思い出したくない
今回はいよいよ主人公の過去です。
少し病みストーリーになっていますので、苦手な方はご注意ください。
この作品のモデルは、作者本人です。
その他の登場人物は、架空人物です。
完全オリジナルストーリーです。
「なんであいつって、いつも休んでんの」
「なんか、ずる休みらしいよ」
「あ、やっぱりー」
そんな心ない会話が、聞こえてきた。
久しぶりに学校に来た私は完全に浮いていて、教室に入った瞬間に、皆はヒソヒソ話。
最初は、母がいつも言っているように
「言いたいやつには言わせておけ」
を心の中で唱え続けて、頑張っていた。
だけど、なんでかな。
段々それはエスカレートして、私が言わなければ言わないほど、周りは大きな声で私に聞こえるように話してくる。
もうそれは、陰口でも、ヒソヒソ話でもなく、ただの悪口変わっていった。
一番きつかったのは体育、クラブ活動だったな。
ペアを作ったりする授業のときはいつも先生とだった。
私が話しかけても、
「菌が移る―!!」
と、笑って逃げていく。
ああ、なんて取り返しのつかない事をしてしまったんだろうって。
私は自分を責めた。
でも今思えば、そこまで自分を追い詰める必要はなかったのかも知れない。
そんな日が二カ月以上続いたある日、私は吐いた。
酷い頭痛に襲われ、トイレで空っぽの胃から胃液を口から出し続けた。
それを見て、心配した母が急いで病院に連れて行ってくれて、医師から診断された結果はストレス性のものだった。
家の近くの病院は大きな病院に紹介状を書いてくれて、私は大きな病院に連れて行かれた。
連れて行かれた病棟は、小児科でも、内科でもなく、「精神科」だった。
「ねえ、お母さん、ここ何するとこ?」
はじめて聞いた「精神科」という言葉を母に尋ねた。
そしたら、母は困ったような表情で
「あなたの病気を治してもらう所よ。」
その声のトーン、表情を見て、すぐにわかった。
この質問はしてはいけなかったんだと。
「ここでお待ちください」
受付の女の人に案内され、連れられてきた待合室。
隣にいる母は、肩を震わせ、今にも泣きそうな表情をしていた。
周りで待っている人は、少し変わっているように感じた。
唸っている人、泣いている人、笑っている人。
その年齢層もバラバラで、本当にここがどういう場所なのか小学六年生の私には理解できなかった。
一時間ぐらい経った頃、ようやく私の名前が呼ばれ、診察室に入った。
中には30代ぐらいの男の先生と、後ろには若い女の先生が座っていた。
「お待たせいたしました」
そう言われると、母は「いいえ」と返した。
先生は一息ついて口を開いた。
「えっと、吐き気と頭痛が酷いと。他には何か変わったことはございませんか」
その男の先生は、にこにこしながら私の顔を覗いて、話しかけてくれた。
でも私は極度の人見知りで、なかなか口を開くことができない。
どうしよう・・・なんて言えば・・・
頭の中では言葉がが出てくるのに、なかなか声に出せない。
「え、あの、トイレでずっと吐いている状態が続きまして、それが一週間ぐらい前からです。それでも学校には行っていたんですが、段々と酷くなってきまして。」
と、母が私の代わりに先生にあったことを全て話してくれた。
私は安堵のため息をついた。
「なるほど、学校で何か変わったことはない?」
変わったこと、特にない。
いつも通り、無視をされ続けて、悪口を言われ、特に変わったことなんてない。
「・・・ないです。」
私は思ったことを率直に述べた。
だって、何も変わっていない。
「そうか・・・、うん、お母さん、申し訳ありませんがお席を外していただいて宜しいでしょうか。」
私は一瞬何が起きたのか把握できなかったが、母が「はい」と席を立ったことによって何かが起きるということはわかった。
今考えてみれば、先生は何かを察したのかもしれない。
「そうか、じゃあ、家では何かない?」
「・・・ありません。」
私は質問されたことに対して、淡々と答えていった。
後ろの女の先生は、何かをメモを取って、私の表情を確認しているようだな素振りを見せた。
目の前の男の先生は、うーんとすごく悩んだ表情をしている。
少し怖いくらいに真剣だった。
また私は変なことをしたんじゃないかって・・・怖くなった。
「うん、じゃあ質問を変えよう。」
え、質問を変える?
どういうことだ。
「学校では『嫌な』事はない?」
「嫌な」事。
そんなの、あるに決まってる。
無いわけがない。
「・・・あります。」
「うん、どんなことかな。」
先生の表情が一瞬にして変わり、私を見る目が真剣になった。
でも、これは、これだけは言ってはならない。
もし言ってしまったら、これからもっと、今以上に嫌われてしまう。
友達には、嫌われたくない。
だって、そうでしょ。皆そうでしょ。私だけじゃない。
怖い。これは口が裂けても言ってはならない事だ。
ああ、クラスメイトの顔が浮かぶ。声が浮かぶ。
これは私への忠告だ。
そうだ、そうに決まってる。
「・・・」
「言えない?」
「・・・何もないです。」
嘘を吐いた。
「なんでもない」と。また、嘘を吐いた。
嘘・・・そう、嘘。
私はまた親切にしてもらった人に、嘘を吐いた。
あとどれだけ我慢すれば、楽になれる?
あと何日?あと何時間?あと何分?あと何秒?
あと・・・何回?
この作品を読んで頂き、誠にありがとうございます!
今回のお話はいかがだったでしょうか。
私のお友達からは、切ないと感想をいただきました。
うん、確かに切ないと思います・・・
ですがこれから、明るくなる・・・かもしれません!
また、よろしければコメント等を頂けると幸いです。