133 ぎこちない空間
「メッ…メーラッ!!いくらなんでも…突然すぎるぞ!」
「クリス様…これから一生を共にすることを考えれば当然のことではないかと…。せっかくですから今日からひとつ屋根の下で過ごすべきなのでは?」
まったく…メーラのやつ…。
クリスも困ってんじゃねぇか…。
いきなり一緒に寝るように…なんて伝えられたら誰だって困惑するだろ…。
今はクリスの私室…。
本来ならクリス以外は滅多に入らない部屋だが、無理矢理入ることになっちまった…。
本当なら俺もついて行く必要はなかったんだが…
『…まさか…愚民様はクリス様と一緒に寝るのが怖い…チェリーボーイなのですか?』
なーんて言われちまったから…仕方なくついてきちまった…。
俺の下らないプライドに火がついちまったわけだが…冷静になったらすんごい怖くなってきた…。
…どうしよう…。
「いっ…一緒に過ごすのは…その…また今度だ!お互いを知ってだな…」
「もう十分にわかりあっているでしょう…。そんなにあれこれ言い訳してもダメですよ?まさか…一緒に寝るのが怖いのですか?」
「う…ぬぅぅぅ…」
うーむ…。
今のメーラを相手にするのは…キツいぞ?
たぶん…クリスでも言い負かせることはできない気がする…。
「う…む…。そこまで言われたら…しょうがないな…」
バカッ!!
しっかりしろよ!
そんなあっさり折れんな!!
「そうですか…安心しました…。それではお二人で夜を共にしてくださいな…。私はこれで失礼します…」
メーラは涼しい顔でそう言うと、颯爽と出ていっちまった…。
ギイィィ…ガチャン…。
扉の閉まる音が響いたあと…俺たちはまた緊張することに…。
さっきまで一緒に風呂に入ってたら、今度はひとつ屋根の下…。
急展開が激しいぞ…。
「う…そっ…そう言えば…お前の名前を聞いていなかったな…教えてくれるか?」
…あっ!
そうだわ…。
俺の本当の名前を教えてねぇ…。
せっかくだし…言っとくか…。
「おっ…おぅ…。俺の名前は…カトウマサユキ…だ…。カトユキつってもいいし…普通にマサユキでも…」
「むっ…そうか…珍しい名前だな…。…だが言いづらい気もするから…初めのうちはいつも通りユキと呼ぼう…」
「そっ…そうだな…そうしてくれ…」
「うっ…そっ…そうだ!あのドラゴンはどうした?さっきから見当たらんが…」
「そっ…そうなんだよ!なんか…いつのまにかいなくなっちまって…どっかいると思う…」
「そうか…」
「…うん…」
「…」
「…」
あぁぁぁぁぁぁ!!!
もう!
なんだよこの歯切れわりい会話は!!
女の子と一緒になると…話題が見つかんねぇよ!!
「ユキ…ねっ…寝るか!」
「お…おぅ!」
どうなっちまうんだ…。