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異世界召喚 〜リアルすぎるカードバトルを添えて~  作者: 一刻一機
第一章 ~貧乏姫の戦争~
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第一章 〜貧乏姫の戦争〜(7)

12


「やられましたね」

 今、城中の人間が集まって、今後の対策会議を開くことになったらしい。

 それはいい。

 今回の女王巨人蜘蛛クイーンジャイアントスパイダーの被害は小規模で抑える事に成功したとは言え、初めて帝国側から具体的な侵略を受けた事件だった。

 それに、今後、帝国側との戦争はますます本格化していく事が、これで確定になったのだ。


 だが、どうしても言わなければならない事がある。


「何故、こんな重要な会議を食堂で?」

 ここは、普段俺も使っている食堂だった。

 しかも城のパーティーホールのような場所ではなく、使用人達が食事を摂るような狭い場所だ。

「え、だって……この人数ですし」

 俺の突っ込みに対し、キリアが「当たり前でしょ」みたいな顔をしている。

「いや、だって王様だっているのに……」

 この狭い食堂には、仮にも「王様」がいるのだ。

 仮にも。

 見た目は普通の中年の平民Aだが、一応は王様なのだ。


 そう、俺の目の前には「王様」がいる。

 実はこの一ヵ月の間に何回も顔を合わせているのだが、王様だと気づかなかったのだ。

 いわゆる「王様」と言えば、金の冠を被り、赤いマントを身に着けた肥満体の中高年で、お小遣い程度の未成年に渡し、それで魔王を倒して来いとか無茶振りをするアレのはずだ。

 大分偏見が入っているが、概ね「偉そうな人」という認識に誤りは無いはずだ。


 しかし、目の前の王様はファラ達が着ているような、普通の皮でできたゴワゴワの服に身を包むのみで、冠どころか装飾品の類は一切身に着けていない。

 体型もすっきりと細く、むしろキリアによく似た、同じ碧色の眼に、鮮やかな金髪をしているナイスミドルだ。

 護衛の一人も連れて歩いていないこの人を、「王様」と見抜けなかった俺を誰も責められないはずだ。


「人数六人しかいないんですよ?本当の会議室は、来賓が来たとき以外、開放しません。管理費の無駄です」

「はぁ、そうっすか……」  

 確かに、現在この場には、俺とキリア、そして王様と宰相兼大臣三名。そしてメイドさん一名の計六人しかいない。

 大臣が異常に少なく感じるが、普段はテッサさんが、護衛と軍務大臣も兼ねていたとか。

 護衛に大臣をやらせるなよとか、明らかに国を支える人数として不足しているだろとか、突っ込みたい点がたくさんあるが、そもそも大臣に報奨金もろくに支払えないらしいので、誰も大臣をやりたがらないらしい。

 この国の貴族は、基本みんな日中家族総出で野良仕事に出ているとか。

 何度聞いても、無茶苦茶な話である。


 と言うか、メイドさん会議の参加人数にカウントするんだ……

 あまりにも突っ込む点が多すぎて、くじけそうになってきた。

 さっさと会議を進めるべきなのだろう。


 ◇


「私達は、帝国に対し、自分達が装備や人数で劣っている事は百も承知でしたが、それでも防衛に徹する限り十倍の兵力差があろうとも国を守り切る事は容易いと考えていました。それは、聖樹様の森があるからです」

 キリアは、俺に顔を向けて説明しだした。

 この場の全員にとっては自明の理なのだろうが、あえて俺のために詳しく話してくれているのだろう。


 キリア曰く--

 聖樹の森は、大陸でも有数の高ランク魔物(モンスター)跋扈(ばっこ)する危険地帯だが、聖樹様の加護により、滅多な事では生活圏内に魔物(モンスター)が来ることも無い。

 もちろん、全く被害が無いわけでは無いが、それにより、逆に国民一人一人の防衛に関する意識は高くなり、民兵の練度を押し上げる結果に結びついている。


 この聖樹の森の魔物(モンスター)が帝国兵の侵攻を防ぐ、最強の防波堤であり、事実建国以来ありとあらゆる他国の干渉を跳ね返してきた実績があった。


 今回は、その魔物(モンスター)を逆手に取られる形となったのだ。


 キリアをはじめとし、聖樹の国の誰もが、まさか兵の命をエサに、魔物(モンスター)を侵略に利用するとは考えていなかったのだ。

 今回、帝国側は森を探索し、女王巨人蜘蛛(クイーンジャイアントスパイダー)と言う希少種(レア)魔物(モンスター)の巣を発見、破壊。更に聖樹の国内まで誘導するという作戦を実行したが、恐らくその為に失われた兵士の命は百や二百では効かないだろう。

 森を徘徊するだけでも、聖樹の国の民にとっても命懸けなのだ。


 しかし結果として、こちらの最大戦力である『神武』のテッサが負傷し戦線離脱。

 聖樹の森は常に自分たちの味方であるという、油断と驕りが招いた結果だった。


 帝国側が、この機会を逃すはずが無い。


 今度こそ、大軍を引き連れて攻めてくるはずだ。


 --と言う事らしい。


 テッサ爺さんの二つ名が『神武』とやたらと格好いいのだが、突っ込めば話が長くなりそうなので、とりあえずスルーしたいと思う。

「それで、俺は何でこの会議に?」

「爺が抜けた穴が、余りにも大きすぎます。本来、爺が用意するはずだった、五ツ星の魔物モンスターをミナト様がカード化する事ができたのは僥倖でした。何とか、対帝国戦で、その力をお貸し下さい」

「うっ……」

 それを言われると、非常に弱い。

 緊急時に、本人から渡されたのだから、別に使ってもいいじゃないかと言いたいが、本来であれば、あのカードは、この国の切り札的な存在だったらしい。

 本当は、テッサさんとキリアは、森に地竜を探しに行き、あのカードで使役させる予定だったとの事。

 

 それを俺は、あの超巨大蜘蛛、「女王巨人蜘蛛クイーンジャイアントスパイダー」に使ってしまったのだ。

 

 ちなみに、これが「女王巨人蜘蛛クイーンジャイアントスパイダー」のステータスだ。


「   」女王巨人蜘蛛クイーンジャイアントスパイダー ★★★★★★

体力 ★★★★★★

魔力 ★★★

攻撃 ★★★★★★

防御 ★★★★★

素早 ★★

知性 ★★★★

精神 ★★★★

特性:土属性、毒無効、状態異常耐性

特技:仔蜘蛛増殖、猛毒攻撃、鋼の糸、土魔法、病魔法、


 クロスケの存在が霞んで見えるレベルである。

 キリアや王様達は、最初このステータスを見て、顎がはずれる程に驚いていた。

 どうやら、五ツ星のカードで六ツ星の魔物モンスターを捕まえた事が、まず非常識だったらしい。

 しかも、当初予定していた地竜よりも、余裕で強いとか。

 ただ、どれだけ凄いと騒がれても、テッサさんとキリアが散々痛めつけた後に、漁夫の利的に手に入れてしまった魔物モンスターなので、全く喜べない。


 あ、ちなみに、クロスケも今回の戦闘でたくさんの蜘蛛を倒し(食べて?)かなりのレベルアップを果たした、


「クロスケ」ダークスライム★★(+1)

体力 ★★(+1)

魔力 ★(+1)

攻撃 ★★(+1)

防御 ★★(+1)

素早 ★(+1)

知性 ★(+1)

精神 ★(+1)

特性:闇属性、衝撃吸収、魔素吸収、毒無効(NEW)、状態異常耐性(NEW)

特技:溶解、影真似、鉄の糸(NEW)、土魔法(NEW)


 ステータスだけなら大した変化が無さそうだが、 名前が微妙に「ブラックスライム」から「ダークスライム」に変化したほかに、新たな特性や特技がたくさん増えている。

 これは、恐らく巨人蜘蛛ジャイアントスパイダーが持っていたスキル等だと思われる。

 ただ、別にステータスなんて関係ないのだ。

 クロスケは蜘蛛にのしかかられ、死にそうだった俺を、体を張って助けてくれたと言う恩がある。

 俺のメインの召喚魔物なかま)は、誰が何と言おうとクロスケなのである。


「わかったよ。俺自身は大したことはできないけど、女王巨人蜘蛛クイーンジャイアントスパイダーに後ろから、適当に指示を出しておくよ」

「はい。お願いします。ただ……六ツ星のカードなんて、使用するどころか札束デッキに入れるのさえ、レベルが不足していれば命に関わるはずです」

「ああ、魔法カードは、本来なら微弱な魔力を吸収するけど、星数ランクの高いカードは、その「微弱」っていうのさえ洒落にならないレベルだって話だろ?」

「そうです。また、使用する際は、お一人の魔力ではとても足りないでしょうから、十人以上の魔法士と、共同で召喚の儀を行いながら使って頂きます。間違っても、普段は以前お渡したカードホルダーではなく、城にある封印魔法付の金庫に、厳重にしまっておいて下さい」

 キリアと、他の全員が真剣な表情で頷いている。

 どうやら、六ツ星レベルになれば、戦略兵器のような扱いになるらしい。

「え、ごめん。今も持ってるし、昨夜召喚してみたらできちゃったけど……」

 だが、俺はぽりぽりと後頭部をかきながら、全員の真剣な顔を崩してしまった。

「は……?え?今、何とおっしゃいました?」

 フリーズした全員に代わり、キリアがぎこちない笑顔で、俺に尋ねてきた。

「いや、昨夜、みんなが寝た後にお試しで召喚してみちゃったんだけど……」


「「「「「・・・・・・・・はぁ!?」」」」」


「いやいやいや、待ってください、ミナト様。六ツ星ですよ!?六ツ星のカードを発動するのに……え?」

「あの、ごめん。何で、そんなに驚いてるかわからないんだけど?俺、今までだって、突風弾エアシュートとか治癒キュアとか二ツ星のカードを使ってたよ?そのたった三倍だろ?」

「……この方は、本気でおっしゃってるんですか?」

 大臣の一人が、俺を指差し引き攣った笑いをしている。

 失礼な。

「……はぁ。魔法カードが無い国からいらっしゃったというのは本当ですか。ええとですね、実際には面倒な計算式があるらしいのですが、簡単に言えば星数が一つ増える毎に、乗数計算で必要な魔力やその威力が増加していくと言われています。一般的には、一ツ星で十の魔力を使うとするならば、六ツ星は十の六乗ですので、……百万の魔力が必要ですね。」

 財務大臣と総務大臣を兼ねているという、もう一人の大臣が俺に教えてくれた。

 星一つの価値は俺が想像しているよりも、遥かに高いらしい。

 というか今の計算なら、単純計算で女王巨人蜘蛛クイーンジャイアントスパイダーは、レベルアップしたクロスケが一万体呼び出せる計算になるな。

 レベルアップ前なら、十万体だ。

 ……それは、確かに驚きだな。

 でも、考えてみればスライムが一万匹いても、あの蜘蛛の化け物を倒すことはできないだろうから、やはりそう単純な話しではないのだろう。


「こほん……話が逸れましたが、いくら六ツ星の化け物を呼び出せたとしても、さすがにお一人では数分維持するのが限度でしょう。有事の際は、城の前に魔力共有のための陣を敷きます。そして、魔力保有量の多い者十名とミナト様が陣の中で待機し、敵軍本体を限界まで引き込み、その後、女王巨人蜘蛛クイーンジャイアントスパイダーを召喚して頂きます。その方針でよろしいですか?」

「ああ。それで行こう。当日は、テッサがいない分、私も前線に出るからな」

「お、王!それは、やめて下され!」

「そうですぞ!悪い癖です!」

 キリアが王様に話を振ると、何と王様が前線に立つと言い出した。

 そして、当然のように大臣達が止めに入る。

「えー。だって、女王巨人蜘蛛クイーンジャイアントスパイダーが出るなら、折角の戦闘があっさり終わりそうじゃないか」

 ……ああ、こんな柔和な顔をした人なのに、やっぱりキリアの父親なのか。

 「イイ笑顔」で指をわきわきと動かし、今にも舌なめずりをしそうな勢いである。

 本当にやってはいないが。

「お父様、さすがに自重して下さいませ」

「ふんっ。あいつら、聖樹様の国に土足で上がり込んだんだぞ?相応の対応って奴が必要だろう?」

 どうやら、顔は笑っているが、かなりブチ切れているようだ。

 それもそうか。

 今回の事件だって、色々な要素が絡まって運良く人的被害がゼロで収まったが、下手をすれば国中にあの巨大な蜘蛛がはびこり、多数の死者が出た可能性があったのだ。

 だが、さすがに仮にも一国の王を前線に出すわけにはいかないのか、キリアの必死の説得により、王様もあきらめたようだ。


「お父様、敵の大将首は私が戴くんですからね!?」

「何!?前線に出るのが駄目なら、せめて大将と一騎打ちを……」

 って、キリアが王様を止めた理由って、それか!?

 駄目だ、この戦闘狂バトルジャンキー親子……早くどうにかしないと。

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