱
くそっ…!くそっ…!くそっ…!
あの女め!
こんなときに失態をしやがって…!
せっかく今まで面倒を見てやったというのに!
恩を仇で返すとは…!
絶対に見つけてやる!!
『Wander Slamw Worker』…。
今では世界的な人気を誇るまでになったネットゲーム…。
私の運営する会社…『アーク・ワーク・プラネット』が開発し、システムを管理しているわけだが…。
現在…このゲームをめぐって問題が発生している…。
『Wander Slam Worker』をプレイした男子高校生の昏睡事件…。
最初は信じられなかった…。
まさか…わが社のゲームによって…こんなことなど…。
それからは警察、メディアと関わることとなり、一部のマスコミからは袋叩きにあっている…。
『世界的なゲーム…まさかの犠牲者!?』
そんなタイトルによって、情報は全世界に広げられた…。
瞬く間にゲームの運営を凍結。
業務停止命令を受けてしまったのだ…。
普通のネットゲームなど…昏睡するなどあり得ない…。
だが…このゲームに関しては少し事情が異なる…。
『DCヘッドセット』…。
ゲームをする際…この機械を頭に装着することで、それまでとは比べ物にならない臨場感を味わうことができる。
仕組みとしては、戦闘中の高揚感や味覚、嗅覚、触覚といったものを電気シグナルとして脳に送り込むというわけだが…。
まったく…信じられない…。
昏睡した男子高校生もこのヘッドセットを装着した状態で発見されたらしい…。
ゲーム後…ヘッドセットを取り外すことなく就寝し、何らかの誤作動が起きた…とされている…。
こうした問題は…あり得る話だった…。
しかし…このゲームに…俺は金の臭いを嗅ぎ取った…。
リスクを考えることなく…数千億もの利益を生むのではないか…それだけを考えたのだ…。
その結果が…これだ!!
ぐっ…!
あれもこれも…あの女のせいだ!
あの女が…このゲームを売り込みに来たのが…!
なぜあいつを受け入れてしまったのか…!
なぜあいつの言うことを信用したのか…!
「…相川…姫路っ!」
あの…醜い…火傷の跡!
ボロボロの服を着ながら『Wander Slam Worker』のプロトタイプを売り込みに来たときは…吐き気がした!
すぐに突き返せばいいものの…いつのまにかゲームのプロジェクトリーダーとして抜擢してしまったのだ…!
未成年であることを隠し、ゲームの開発を任せたというのに…。
くそっ!
俺は…馬鹿だ!
子供でもこんなこと…!!
今思えば…気味の悪い女だった!
独力でこんなゲームを考えるなど…ふざけている!
一体どんな頭をしているのだ!
ガチャッ!
「…社長!真鍋社長!」
突然…部下の男が颯爽と入ってきた…。
手には薄型ノートパソコン…。
どうやら焦っているようだが…。
くっ…こんなときに…!
「なんだ!今は忙しいといっただろ!」
「それどころではありません!これを見てください!」
部下の男は手に持っていたノートパソコンを広げ、そこに映っている文字を見せた…。
「メール…送信者…相川…姫路!!?」
「どうやら…社内のパソコン全てに送られているようです!」
「見せろ!!」
ガッ…。
俺はすぐにパソコンを引ったくると、自らのデスクでメールを開いてみる…。
そこには…
私を探しても無駄です。
私はそこにはいません。
10年前の日々を取り戻したいと思います。
あとは皆さんで勝手にしてください。
相川 姫路
…最後まで読み終えたとき…俺は…自分がただあいつの掌の上で弄ばれていたことを理解した…。
沈黙が支配する部屋で…俺は慟哭した…。
「おのれぇぇぇ!!!…あいかわぁっ!…ひめじぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
しんどい…突っ込みどころ多々ありますが…許して…。




