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せっぺいさん  作者: こころ
第三章 ~ふたり~
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準備

智恵ちいちゃん、いるかぁい?」


おフクは豆腐処「しもつけ屋」の開け放たれた裏戸からずけずけと奥へ足を進め、声をかけた。


「はぁい。どなたかえ?」


目を細めた智恵が奥から顔だけ出してこちらを伺う。


「おフクだよぉ。おはようさん。

ちょっとお願いがあって来たんだ。

朝の忙しい時間にごめんねぇ。

すぐ済ますからちょっといいかい?」


「あ、おフクちゃんかぁい。

ちょっと待ってておくれよ」


そう返事をした智恵は顔を引っ込めた。

奥からは彼女が仕込みの指示を出しているのだろう。

息子の剣心との会話が聞こえてきた。


「はぃはぃ、なんでっしゃろ?おフクちゃん」


「すぐ済ますからごめんねぇ。

お願いってのは、豆腐の屑を分けて欲しいんだよぉ。売り物にならないものや古くなって売り物にならないやつをさ」


「それは構わないさ。今持ってくかい?

集めるのに少しばかり時間貰うよぉ」


おフクのお願い事に即答する智恵。


「いやいや、朝の一番忙しい時間にはいいよぉ。落ち着いた頃、また来るからその時で充分さ」



「そんなゆっくりで大丈夫なんかえ?

うちはいつでも良いからさ。用意しとくねぇ」


おフクの言葉に答える智恵は不思議そうだった。


「夕刻前にまた来るから。

急なお願いなのに、ありがとねぇ」


そう言い残し、いそいそとおフクはしもつけ屋を後にした。


智恵ちいはいっつも自分ことより他人様なんだから。がんばり過ぎて身体からだを壊さないように視といてやらないとねぇ)


「ふふっ」


これで準備が出来たと一安心したおフク。

慌てふためくおユキと捻挫如きに怯える責平せっぺいの顔を思い浮かべ、声に出し微笑むのだった。

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