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24 仮植の部屋


 ローレンスは、主人と共に学林館にある専用の研究室にいた。


 老君プリンケプスの命を受けた独自研究という名目で セドリック・ヘインズのために設けられた一室で、研究の他、仮眠室や簡易キッチンも備えられた特別室だった。


 内装も、教授室にあるような鏡板が壁一面に使用されており、一枚一枚の浮き彫りや、見た目の色こそ暗く抑えられているが、それが返って上等感をただよわせている。


 そんな部屋を宛がわれているセドリックは、いま事務机に向かい、ある人物と対面している。


 「だから、この間の魔具はどうしたのよ」

 「…………」


 不遜な態度で問う彼女に、セドリックは机に肘をついて対応していた。


 彼女――テレサ・ランヘルは、『魔法及び臨界現象研究所』の研究員であり、セドリック・ヘインズの同僚である。


 ローレンスとの面識は多いとは言えないが、主人とは同窓だったこともあり、それなりに親しい仲だとローレンスは認識していた。


 「あ。“魔具”なんて知らないって言うのはナシだから。アンタがこの間、勝手に持っていた小箱の魔法道具よ。でもね、私はあえて魔具と呼ばせてもらうから」


 「……好きに呼べばいいだろ」

 「そう言うと思ったわ。だから――え?」


 肘をついたまま答えたセドリックに、テレサ・ランヘルは間の抜けた声を上げた。


 ほんの少し前まで、一辺倒だった自論をあっさり曲げたせいだろう。彼女は肩すかしを食らったような顔をして、それから決まり悪そうに口を開く。


 「そ、そう……それで…やっぱり、あの記録媒体(レコード)を勝手に持って行かれたら困るのよ。研究室に預けられたものだし。報告書とか色々手続きが必要なの。確かにアンタの導体反応があったけど、まだアンタのものだって確定したわけじゃないでしょ」


 するとセドリックは、少し考えるような仕草を見せた。

 ひと拍おいて、面倒くさそうに答える。


 「あれは確かに俺のものだった。昔、ちょっと思い立ってレコードの容量を増やそうとしたんだが、結局失敗したんだ。だから、中身も壊れていた」


 「――そう。じゃあ、一連の内容を報告書にして提出してもらいたいんだけど。アンタもいちおう研究室の一員だし。それで、いったん室長に預けて判断してもらうわ」


 「……わかった」

 「――え。そ、そう……えと。じゃあ、例の魔具もいっかい返してちょうだい」


 「…………わかった」

 「な、何なのよ。気持ち悪いわね」


 彼女との応答に素直に応じていたせいで不気味がられたセドリックは、今度は苛立ちを隠さずに相手へとぶつけた。


 「用が済んだなら、さっさと出て行けよ」

 「――っ、言われなくても帰るわよっ。ちょっと心配して損したわっ」


 反発するように吐き捨てると、彼女は乱暴な足取りで部屋をまっすぐ引き返していく。

 扉の開閉も音がたつほど雑にされ、テレサ・ランヘルは退出していった。


 扉が完全に閉まったのを確認してから、セドリックは言った。


 「ロドリオ、持ってこい」

 「ローレンスです。ですが、一度休憩を入れられたらどうですか?」


 「……いや、続ける」

 「…はい」


 主人に言い付けられ、ローレンスは預かっていた書類を彼の元へと運ぶ。


 そのまま机の上に書類を並べていき、それが終わると、セドリックはすぐさま昨日に記録された魔導士の名前を書面に書き出す作業に戻った。


 主人のサポートのため、人型の姿で控えていたローレンスは、彼の様子をいつも以上に注意深く見守った。


 セドリックはここ一ヶ月、脇目もふらずただ仕事に打ち込んでいる。


 一ヶ月前、女主人のクローディアから王立学院へおもむく許可を求められた。

 ローレンスは驚き、どんな理由で訪ねたいのかと聞き返せば、実家から持参した懐中時計を売却するために、学院のある人と会いたいのだという。


 少し迷ったが、その旨を主人へ伝える許しを彼女からもらい、それから訪問の許可を得るためにローレンスはセドリックへと言づてた。


 その時の彼の反応を、どう表現したものか。

 わずかに目を見開くと、視線を左右に揺らしてからローレンスに背を向けてしまった。


 ひとしきり押し黙った後、セドリックから返ってきた答えは、クローディアのしたいようにさせろ、との事だった。


 彼の心情を無理に詮索するつもりはない。ただ、離別の準備を着々と整えていくクローディアに、心穏やかではないのはローレンスにも察せられた。


 現に、余計なことは考えないようにしてか、その日から淡々と仕事に取り組んでいる。


 ローレンスたちが出しゃばって勝手に用意した中庭での一席でも、ペナルティーとして科されるはずの猫二十匹が、すっかり忘れ去られていた。


 さすがに、ローレンスたちもこの状況下で――少なくとも、クローディアの一件が終わるまでは、下手な行動を取るのはためらわれ、今やれるだけのことをしようとするセドリックを、ひとまず見守る姿勢に移っている。


 老君に申し出た魔導士リストを作るため、十人委員会の承諾と協力を経て、ようやく学院内へと、セドリックの手による人工精霊が配置された。


 そして現在、昼は人工精霊より抜き出された情報を書面へと書き起こしては、手元にある導体反応の一次資料と照らし合わせる作業をし、帰宅後は、これまで通り注文された人工精霊の制作の他、その後の段取りについても夜遅くまで検討と対策を繰り返している。


 この一ヶ月、無駄口をほとんど叩かずに作業を続けていたが、今日は一段と口数が少ないように見えるのは、ローレンスの杞憂だけではないだろう。


 今日は、クローディアが王立学院を訪れる当日である。


 彼女の訪問には、侍女ローナをお供として付き従わせてあり、よほどの事でもない限りトラブルが起こることなどないだろうが、漠然とした不安はやはりローレンスにもあった。


 その原因のひとつに、クローディアが会おうとしているのが、十人委員会の一人であるロイド・マキオンがあげられる。


 クローディアから聞き出したのではない。ロイド・マキオン本人から細君とお会いすることになったと、わざわざセドリックへと一報を入れにきたのである。


 ロイド・マキオンに関しては、ローナがそば近く控えているから変な干渉や与太話があっても大丈夫だろうが、心配事はもうひとつ。


 学院構内を歩き回れば、セドリック・ヘインズに関する良くない噂が、どこから聞こえてくるか分からないことである。


 これもローナがフォローするはずだが、主人への悪口雑言など、できればひとつだって奥方の耳に入れたくないのが本音だった。


 ローレンスは、部屋の壁際に置かれている柱時計へと目をやった。


 マキオン老師との面談は正午過ぎである。とうに会って話し込んでいる、もしくは、もう終わっていても可笑しくない時間だった。


 ローレンスはもう一度、黙々と作業を続けるセドリックの様子をうかがう。


 彼が気付いていないはずはない。

 それでも仕事に打ち込みたいのなら、しばらくはそうさせるべきだろう。


 もう少ししたら区切りが付くはずだから、それを見計らって休憩を入れさせればいいと、ローレンスが思っていた時、ローナから連絡が入った。


 何事かとどきりとしたが、マキオン老師との面談が無事に終わったとのこと。

 それから主人のセドリックは、今どこにいるのかと確認を求められる。


 どういう事かと聞き返せば、ローナは少しもたついた。


 旧リッテンバーグ邸の回路を仲介しているため、いつもより繋がりにくいのは仕方ないが、それにしても遅い気がした。


 口ごもるような間の後、これから構内を見学することになったのだとローナは答え、そのため、セドリックと鉢合わせしないよう事前に配慮して欲しいと、クローディア自身の希望で頼まれたことを告げられる。


 ローレンスもまた、黙してしまった。


 だが、すぐに持ち直して学林館の専用室にいると答え、もしセドリックが部屋から移動することがあったら、その際は必ず連絡すると伝えた。


 ローナとの通話を終えると、ローレンスは何とはなしに自分の主人を見てしまう。


 ローレンスとローナのやり取りは回路を通してされたものだから、当然セドリックが気付いているはずはない。


 何より、わざわざ報せる内容でもないため、ローレンスはそのまま沈黙した。


 部屋の中では、柱時計が時を刻む音と、ペンが紙の上を走る音がただ響いている。

 代わり映えのない光景に留め置かれるだけの時間だったが、ローレンスは特に苦もなく待機し続けた。


 半時ほどして、セドリックの書き起こしと照合作業にそろそろ目処が付きそうだと目視で判断すると、ローレンスはお茶を淹れるため簡易キッチンへと足を向けた。


 キッチンへの扉を開けた時、ローナから再び連絡が入った。


 いや、連絡のようなものだった。

 彼女らしくないやけに取り乱した声が、途切れ途切れに言葉を告げて、そして消えた。


 ローレンスの心に一瞬にして過ぎるのは、女主人の身の危険。


 しかし、この学院内でそんなことはまずありえない。

 ローレンスは冷静に考え直して、もう一度ローナと連絡を取るが応答は無く、さらにもう一度呼びかけると、ようやく応答が返ってきた。


 ただし、大丈夫だから後にして。という、こちらの危惧をすっぱり切り捨てるものだった。


 「……どうした?」


 ローナの態度を、どう判断したものかと迷っていれば、セドリックから声がかかる。

 キッチンへと向かう途中、扉の前で立ち尽くしていたローレンスを訝しげに見ていた。


 「……それが、ローナの方で何かあったようなのですが、ひとまず緊急性は無いようです。ただ……奥様のお兄様がいたとか、どうとか」


 がたんっ、と椅子を弾き倒してセドリックが立ち上がった。

 口元を押さえ、愕然とした様子で呟く。


 「忘れてた。あのクズ野郎」







 クローディアは、まだ『百聞回廊』の廊下にいた。

 人気のない行き止まりで、うずくまるようにして身を潜める。


 耳元では、髪飾りになったままのローナが、囁くように同じ事を繰り返していた。


 「……奥様? ……奥様? ……お兄様がいらしたのですか? ……お兄様がどうされたのですか? ……奥様?」


 「…………」


 クローディアは、彼女の案じる声には答えず、ただ黙って壁に身を寄せる。

 どう答えればいいのか分からなかった。これからどう動いたらいいのかも。


 ノエルの元へ戻らなければいけないのは分かっている。だが、足が動くままに逃げて来てしまったから、戻るための道順が分からない。


 あてもなくこの辺りをうろつけば、またあの兄と遭遇してしまうかもしれなくて、それを思うと、下手に動き出せなかった。


 不意にローナの呼びかけが途絶えた。

 しかし、彼女はすぐに問いかけてくる。クローディアが聞いたこともない固い声で。


 「…………奥様、……あの兄とやらに、何かされたことがあるのですか?」

 「…………」


 無いとは言えないだろう。一度だけだが暴力を受けたことがある。あの時はセドリックが助けてくれた。


 その後も、クローディアの実家、旧エヴァレスト邸の屋敷私僕たちが家人たちに立ち向かってくれたから、兄や義母の方からクローディアに接触してきたことはほとんどない。


 あの兄に会いに行っていたのは、クローディアの方だった。


 屋敷私僕たちが幾度となく止めるのも聞かず、自分から兄に会いに行っては、セドリックがあちらでどうしているのか、教えてもらっていた。


 九年前、セドリックが王立学院へと就学してから、クローディアは約束通り、正導学の勉強をしながら近況を報せる手紙を書いたが、セドリックからの返事はなかった。


 学院で何かあったのかと、セドリックの生家、旧ペンバートン邸の屋敷私僕たちにも頼んで手紙を書いてもらったこともあるが、それでも返事はなくて、セドリックはどうやら両親との面会や、生家への帰省もまともにしていないようだった。


 クローディアは、もっとセドリックの様子を知りたかったし、会いに行きたかったが、クライン家とヘインズ家は例の一件でただでさえ折り合いが悪い。セドリックの両親から手紙以上の協力を得ることは難しかった。


 手紙を書いても駄目ならと、クローディアは学院へ就学しようとしたこともある。


 だが、それだけは義母が絶対に許さなかった。

 ばかりか、そんなことをさせるくらいなら、家の恥をさらしてでもセドリックとの婚約を破棄させるとさえ言い出したのである。


 再び、屋敷私僕たちが反発した。


 しかし、自分のせいで家人たちが揉めていることに耐えられず、何より、セドリックとの婚約が破談になってしまうことを恐れて、クローディアはすぐさま自分の考えを取り下げる。学院へ近づくことすら出来なくなった。


 そのうえ、セドリックとまともに連絡が取れていないことを兄に悟られてしまう。


 彼は最初、親切ごかして、同じ構内にいるセドリックの事を知りたければ教えてやると、クローディアへ持ちかけてきた。


 子守(シエナ)から忠告されたが、クローディアは抗いきれず、その誘惑に乗ってしまう。

 兄は、確かに色々なことを教えてくれたが、それはシエナの忠告どおり、すぐに嘘か本当か分からない悪意にまみれたものへと変わっていった。


 悪意があると気付いていたのに、セドリックの事を知りたさに、クローディアはひと月も経たずに自分から聞きに行くという愚かな行動を繰り返した。


 やがて、クローディアが十三歳の時、セドリックにはテレサ・ランヘルという同級生の恋人がいると兄から教えられる。


 クローディアは、そこでようやく兄へ会いに行くのを止めた。

 その代わりに、孤児院へと通い出す。


 孤児院通いで、しばらくは穏やかに凪いだ暮らしを送っていたが、やがてノエルと出会うことになり、彼が王立学院へと進むと、凝りもせずノエルを介してセドリックの様子を教えてもらうようになっていた。


 その時にはもう、旧リッテンバーグ邸という、五十年前に臨界現象を起こした旧家の完全復旧を成し遂げていたセドリック・ヘインズはちょっとした有名人になっていた。


 それは、学生の身分だったノエルにまで噂が届くほどだったが、そうして第三者を介したことで、兄から聞かされていた悪意のある噂は、あながち嘘だけでは無かったことを――テレサ・ランヘルという女性が実在していたことを、クローディアは知ってしまう。


 クローディアは、兄に会うのが怖かった。

 彼は、熟知しているはずなのだ。何をどう言えばクローディアが傷付くのか。


 ずっと子供だった頃は、どんな罵倒や嘲笑にさらされても平気だったのに、セドリックと出会ってから、クローディアの心にはとても脆い部分が出来てしまった。


 そのうえ場所(ここ)は、義母が絶対に近寄らせたくなかった学院の構内で、こんなところで出くわしたとなると、いったい何を言われるか分かったものではない。


 はやく帰れば良かったと、クローディアの頭の中は後悔で埋め尽くされてく。

 そうやって、すぐ側にローナが居ることも忘れて、どうすればいいのか一人で思い悩み、深みに嵌り込んでいった。


 どれほどそうしていたか、耳元から突然と声が聞こえた。クローディアは肩を震わせてしまったが、それはローナのささやき声だった。


 「奥様、ローナに考えがあります」


 まるで、心を撫でていくような優しい声。


 「奥様が、あのお兄様とかから身を潜めたいのなら、このように寄る辺のない通路より、もっと良い場所がございますよ」


 「…………どこ?」

 「では、ローナがこれから取る行動に、お許しをいただけますか?」


 クローディアはこくりと頷いた。


 するとローナは、髪飾り――銀細工のチョウから人型の姿へと戻っていく。

 うずくまっていたクローディアの傍らに、立ち上がるようにして現れた。


 ローナは一度、自らの女主人へと微笑みを浮かべてから、おもむろに足を繰り出していくと、少し離れた場所にあった飴色の木の扉に向かい、取っ手に手をやった。


 部屋の中に隠れるという発想がなかったクローディアはぽかんとするが、しかし、ローナがドアノブを回しても扉は開かず、しっかりと施錠されているようだった。


 扉が開かないことは分かっているはずなのに、それでも彼女はがちゃがちゃと取っ手を引き続けた。


 数秒ほどそうしていたかと思えば、不意に人影が差す。


 本当に何の前触れもなく出現した人影は、かしこまった制服を着込んだ女性の永久公僕だった。彼女は、手に持っていた木状をかつんと床について語り出す。


 「わたくしは、永久公僕、百聞回廊の警士(リクトル)です。そちらの部屋の使用目的をお聞かせ願いますか?」


 「ええ、かまいません」


 ローナは、聞かれるのを待っていたかのように彼女へと応じた。


 「では、まずお名前とご身分を」


 「私は、そちらへおられる女主人クローディア・ヘインズ様にお仕えする、旧リッテンバーグ邸屋敷私僕の二、侍女(レディースメイド)のローナと申します」


 警士(リクトル)と名乗った永久公僕は、廊下の隅に座り込むクローディアに顔を向けてからローナへと視線を戻した。


 「……承りました。少々お待ちを」


 言って、彼女は黙り込むと、しばらく虚空を見つめ出す。


 「――確認いたしました。ですが、ヘインズ様、ローナ様。貴女がたには、件の部屋を使用する権限を与えらておりません」


 「いいえ。どうかもう一度ご確認ください。ロイド・マキオン老師から構内を見学する許可が出ているはずです。許可された範囲には、この部屋の内覧も含まれていたかと。何かの手違いがあったのかもしれません。老師へと直に問い合わせてみてください」


 「……では、少々お待ちを」


 クローディアはローナの言葉に違和感を覚えたが、ローナはしれとして続けた。


 「奥様、もう少しお待ちを。部屋に入れましたら、ゆっくりお休みいたしましょう」


 彼女の言葉に反応したのはクローディアではなく、マキオン老師へ確認を取っていたはずの警士とだった。


 「お具合が優れないのですか? でしたら医師をご用意しましょう」


 「いいえ。どうか事を大きくされませんよう。奥様は、ここへの見学をとても楽しみにされておりました。医者にかかってしまうと、帰宅を命ぜられてしまうかもしれません。しばらく休ませてもらえれば、すぐにご回復されるでしょう」


 「……畏まりました」


 警士は、ちらりとクローディアに目をやってから再び虚空を見つめた。

 今度こそマキオン老師へと確認を取っているのだろう。


 「……確認いたしました。確かに老師からの許可が出されていたようです」


 え、とクローディアは内心で驚いたが、警士はそれに気付かず、誰も触れていない扉の取っ手からはカチャリという解錠の音がした。


 「こちらの不手際だったようです。たいへん申し訳ありません」

 「いいえ」


 「しかし、現在“仮植の部屋”は仮眠状態にありますので、照明はできるだけ絞らせていただきたく存じます」


 「ええ。かまいません」


 「では、ごゆるりと過ごされまよう。他にご用件かございましたら、その時はわたくしどもをお呼びください」


 一礼をした警士は、そのまま音もなく姿をくらませる。


 彼女の姿が見えなくなると、ローナはクローディアを振り返り、とても美しい微笑みを見せた。


 どことなく悪い顔に見えたのは、おそらく気のせいではないだろう。






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