116 当初の計画
当初の予定では愚民様を認めていただくために、ドラゴン…キュー様の力をお見せする筋立てでした…。
颯爽と登場した愚民様が狂暴な白きドラゴンを召喚し、天に届く勢いの火を吹かせる…。
ドラゴンを操る人間に恐れをなした民衆は、渋々認めることに…というもの…。
元々はクリス様の考えた案であり、あとはどのように演出をするか…という段階でした…。
しかし、先日の出来事もあって話し合いも中途半端なものに…。
しかも…思った以上にここにいる民衆の反応が良くない…。
このままだと、キュー様を召喚しても逆効果になるのでは…。
心配ですね…。
「お前たち!決闘の結果に嘘偽りはない!潔く認めないのか!」
クリス様はつい熱くなり、怒気を込めた勢いで叫ぶも
「人間が…そんなことできるわけ…」
「嘘をおっしゃっているのではないのですか!?」
「まさか…フィール様を買収して…」
「そうだそうだ!」
…これは…。
さっきまでの敬服が嘘のように剥がれ落ちている…。
相手はクリス様だというのに…。
まるで恐れていない…。
周りに同調してその勢いが大きくなっている…。
このままでは…。
「そういや…人間と結婚するとか言ってたけど…まさか!出来レースなんじゃねぇのか!?」
「くっそー!なんかおかしいと思ったんだよ!人間を支配するとか言いながら…結婚するなんて…馬鹿げてんだよ!」
「初めから人間の命のことは保証してたんだよ!騙された!」
「あの魔王…初めから人間との結婚が目的なんだよ!」
騒ぎは次第に大きくなり…やがてその矛先は魔王様にまで…。
「なっ…きっ…貴様ら…うっ…ぐうぅ!!」
民衆の指摘である『結婚』については間違っていない…。
だからこそクリス様も言い返すことが出来なかった…。
頬を赤く染め、怒りとも羞恥とも言える表情を浮かべる…。
瞳も潤んできた…。
いけない…。
私は民衆を戒めるために喝を入れようとした…。
そのとき…
「おい!てめぇら!さっきから俺とクリスのこと馬鹿にしやがって!!もう我慢ならねぇ!俺から言ってやる!」
竜車から愚民様が姿を見せた…。