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28 アーバー・レコード


 クローディアがぐずぐずと無為に時間を過ごしている内に、マキオン老師からの書簡を携えた使者が旧リッテンバーグ邸を訪ねてきた。


 王立学院へと出向いてから三日と経っておらず、しかも使いの者をわざわざ立てる大仰さにクローディアは驚くが、追い返すわけにもいかず、滅多にない客人への応対をローナからアドバイスを受けながらこなした。


 使者の用件は簡潔で、マキオン老師から日を改めて欲しいと言われていた通り、数日の内に予定を空けて再度訪問を願いたいというものだった。


 やけに性急な招き方に違和感を感じたが、了承の意志と予定のない日を使者に伝えると、翌日には再び使者が訪れて、マキオン老師との面談日程が決まり、クローディアは実にすんなりと当日を迎えていた。


 以前のように家の馬車で学院の西門から入り、来訪者用の事務室がある二号館へおもむくが、そこで永久公僕の助手(アシスタント)に出迎えられる。


 事務での手続きはもう済んでいることを彼女から説明され、そのままマキオン老師の教授室へと向かうことになった。


 クローディアのお供は、銀細工のチョウに扮して髪飾りのふりをしているローナだけで、前のようにノエルは側にいない。


 公僕の先導で一人歩く廊下にどことなく心許なさを感じながら、教授室へとたどりつき、併設されている応接間へと通された。


 指定された時間より少し早い到着だったが、マキオン老師はすでにそこにいた。


 白い髪に白い口ひげを蓄えた、いかにも好々爺とした人で、柔和な笑みを浮かべてクローディアの訪れを歓迎してくれる。


 「いやいや、ようこそいらっしゃってくれた。こちらの都合で二度もご足労をわずらわせてしまいましたな」


 「…いいえ」


 老師はあくまでも好意的に迎えてくれるが、それよりも、応接間にはもう一人クローディアの知らない人がいた。


 四十歳半ばの男性で、深いブラウンの髪に鳶色の目。

 年相応の人相には、やけに厳めしいシワが刻まれている。


 彼は、マキオン老師が話している合間も、じろじろとクローディアを値踏みするように上から下まで注視していた。


 ベストとタイという学者姿をしているから、魔導士ではないのかもしれない。


 「ほれ、ジュリアン。お主のいやらしい視線にお嬢さんが戸惑っておるぞ」


 マキオン老師からの茶々に、ジュリアンと呼ばれた男性は聞き捨てならぬとばかりに老師を睨み付けた。


 だが、不躾だった自覚はあるのか、すぐに態度を改めクローディアと向き合った。


 「……とりあず、はじめまして。今回、この場に同席させてもらうジュリアン・モアだ。よろしく」


 名乗ってはくれたが、彼はいったいどういう人なのかといった補足はなかった。


 前回の面談で、マキオン老師は内々でもう少し話し合う必要があると言っていたから、そのための人物なのだろうか。


 「……はい。こちらこそ。……えと、クローディア・ヘインズです」

 「知っている」


 端的な言いようには、どこか突き放すような響きがあった。


 クローディアはどう対応すればいいかまごつくが、見計らったようにマキオン老師から着席を求められたため事なきを得る。


 しかし、三人がそれぞれ席に着くなり、ジュリアン・モアは切り出した。


 「さて。まずは、貴女が事の次第をどれだけ理解しているのかを伺いたい」


 「これこれ。もう少しやんわりした言い方があるだろう。そんな脅しつけるようでは、お嬢さんが萎縮してしまうわ」


 「……貴方こそ、彼女に対して“お嬢さん”の呼称はいないでしょ。成人済みの既婚者に対して使う呼ばわりではない」


 「些末な事にいちいち煩い男よ。わしは若い娘さんから好かれたいんじゃ」


 「貴方のただれた本心なんて誰も聞いていません。そうやって何でもかんでも茶化しててしまうから、こうして私が同席しているのだと言いたいんです。事態の深刻さが彼女に伝わらなかったら、何の意味もないでしょうに」


 二人の遣り取りはどこかおどけていたが、眺めるクローディアは疎外感を感じていた。


 今日、この場に設けられた席は、クローディアが持ち込んだ品物を買い取ってもらうための話し合いだったはずだ。


 けれど、目の前で交わされる会話から察するに、とてもそんな雰囲気に見えなかった。


 「では、改めて。…いや、その前に懐中時計を――有蓋の記憶(アーバー・レコード)をこの場へ提出ねがいたい。持参していただけているだろうか」


 「……はい」


 クローディアは、言いしれぬ違和感を覚えながらも所持していた箱を取り出して、蓋を開けてからローテーブルの上に差し出す。すると、ジュリアン・モアは箱に触れることなく中身を下ろし、眉間のしわを深くした。


 何かの間違いであって欲しいと言うような、そんな心情を滲ませた長いため息をつく。


 「……この懐中時計に関して、どれだけの理解を得ているのか、できうる限りの内容を貴女の口から説明してもらえるだろうか。ああ。前にこのマキオンに話したことを、もう一度繰り返してくれていい」


 言われて、クローディアはマキオン老師に説明した内容を思い出す。


 有蓋の記憶(アーバー・レコード)と呼ばれるこの魔法装置は、表向きの能力として、過去の姿や未来の姿を想定して、身に付けいている者に年齢の増減という現象をもたらすこと。


 何度も何度も調べていく内に、家名と家名が連なった回路の読み方が見えて、魔法装置の本来の機能は、古い魔法使いの血統を記憶している『家系図』であることを推察したこと。


 一度話した内容だからか、ジュリアン・モアへと説明する際は、それほど手間取らずにクローディアは口にできた。


 ただ、できうる限りの内容と言うことで、マキオン老師には語らなかった懐中時計の使用方法の説明へと移り――それも全て話し終える。


 クローディアが知りうる限りの内容を伝えきったあと、静かに耳を傾けていたジュリアン・モアは簡潔に言った。


 「それだけか?」

 「…え」


 「君が認識しているのは、独断にみちた性能と曖昧な使用法のみで、これが存在する意味の大局的な部分には、何の考えも何の疑問も持ち得なかったのか?」


 それは、問いかけのようにも叱責のようにも聞こえた。


 クローディアとて、自分の持っている物はとても凄いもので、自分が持っていても宝の持ち腐れだという認識くらいならあった。


 しかし、ジュリアン・モアから指摘されたとおり、それが何なのかが分かった後は、そういうモノもあるのだろうとそれで納得して、それ以上のことはしなかった。


 どうやら、それがいけなかったらしい。


 「……あの、ごめんなさい」

 「では、これの回路が読めるようになったのは、いつ頃だった?」


 間髪入れずに次の質問がきてクローディアは面食らうが、返答を待つことなくジュリアン・モアは続けた。


 「初潮がはじまって、しばらくした後ではなかったかね」


 マキオン老師が目を見張った。しかし、何かをぐっと堪えるように彼を見据える。


 いつ頃、回路が読めるようになったのか。確かに、分かるようになるまで毎日のように回路を開いていたが、それがいつだったかなどもう覚えていなかった。


 「…………分かりません」

 「そうか」


 はじめから期待していなかったように言うと、ジュリアン・モアはさっさと先を進めてしまう。


 「では、本題に入ろうか」

 「…………」


 「要するにまず、これは君という存在を選んだのではなく、君の身体に流れる血筋を選んだ、ということを念頭に置いておいてもらいたい」


 本題に入ると言ったはずなのに、ますますよく分からない始まり方だった。


 「君がどのような人間性の持ち主か、我々はまだ充分に知り得ていないため、全容を話すか否かは、君の今後の行動にかかっている。そうした意味合いも込めて、君にはまず、そのテーブルに置かれたモノに対する認識は正しくしておいてもらはないといけない」


 言われるままテーブルの上に視線を移すが、そこに置かれているものはクローディアの有蓋の記憶(アーバー・レコード)しかない。


 「それは、この国の社会基盤をゆるがす破壊装置であり、安全装置だ」


 ジュリアン・モアは、はっきりとそう言った。

 冗談めかした様子などはなく、どこまでも真剣にそう言い切った。


 だからクローディアは、もう一度テーブルの上に置かれているものを視線で探ってみる。

 どう見ても、有蓋の記憶(アーバー・レコード)しか見付けられなかった。


 彼が言い表した大きな事柄を当てはめるには、サイズがあまりにも小さくて、それとして見ようにも全くしっくりこなかった。


 「再度繰り返すが、詳細はまだ教えられない。だが、君がそれの本質を認識し、使用法を知っている以上、君は現在、この国にとって大きな脅威になる可能性がある。故に、我々は君という存在に対して、相応の処置を施す必要に迫られている」


 クローディアは、ジュリアン・モアに目を向けた。

 彼の鋭く重い眼光は、クローディアを射殺さんばかりだった。


 「君が何も知らずにこの懐中時計を使用したことは不問に付されるが、肝に銘じて欲しいのは、これから先、無断で用いることがあれば懲罰が科せられるということだ」


 「…………」


 「そのうえで、君が敵対的な行動に出た場合、武力による鎮圧も法によって許されている。こうした事例は君がはじめてではないため、こちら側には、確立された拘束手段が用意されていることも頭に入れておくように」


 クローディアは、先ほどから耳に入ってくる物騒な言葉にたじろぐばかりだった。


 懐中時計を売却しに来ただけのはずなのに、まるで犯罪者にでもなったかのような錯覚に陥った。


 苦し紛れにマキオン老師へと視線をやれば、彼はすでにクローディアを見ていた。

 じっと、クローディアの反応でも観察するような感情のない目で。


 この場に、味方は誰もいないこと突きつけられた。


 「……ジュリアン、もう少し」


 「いいえ。これはなあなあで済ませていい事柄ではないでしょう。彼女には、事の重大性をきちんと理解させないと」


 いったい何が起こっているのか、クローディアにはほとんど分からない。

 けれど、自分が置かれている立場は漠然と理解させられて恐怖した。


 捉え所のないの恐怖は、どこに拠り所に求めていいのかも分からなくて、ただ状況に流されることを強いられる。


 震えそうになる手を、隠すように握り込んでいた。


 「君も、よく聞いていなさい。いいか―――」


 その時、クローディアの隣りに誰かが立った。

 どきりとして見上げれば、髪飾りだったローナが許可もなく人型の姿に戻っている。


 彼女はクローディアを庇うようにして、ジュリアン・モアとマキオン老師へと立ちはだかっていた。


 「……ほれ見ろ。お主がムダに脅しよるから、番犬が先走って出てきおった」


 マキオン老師の茶々に、ジュリアン・モアは億劫そうに顔をしかめた。


 彼らと対峙するように立っていたローナは、やおらクローディアを振り返る。


 ソファに座る己の主人に跪き、固く握り込んでいた主人の手に自らの両手を重ね、よく知った仕草でクローディアを見上げた。


 家で見る普段通りの微笑みがあった。

 励ますように、ここにいることを存在付けるように両手が片手を包み込む。


 彼女の手に温もりはないけれど、いつだって優しいローナの手。

 自分には絶対的な味方がいたことを、クローディアは思い出していた。


 「――――あ、あの」


 彼女に勇気づけられたクローディアは、自分の意思を伝えべく声を上げる。

 いまだ眉根の険しいジュリアン・モアへと立ち向かった。


 「あの、この懐中時計はあげます。お金もいりません。だから―――」


 途中で止まってしまったのは、ジュリアン・モアの表情があからさまに変化したからだ。意表を突かれたという顔だった。


 隣にいるマキオン老師も同じで、唖然とした二つの顔に見つめられていた。


 予想外の反応にクローディアも黙って見つめ返していれば、ジュリアン・モアが突然、全身の力を失ったかのように身体を折り曲げうなだれた。


 うつむいたまま前髪をかきあげ、脱力しきった声で言う。


 「そうか。貴女にとってはそういう(・・・・)話だったな……」

 「……?」


 「違うんだ……いや、すまない。どうやら言葉足らずだったのは私の方だ。説明を惜しみすぎた。貴女にしてみれば、さぞかしわけの分からない話だっただろう」


 その通りだった。けれど、話の主旨が分からなかったのは、どうやらクローディアのせいだけではなかったらしい。


 「あの、私もすみません……分からないって、ちゃんと言わなくて…………」


 分からないなら分からないなりに聞き返せば良かったのだと、今さらになって気付く。


 すると、うつむいた顔からわずかに苦笑する口元が見えた。

 マキオン老師からも、似たような笑みが向けられている。


 張り詰めていた雰囲気が、どことなく和らいでいくのを感じた。


 もしかしたらクローディアがずっと緊張していたように、彼らのにも何かしら気負うものがあったのかもしれないと、ふと思っていれば、ジュリアン・モアが気まずそうに顔を上げた。


 「貴女は今日、この懐中時計を売却しに来ただけなのだろうが、それを買い取ることはできない。何というべきか……もう、そういう次元の話ではないのだ。しかし、どう説明したものか」


 「いやいや、そう込みった考えは必要ないかもしれんぞ」


 マキオン老師が口を差し挟んだ。


 「もっと単純に今の状況を見ればいい。お嬢さんがここまでおいでになった目的は、懐中時計の売却なのだ。つまり、はじめから手放すつもりでここにいらした。そうですな?」


 はい、と答えると、老師はひとつ大きく頷いた。


 「では、魔法道具の売却ならば街の職人通りでも出来たはずですが、貴女はわざわざ人を介してこの学院まで足を運ばれた。それは何故ですかな?」


 「……あの、それは…………」


 クローディアは説明にすることになって焦ったが、マキオン老師――そしてジュリアン・モアから急かされることはもうなかった。


 「それは……これが、大きな力を持つ魔法装置だからです。だから…ちゃんとした場所じゃないと……その、いけないと思いました」


 老師は、もう一度大きく頷いた。


 「とても賢明な判断ですな。これまで多くの者がそうしてきたように、貴女もまた最善の方法を取られていた。それを見落としていた手前どもの落ち度ですな。これまでの非礼をお詫びしたい」


 「……いえ」


 「ただ、誠に残念ながら、貴女の望み通りそれ“手放す”こと自体が、今ここでは大きな問題になっておるのです」


 「……どういう、ことですか?」


 「その有蓋の記憶(アーバー・レコード)は、すでに当代の貴女を選んでしまっている。たとえ貴女からそれを取り上げて、別の場所に隔離したとしても、必ず貴女の元へ戻ってしまうのです。それだけは、我々にもどうしようもない」


 「――――」

 「だが、手放す方法は存在する」


 そこからは、ジュリアン・モアが引き受けた。


 「前言にした通り、こうしたケースは貴女がはじめてではない。手放す手段――というより、切り離す方法はいくつか考案されているのだ。今日のこの席は、それを貴女に伝えるためのものでもある」


 「それなら……教えてください」


 しかし、ジュリアン・モアの顔色は優れない。


 「……考案された方法の中で、有効性が立証されているは、体内の“導体”を失うことだ。そうすれば、有蓋の記憶(アーバー・レコード)の使用自体が根本的に不可能となる」


 「…………」


 「存じているとは思うが、我々の身体の中に存在している導体は、あらゆる魔法道具や魔法装置を操作し、魔導士や回路技師においては導体そのものを生成し、回路を構成するために必要不可欠な器官である」


 「…はい」


 「だがその導体は、このリグナム王国全土に張り巡らされている地脈回路の上を離れてしまえば、三年から五年ほどで失われ、二度と元には戻せない。それも知っているだろうが、その禁をあえて犯すことで、導体を喪失させるのだ」


 「…………」


 「もちろん導体を失ってしまえば、その時点で我が国の国民とは認められなくなるため、貴女の扱いは居留民となり、さらには些末な魔法道具ですら満足に使用できない不便な暮らしを強いられることになる。無論、貴女が取得した一級資格だが、導体を失う以上これもまた取り消さざるを得ない」


 「…………」


 「こちらの事情で暮らしを一変させるのだから、そうなった場合には、生活面での保障や援助は最大限させてもらうつもりだが、やはり不自由はあるだろう。その代替案としてだが……、貴女は“緑の園”という孤児院を懇意にしていると聞いている。貴女が望むなら、特例として孤児院への転居と就業が認められることになっている」


 導体の喪失。居留民。資格の取り消し。孤児院への転居と就業。

 次々と出てくる語句を整理しきれなくて、クローディアは半ば混乱しはじめていた。


 「ああ、いますぐに結論を出さなくてもいい。今日はただ、ひととおりの内容を頭に入れてもらい、数日かけて熟慮してくれ。貴女がどうするかはその後でかまわない」


 「――…はい」


 安堵したのも束の間、ジュリアン・モアはさらに続けた。


 「そして、もうひとつの方法だが、こちらは正規の方法だと言えるだろう。我々としては、こちらの方法を選んでもらいたいと思っている」


 クローディアは気の抜けそうになった気構えを、急いで立て直す。


 「有蓋の記憶(アーバー・レコード)が古い魔法使いの家系図であることは、貴女ご自身が言ったとおりだ」   


 きちんと話を聞いていると、彼に伝えるようにクローディアはこくりと頷いた。


 「つまり、特定の血統を記録し続けており、ある一定の周期で自らの使用者をその血統の中から選ぶようになってる。当代は、貴女が選ばれた。だがそれは血統の更新、家系図の書き換えが行われた時、当代を離れて次代を選ぶ準備に入る。要するに、貴女の血が次の世代に受け継がれればいい、ということだ」


 「それは……」

 「そう。貴女が自身の子供を産むことだ」


 「…………」


 「貴女の血を受け継いだ子供が成長し、生殖能力を発芽させた段階で有蓋の記憶(アーバー・レコード)は新たな選定に入り、貴女の手元から離れることになる。そして、次の選定は次の周期で行われるため、よほどのことがない限り貴女の子供に害が及ぶことはないだろう」


 二の句が継げないクローディアを、向かい側の二人が様子をうかがうように見ていた。


 それでもクローディアは何も言えず、部屋の中が静まりかえるが、やがてジュリアン・モアが続けた。


 「……もし、後者の方法を選択するなら、相手はすでに何人か見繕ってある」


 彼の声が、やけに遠く聞こえた。


 「その中で一番の候補は、やはり世間的な対面を考慮しても貴女の夫君になるだろう」


 彼が何を言っているのか、クローディアには分からなかった。

 分かりたくなかった。


 「他にも色々と理由はあるが、単純に考えても彼の優秀さは貴重だ。我々としては、今回のことを抜きにしても彼の血は後世に残したいと思っていた。是非とも前向きに検討してほしい」


 クローディアは、心と体がちぐはぐになった感覚に囚われていた。

 耳は聞いているのに、頭は状況の把握を拒み、口は勝手に動いていた。


 「――――……あ、あの…誰……誰と…?」

 「……夫君であるセドリック・ヘインズだ。彼との間に子供をもうけてもらいたい」






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