ここまでのあらすじ&登場人物紹介2
<ここまでのあらすじ>
冒険者学校・戦士科を卒業し、駆け出し冒険者としての第一歩を意気揚々と踏み出した青年、グルーム・ルーム。
だがその第一歩は、ドブ板に足を突っ込んだかのように多難。
近隣にダンジョンがあるという街にまでやってきたはいいものの、仲間にしようとスカウトした盗賊には、「アンタにぶいよ」と早速袖にされてしまう。
その上、町民たちには勇者だ何だと担ぎあげられ縛られて、無理矢理にダンジョンの奥地へと放り込まれる始末。
そこでグルームを待っていたのは、痩せぎすのっぽと、チビデブドワーフの、不気味な老人二人組。ダンジョンマスターの、ディケンスナイクとガゴンゴルだった。
いやらしい笑みを浮かべながら老人たちが語るところによると、グルームはモンスターと結婚する花婿として、このダンジョンに生贄同然に提供されたらしい。
彼と結婚するという、花嫁候補の美女モンスターは三匹。
気さくなアンデッドの女王、ゴシカ・ロイヤル。
高圧的な獣人の女医、Dr.レパルド。
ドジっ子メイドゴーレムのエ・メスだ。
街との和平のためだというこの結婚、しかし街の人間はそれを望んでいる様子はなく、花嫁候補たちも結婚を理解しているのかどうかよくわからない。
よくわからないままに、ダンジョン内のモンスター酒場で花婿歓迎会が開かれ、リザードマンの板長が作る料理を食べ、酒を飲み、笑い、泣き、恐れ、吠え、おとなしくなり、すっかり酔いつぶれて一日目は終了。
二日目。
目を覚ますとグルームは、ダンジョン内に作られた屋敷で寝かされていた。
一つ屋根の下で三匹の美女モンスターと親睦を深め、七日後には電撃結婚させられるという恐ろしい事実を聞き、逃げ出したい意欲が更に高まる。
そんなグルームの気持ちは知らず、自分の本来の住処を未来の旦那に案内する、花嫁三匹。日帰りダンジョン観光里帰りツアーの決行である。
ゴシカの住まう魔窟で、彼女のお付きの三つのしもべになじられて。
Dr.レパルドの住まう屋内ドームで、畑仕事に従事する巨大昆虫と出くわして。
エ・メスが「大旦那様」と呼ぶダンジョンマスターの元で、お茶を飲んで。
他にもゴシカの首が飛んだり、レパルドがにゃんにゃん言ったり、エ・メスのナビ機能が発揮されたりと様々な出来事があったが、特にグルームの興味を引いたのは、ダンジョンマスターと商談をしていた行商人・因幡だった。
この風変わりな商人は、ダンジョン内のあらゆる人物と商売をするという。それが冒険者でもモンスターでも、囚われの花婿様でも。
ここから逃げ出して街へと戻る事ができるマジックアイテムの存在を知ったグルームは、密かに因幡と取引を開始。だがそれを間接的に、街で出会ったあの盗賊が邪魔をする。
ピットと言う名のこの意地汚い盗賊と、諍いの末になんだかんだで仲間になることになったグルーム。
ダンジョンに隠されているという『あらゆる願いを叶える宝』を入手するために、花嫁と今よりもっと親しくなるという目的を得て、二日目が終了。
三日目。
平穏な屋敷で「一体誰と交尾をしたいのだ」などと不穏な話が始まり、たじたじとなっているグルームのところに訪れたのは、ダンジョン酒場の板長だった。
リザードマンの板長が言うには、「テーブルが使えないので使えるようにしてほしい」とのこと。全員連れ立って酒場に赴き、エ・メスがメンテナンスを試みるも、見事にただの鉄くずと化してしまうテーブル。
仕方なく新たな食卓の作成をグルームが提案すると、「人間のスキルに興味がある」と大いに食いついてくる、レパルドとゴシカ。
かくしてオーバースペックな花嫁三匹とともに、屋内ドームの巨木をなぎ倒し、テーブル作成をすることになった。初めての共同作業の開幕である。
波乱もあったがどうにか日曜大工は成功し、しばしの休息。
ダンジョン内の畑の存在意義や、ルールで生息地を分けられた各勢力の話などをしていると、グルームが突然、悪魔に囚えられる。
テーブル運搬のためにゴシカに召喚されたこの悪魔は、相手の意思を総スルーして、勝手に契約を遂行。グルームには「七日後に必ず花嫁候補の誰かと結婚しなくてはならない」という血の掟が刻まれる。
突然の重い契約に頭を抱え、しばらく寝込んで吐き気がおさまるのを避けたいグルームだったが、そこに更なる問題が発生。ダンジョンアタックを試みる冒険者が現れたのだ。
しかも現場に駆けつけてみると、相手は転生チートの神の子こと、騎士フィルメクス。傍らには聖女であるボウという名の女も引き連れ、実力的にも相性的にも厄介なこと、この上ない。
グルームとゴシカの機転で、なんとか神殿からの使者二人組には帰ってもらうことに成功したが、これをきっかけに魔界勢と野生勢の衝突が発生してしまう。
また、戦いのさなかで魔窟の奥の大魔法使いリングズの攻撃を受けてしまったエ・メスは、そのダメージをなかなか回復することが出来ない。
落ち込むゴシカや忙しいレパルドも各自の場所に引っ込んでしまい、あれほど賑やかだった屋敷に静かな夜が訪れる。三日目終了。
そして四日目。エ・メスは再び倒れる。
<登場人物紹介2>
『転生チート』
●フィルメクス
王宮騎士団からダンジョンに派遣された青年騎士。
神の力をこの世界に顕現させ、その意志を理解するために、『信仰勢力』が異世界より呼び寄せた転生者。またの名を、神の子。
転生時に、特別な能力を与えられている。人並み外れたその各種の能力を指して、俗に「チート」とも呼ばれている。
また、この物語の舞台となる世界『マニシック』を、まるで別視点から見ているような独特のメタ視点も、「チート」能力の一種だと言われている。
現在発揮している力だけでもなかなかの凄腕だが、本来の転生チートの力を出せば、実力はこんなものではないらしい。
金髪碧眼高身長。羽のレリーフの入った銀の大剣を持ち、高価そうな鎧も身につけている。
元の世界では割りと冴えない人物だったようだが、転生してちょっとイケメンになって、調子に乗っている。
『審問会にかけます』
●ボウ
『信仰勢力』を代表し、神殿からダンジョンに派遣された聖女。
神の意志を聞き取り、理解し、人々に伝える役割を持つ、神託者。
神の子であるフィルメクスを管理する能力も、生まれながらにして与えられている。
小柄で童顔。
神官然とした服と、ホーリーシンボルの備え付けられた杖を持っている。
『パケット契約』
●ジョインジョ・ヤギィ
黒山羊頭の悪魔。
人間の数倍はあろうかという巨躯の持ち主であり、腕利きの冒険者数名を血祭りにあげたほどの実力を持っている。
不死の女王であるゴシカ・ロイヤルとの契約により、定額制で月に何度も召喚できる。
また、悪魔の契約書に血判を押させることにより、自らも契約の拘束力を独自に行使できる。
フィルメクスに斬られて倒れてから登場しておらず、もしかするとあのまま死んだのかもしれない。
『温和なミノさん』
●ニムト
ダンジョン内の野生勢の一員である、ミノタウロス。
思考能力のない巨大昆虫たちを率いて畑を管理する、野菜生産者。
残虐なミノタウロスとは思えないほどに温和だが、斧を振るえばその実力は折り紙つき。
滅多なことでは怒らない性質で、失礼なことをされても5回までは許してくれる。6回目になると烈火のごとく起こるさまを指して、一部の者の間では『6ニムト』と呼ばれているとか。
『生きてる方のモブ』
●町民たち
グルーム・ルームをダンジョンに放り込んだ、近隣の町の住民たち。
小太りの男や、老人や、おばさんなどで構成されている。
代表者は、冒険者の酒場のマスター。いぶし銀の中年男性で、どうやら彼も昔は冒険者だったらしい。
『最奥の魔』
●リングズ
ゴシカ・ロイヤルの魔術の師匠であり、魔窟の奥に住まう、リッチー(人工不死者)。
詳細不明。