9 一世一代の告白!!
…にしても…。
この城ってとんでもなく広いな…。
さっきから走ってるけど、自分が何処いんのかわかんなくなりそうだ…。
時々、他の魔物に見つかりそうになったが、隠れたりしてやり過ごしてる。
…でも、そろそろ限界…。
体力的に…。
このままクリスが見つからなかったらどうしよう…。
あと行ってないとこって何処だっけ…。
うーん。
わからん!
…いや!
あそこだけは行ってねぇな!
よし!
賭けてみるか!
一
…
いたわ…。
まぁ、心を落ち着かせるにはいいところではあるが…。
俺がいるところは、さっきまで演説を行っていた城の屋上。
今はもうすっかり夕方になっているが、赤く染まる空に沈みかける太陽が、この世界を美しく彩っている。
クリスは…。
たった一人で外の景色を眺めている。
美しい風景で高ぶった心を静めているのかな…。
声をかけるのも怖いが、そんなこと言ってられん!
ええい!ままよ!
「クリスッ!!」
後ろから声をかけた俺に、クリスはすぐ振り向いてきた。
その顔には驚きと困惑が浮き出ているが、俺は速攻で行動に移す。
「すまん!クリスのことぜんぜん考えなくて…。あんな計画立てちまって…。スッゲー悲しいの…わかってたけど…ああすることしかできなかった…。マジにゴメン!!」
俺はその場で土下座をして、頭を床にグリグリ押し付けた。
今できる最大の謝罪が土下座っつーのは恥ずかしいが、とにかく謝ることに全力だ。
クリスはというと…。
「…」
依然として無言…。
罵倒せず、許しもせず、ただ俺の次の反応を待っている。
…よし!
次の言葉だ!
「でも…!俺っ!すっげぇ不器用で…自分が犠牲になる作戦しか…わかんねぇ!多分…これからも…そんな馬鹿な作戦立てることになっかもしれん…」
クリスは少し苦い顔をするが、目の前から立ち去ろうとはしない。
きっと、俺のことを信じているのだろう…。
ここまで来たら最後だ!
『まずは謝って…そのあとに自分のやり方を熱く語ってください…。そして最後に…』
メーラの言葉を思いだし、俺は口にする。
「だからっ!いつまでも!俺が死んじまうまで…その…側にいてくれ!俺も全力で守るから!…ええと…一緒に…生きてくれ!」
くっそー!!
なんかメチャクチャ恥ずかしいぞ!!
何処ぞの恋愛漫画だよ…。
だが、俺の言葉に嘘はない。
マジにホンキだ。
あとはクリスの言葉を待つだけ…。
ザッザッザッ…。
クリスが近づいてくる音が聞こえる…。
ぶっ飛ばされるか…はたまた頭でも撫でてくれるのか…。
緊張が走る…。
「…顔を上げろ…」
ものすごくこえぇ…。
なんか感情が読み取りづらい声だから、顔上げたくないんだけど…。
だが!
上げないわけにもいかん!
おそるおそるクリスの顔を見ると…。
「ん…!」
クリスがしゃがんだと思ったら、突然俺の唇にキスしてきた!
いや!いきなりすぎるだろ!!
「んんぅ!?」
あんまりにもビックリして、俺はのけぞりそうになったが、クリスの手が俺の後頭部をそっと…それでいてしっかりと支えていたお陰で、唇が離れることはなかった…。
その場の雰囲気がいい感じだから、動かず目を閉じてみたがちょっぴり恥ずいな…。
やがてクリスが唇を離したとき、そこにはぶちギレた時でも、大泣きしたときでもない、幸せいっぱいに微笑む笑顔のクリスがいた。
「ユキ…これが私の答えだ…。いつまでも…一緒にいよう…」