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異世界召喚 〜リアルすぎるカードバトルを添えて~  作者: 一刻一機
第二章 ~獣人村の異変~
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第二章 ~獣人村の異変~(12)

15


「『岩石壁ロックウォール』!!」

 俺の作り出した、岩の壁に溶岩蛙マグマフロッグが吐き出した灼熱の液体を遮る。


 カードショップの親父にかなりふんだくられたが、この『岩石壁ロックウォール』は火山地帯ととても相性の良い魔法だ。

 なにせ、周辺全てが岩と石である。

 四ツ星だけあって、体感的にかなりの魔力が体から吸い取られているのがわかるが、スムーズに岩の壁が地面からせり出し、敵の攻撃を防いでくれる。


「『闇の槍(ダークランス)』!」

 俺が敵の攻撃を防ぐ間に、ミルドが蛙達を黒い魔法の槍で串刺しにしていく。


 十数体いたはずの溶岩蛙マグマフロッグは、瞬く間に全滅しクロスケの腹(?)に収まることになった。


「クロスケ、今度は魔石も食べていいぞー」

 四ツ星以上の魔石を与えれば、クロスケも次の位階ステージに進化する気がするが、別にレベルアップとは関係なくクロスケが欲しそうなので、三ツ星相当の溶岩蛙マグマフロッグの魔石も与えてみる。

「王は、そのスライムに甘いですねぇ……」

 ミルドにあきれられても関係ない。

 ムニムニと全身を震わせてクロスケが、十数個の魔石全てを取り込んでいく。


「おお……ん?俺の魔力も欲しいのか?」


 魔石を呑み込んでいる最中に、俺の魔力もせがまれたので適当にクロスケに注いでみた。

 一体全体どうしたんだ?今まで自分から魔力を求めて来たことなんてなかったのに。


「クロスケ」ダークネス・スライム ★★★

 体力 ★★★

 魔力 ★★(+1)

 攻撃 ★★★

 防御 ★★★

 素早 ★★★

 知性 ★★(+1)

 精神 ★★(+1)

 特性:闇属性、衝撃吸収、魔素吸収、毒無効、状態異常耐性、物理耐性、火耐性(強)(NEW!)

 特技:溶解、影真似、鉄の糸、土魔法、火魔法(NEW!)、硬化


 クロスケは、魔石を飲み過ぎて苦しそうだったが、最終的に俺の魔力で無理やり溶かし切ったようだ。

 心配になって、クロスケのステータスを見てみたところ、なんと位階ステージは上がっていないが、魔力や知性・精神がレベルアップした他、新しいスキルが身についていた。

「こういう事もあるのか」

「そうですね。スライムは特に魔力の影響を受けやすい種族と言われていますから、魔石を取り込んで新しい特性や特技を得ると言う事もあるかもしれませんね」

「へえ、ミルドは博識だな」

「我々は、魔を司る一族と言われていますから。魔物の研究も人間達よりも、遥かに進んでいると思います」

 ミルドの自慢気な顔を横眼に、俺は一応頷いて見せた。


 その後も、出てくる魔物モンスターを屠っては魔石に変え、クロスケとおまけでレッド・ハイゴブリンに与えながら洞窟を奥に進んでいくと、俺の『熱源感知ヒートセンス』に超高熱体が感知された。


 同時にクロスケもビクリと全身を震わせた。


 GYAOOOOOO!


 そして、すぐに耳をつんざく様な、「何か」の咆哮と破壊音が聞こえる。

 レッドハイゴブリンは、この咆哮が聞こえてから異常を察知したようで、今更ながら飛び上がって驚き、俺の後ろに隠れた。


 おい、俺を盾にするなよ。


「これは!?」

 ミルドもようやっと異変に気付いたようだ。

「初めて聞いた声だが、今までのどの魔物モンスターよりも高い熱量と、ここまで漂ってくる魔力の残滓からすれば、多分……噂の赤竜レッドドラゴンって奴じゃないか?」


 GAAAAAA!!


「ぐっ…これは!?……鳴き声だけで、ここまでの威圧だとは……!」

「ああ、これはすごいな。だが、これって何か鳴き声って言うよりは、泣き声っぽくないか?戦闘音も聞こえるし」

「えええ!?私達よりも先に、誰かが既にここに来て、しかも赤竜レッドドラゴンと戦っているのですか!?」

 どうやらミルドには、赤竜レッドドラゴンとは別の強い魔力が流れてきているのを感じ取れないようだ。

 俺に魔力の感知方法を教えてくれたのは、ミルドのはずなのだが……


 しかしそんなことを気にしている場合ではない。

 今の問題は赤竜レッドドラゴンと戦っている連中がいると言う事だ。

 赤竜レッドドラゴンは六ツ星クラスと聞いている。

 ならば、最低でも女王巨人蜘蛛マリアと戦えるレベルの、かなりの強者が来ていると言う事だ。

「まずいな。先に赤竜を狩られれば、予定していた金策がパアだ」

 斡旋所の受付係が、さも売れ残りの依頼クエストであるかの様に話していたので、完全に油断しいていたな。

「先にお金の心配ですか!?いえ、それよりも今戦っている連中が、必ずしも赤竜レッドドラゴンに勝てるとも限りません。むしろ、普通に考えれば十中八九失敗するでしょう」

「ん?何でそう思うんだ?」

「竜狩りには、通常軍隊が出動するレベルです。今回は軍が動かないとの事でしたが、どこかの傭兵団クランのような大人数が動いている痕跡もありません。おおかた、金に目が眩み少数で突撃した馬鹿者共でしょう」

 いや、まさに俺が、金に目が眩んで少数で突撃してきた一人なのだが……

「それは、どうかなー。戦闘の気配からすると、互角な雰囲気……むしろ赤竜が押されてる気がするんだけど……」

「そんなまさか……人族にそれほどの強者が居るのですか?」

「さあ、人族じゃないかもしれないし。とりあえず覗くだけ覗いてみるか」

 第三者と遭遇しても良いように、念のため再度クロスケを、面付兜フルフェイスマスクとして頭部に装着したところ……あれ!?いきなり熱気が遮断されてすっごい快適!あれか!?クロスケが『火耐性(強)』を身につけたからか!?

 心なしか、フィット感も増し、頭に感じる違和感が全くなくなった。

 むしろ、顔を隠す必要が無くなっても、ずっとかぶっていたいぐらいの包容力だ。


……返セ

 そんな、クロスケのフィット感に酔いしれている俺の耳に、魂の底に響くような重い呟きが聞こえた。


「……ん?」

 先程から洞窟内に反響する赤竜レッドドラゴンの叫び声が変わった?


 GAAAAAAAA!!

……返セエエエエエエェェェ!!


「!?」

 いや、同じ咆哮だが、脳内に意味が伝わってくる?

 女王巨人蜘蛛マリアが話しかけてくる時と同じような感覚だ。 

「ミルド、赤竜レッドドラゴンの鳴声が変わったのに気づいたか?」

「え?さっきから、ずっと同じですよ?」

 ふむ。ミルドには同じ様に聞こえてるのか。

 女王巨人蜘蛛マリアの声は、『召喚カード』で魔力的つながりができてから聞き取れるようになったため、俺しかマリアの声がわからないのは理解できるが、俺と赤竜レッドドラゴンとは何のつながりも無いはずだ。

 もしくは、これもアベルの『意思疎通コミュニケーション』の魔法の効果なのだろうか。


 今考えてわかるようなことではないので、俺はすぐに考察をあきらめた。

 しかし、赤竜レッドドラゴンは何を返せと訴えてるんだ?


 ◇


 俺とミルドが、赤竜と誰かが戦闘を行っている部屋にたどり着いたところ、そこには驚愕の光景が広がっていた。

「キリア!?」

 日本の雑居ビル二つ分はあろうかと言う巨大な赤い竜が、燃え盛る炎を吹きながら、小さな人影を追い回している。

 リアルに残像を残しながら、壁と壁の間を立体移動できる人間なんて存在したんだ……

 いや相対的に小さく見えるだけで、あれはキリアだった。

 数日前に別れた時と同じ服装だし、あのスピードで動ける長い金髪の女性は、地球でも異世界ここでも見たことは無い。と言うか、普通に人間辞めてるような、特撮映画もびっくりのアクションだ。(テッサさんなら、これ以上の動きができるだろうが)

 

 キリアが炎や爪を躱し、赤竜レッドドラゴンに近づく度に、赤竜からその鱗や炎とは明らかに違う、赤い液体が吹き出している。


ーー私ノ子供達ヲ返セエエエエエエ!!


「何!?」


「この声と魔力は……お主、ミナトか!?無事じゃったか!……って、何じゃ、その怪しいマスクは?」

 数日ぶりに会ったアベルが、俺の懐に文字通り飛び込んで来たが、赤竜レッドドラゴンから聞き捨てならない声が聞こえてきたため、それどころではなくなった。

「アベル!あのドラゴンの声が聞こえたか!?」

「ドラゴンの声?そんなものわかるわけが……ああ、なるほど。それでそこにゴブリンが……」

 アベルが俺の話を聞かず、何か小さな声でぶつぶつ言いだしたが、アベルも赤竜レッドドラゴンの声が聞こえていないという事はわかった。

 ならば、キリアにも当然聞こえていないだろう。

「アベル、ミルド、俺はキリアーーそこで大暴れしてる金髪の狂戦士バーサーカーを止めてくる。邪魔をするなよ!」

「えっ!?あんな戦いに参加するんですか!?しかも止める!?無茶です!王よ、おやめください!」

「ミナトよ、誰じゃこの女子おなごは?王とはどういうことじゃ?」

 アベルとミルドは、互いを指差しながら、俺に疑問をぶつけてくる。


 ああもう!!


 場はいいだけ混乱している。

 全ての説明は後回しだ。


「『速度強化スピードアップ』!」

 魔法カードで速度を上げ、キリアと赤竜レッドドラゴンの間に立ちはだかった。

「止せキリア!」

「何者!?」

 キリアらしくもなく、戦いに集中するあまり俺(邪魔者)の存在に気づかなかったようだ。

 それだけ赤竜レッドドラゴンが強敵と言うことか。

 しかも、仮面クロスケをかぶったままにしていたので、そもそも俺だと気づいてないのか!?

 アベルは声と魔力で、すぐに俺だと気付いてくれたから油断した!


 GAAAAAA!!

ーー返セエエエ!


 赤竜レッドドラゴンのボルテージもいい塩梅にマックスゲージを振り切っている。

「ぬああああ!『防火幕ファイアガードスクリーン』!『精神強化マインドアップ(中)』!『体力強化ライフアップ』!」

 キリアを焼こうと吹かれた炎が、俺の全身を容赦なく包み込む。

(熱ぃぃぃぃいい!?)

 声にならない絶叫が喉の奥で震え、クロスケの声にならない悲鳴が脳内に伝わってくる。

 クロスケのおかげで外気温をかなり抑制でているがこれ、いくら魔法があっても、普通なら呼吸しただけで肺が焼けて死ぬんじゃないか?


「……『治癒キュア』」


 人間の皮膚って何パーセント以上火傷を負えば、皮膚呼吸できなくなって死ぬんだっけ……


 魔法で必死にガードしたにも関わらず、そんな疑問が頭に浮かんでくるほど全身が焼け爛れた。

 『防火幕ファイアガードスクリーン』にお陰で、直接的な炎は防げても押さえきれない熱波だけで皮膚が焼けて崩れていく。

 もっとも、『治癒キュア』に全力を込めれば全ての外傷は治るので、服が焼けていないことのほうが大事かもしれない。


好機チャンス)複合魔法コンボ攻撃強化パワーアップ』『武器強化ウェポンストレングス)』竜爪!」

 そしてキリアは、俺が竜の炎(ドラゴンブレス)を止めた隙をついて、赤竜レッドドラゴンに黄金に輝く右手を振りかぶった。

「止せと言っているだろ!」

「貴方が例の黒仮面ね!単独で竜の炎を止めるとは、噂以上の化け物のようね!でも、流石に竜爪これは止められないでしょう!?」

「人の話を聞けっ!くっ、いけるか!?『防御強化ディフェンスアップ』十枚!』

 戦闘狂バトルマニアに化け物呼ばわりされるとは、甚だ遺憾である。


 ざくりと素手で斬り付けたとは思えない音が響き、痛みと共に俺の鼓膜を打った。

「痛ぇぇぇぇっ!!」

「ほ、本気で受け止めた!?あんた馬鹿なの!?」

俺の魔法の防護幕を軽々と打ち破り、キリアの五指が俺の二の腕を半ばまで断ち切っている。

「痛っつぅぅ……『治癒キュア』……」

 これも『治癒キュア』で治るとは言え、痛みは身体中に残りすぐに動くことはできない。

「回復力も化け物じみてるわね。私の弟子並みだわ」

「だから、俺だって……いい加減っ!?」

 頭上に影を感じ、慌てて地面を転がると俺の居た場所に竜の巨大な足が落ちてきた。


GRRRRR……

ーー小賢シイ人間共メ……


「だぁ!お前もいい加減落ち着けっての!」

 赤竜レッドドラゴンとキリアのダブル化け物を同時に相手してられるか。


「ん?ーーなんだ!?」

 今度は一体全体何が起きた。

 突如として俺たちを囲むように、多数の気配が湧いて出て来た。

 そう。

 まさに、地下水が湧き出るように何もない空間から突然たくさんの人間がでてきたのだ。

「何?なんなのこいつら!?」

 キリアも降ってわいたような、多くの人間達に驚いている。


「おお、本当に赤竜レッドドラゴンだ!攻略サイトの情報通りだったな!」

「そうね。協力NPCも居るわ」

「出来れば『隷属化(スレイブ』したいから、間違って殺すなよ?」

「オラっち、デスペナは嫌なので加減できるか……」


 つい数秒前まで命の遣り取りをしていた俺達とは、まったく違う空気を醸し出す、お気楽な声が洞窟内に響いた。


 赤竜レッドドラゴンとは違い、はっきりと俺にも理解できる言語だったにも関わらず、俺には彼らが何を言っているか全く理解できなかった。


 何を……何を言ってる?

 まるでゲームのような……


 こいつらの気配はあるのに、異常に希薄だ。

 まるで、作り物みたいに。

 それに全くと言っていいほど、こいつらから魔力を感じることがきできない。

 異世界に来てからは、街を歩いていれば、乳幼児から小さな犬まで僅かにでも持っている魔力が、一切感じられない?


 異世界に来てから?


 まさか……あいつらも俺と同じように?

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