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第九話~アドバイス~

翌日、学校の昼休み。

俺は普段通り、田原さんと弁当を食べている。

「クラスの人気者になってみないか?」

「は、はい?」

田原さんが驚いた様子で俺を見る。

急すぎたみたいだ。

「家族心配してるだろ?」

「何をです?」

「ほ、ほら、人間関係とか…」

「ああ…」

察したのか田原さんが悲しそうな顔をする。

「だから、手伝う。め、迷惑じゃなければだが…」

「い、いえ。ありがたいです」

「そ、そうか」

「はい」

友達が一人もいなかった中学生時代の俺に、姉がくれた友達作りのアドバイスを思い出す。

「アドバイスは4つある」

「はい」

「まず、最初に3つ教える」

「えっ?」

「4つ目は、まずこれから言う3つを出来てから言う」

「あ、はい。わかりました」

「一に容姿で、二に会話、三は友達だ」

確かそうだったはず。

「容姿、会話に友達ですね」

「ああ」

「具体的には?」

「そうだな、まずは容姿からいくか」

「はい」

「明日から、髪の毛ストレートにしてきて。この前、買い物した時と同じ髪型」

「は、はい…」

あまり乗り気じゃないな。まあ、確かに目立たないやつがいきなり派手な格好をすれば、回りは確実に嫌悪感を抱く。それが怖いのだろう。

「安心しろ。俺が何とかする」

「わ、わかりました」

決まりだな。

田原さんだったら容姿のところは無難に成功するだろう。

後は、そうだな…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「お、俺、学級委員長をやめる」

「はあ?」

放課後、いつもの作業をしている途中で俺が口を開いた。

「何で?」

山口さんが激怒した表情で俺を睨み付ける。

怖い。

「し、しぎょとが、た、大変」

「だからやめる?」

「うん」

「殺すぞ」

まあ、そうなるわな。

「俺がやめると嫌?」

「あん?」

「やめないでやろうか?」

「何言ってんの?」

「協力してくれ」

「何を?」

「クラスの人気者になるんだ」

「矢澤くんじゃ無理よ」

言葉足らずだったな。

「俺じゃない、田原さんだ」

「どうやって?」

否定しないあたり、可能性はあるみたいだ。

「明日田原さん、髪型変えるで、誉めて欲しい」

「それだけ?」

「ああ」

「でも、私のメリットが少ないな」

欲張りめ。

「じゃあ、願い事一つだけ聞いてやる」

「矢澤くんって出来ることあるの?」

言われてみるとねえな。

でも、無いなんて言えない。

「あ、合気道を少々…」

「ええっ、すごい!!技見せて」

技?出来るわけ無いだろ。

でも、まあ今更、引っ込みがつかない。しょうがない。やれることだけやってみよう…。

俺は座っていた椅子から立ち上がり、山口さんの正面に立った。

さあて、どうしたものか。合気道なんてやったことは愚か、見たことすらないのだ。

山口さんのキラキラした眼差しが、俺を急かす。

まず、そうだな。

俺は山口さんに対して、半身の姿勢をとった。

「おおっ」

喜んどる、喜んどる。

「早く、技見して」

俺は勢いよく前に出ている左足を蹴り上げた。

「おおっ、それなんて技なの?」

「股間蹴りだ。合気道では一番最初に教わる技だ」

「そ、そうなんだ。なんかイメージと違うね…」

そうだな。

「他の、他の見して」

「あ、ああ…」

俺は勢いよく前に唾をはいた。

「きゃあ!!な、何してんの!?」

「唾液光線だ。目眩ましによく使う。合気道でこれを使わないやつはまずいない」

「そ、そうなんだ…」

「まだ見るか?他には、脱糞放射、嘔吐バスターなどがあるが?」

「い、いやもういい。充分よ。ありがとう」

「んで?協力してくれるか?」

「あ、ああ。わかった。協力します…」

何故か山口さんの態度がよそよそしいな。

でも、まあ良いか。

これで残る準備はあとひとつだな。

でも、それは明日の朝にやるとしよう。

「ねぇ…」

「ん?」

「田原さんがもし、本当に人気者になったら、矢澤くんは「捨てられるだろうな」

「えっ?い、いや、捨てられるまでは…」

「回りにいっぱい良いもんがあるのに、わざわざ不良品に手を伸ばす馬鹿はいない」

「そ、そうだね…」

山口さんが悲しそうな顔をする。

「心配する必要はない。そうなったからって、約束した以上、学級委員長をやめたりしないし、願い事だってちゃんと聞いてやる」

「そ、そうなんだ。あ、安心したよ…」

全く、どこまでいっても、こいつはこいつだな。

まあ、逆に清々しいがな。

「それと…」

「ん?」

山口さんが自分の机に指をさす。

「唾拭いてくれないかな?」

「それが願い事か?」

「ううん。これは命令だよ♪」

「わ、わかった…」

本当、俺の回りにはろくな女がいねえな。

「多重人格者め…」

「あん?」

「い、いや。大丈夫」

全く、こいつ可愛いのは顔だけだな。

「彼氏おんの?」

俺は山口さんの机を拭きながら聞いた。

「私?」

当たり前だろうが。

「ああ」

「何で?」

「いや、ふと思っただけ」

「いないよ」

「やっぱりそうか。そうじゃないかと思ってた」

「矢澤くんは?彼女いる?」

「俺か?」

「当たり前でしょ?」

どうだ?これ腹が立つだろう?

「いないな」

「やっぱり。そうだと思ってたの」

糞っ!腹立つ!!

「帰る」

俺は鞄を取って、教室の出口に向かう。

あっ、そうだ。

「明日頼むな」

「う、うん。任せといて」

「ん」

と言い残すと、俺は教室をあとにした。

まあ、多少は不安は残るが、大丈夫だろう。山口さんの人気は本物だ。失敗はしないが万が一のために、明日の朝、念入りに準備をしよう。

そう思うと、明日が、楽しみでもあり、不安でもあるな。

妙に高鳴る鼓動と共に、俺は家に帰る。
























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