第八話~ナンパのコツ~
ヤバイな。非常にヤバイぞ。ついに、家族旅行三日前に時が迫った。
マジでどうしよう。彼女作らなければ、俺金持っていないから、裸で近所を逆立ちしながら走らなければならなくなる。それだけは絶対に避けたい。
何せ、俺は逆立ちできないからな。恥をかいてしまう。
でも、本気を出せば良いだけか。まあ、俺クラスになると、彼女なんざ1分でできる。
…ちなみに、今は、帰りのHRを行っているところだ。
ふと、脳に綾里部長の顔が浮かんだ。
ひさびさに部活に行ってみるか。基本、家庭部は自由だからな。部活初日に、綾里部長から、〔来たければこい。嫌なら来るな〕って言われた。それ以来、一度も部活にいっていない。
「んじゃあ、気を付けて帰れよ」
奥地の締めの言葉で、皆が立ち、礼をする。授業終わりの合図だ。
さて、行くかな。俺は鞄を肩にかけた。
「や、矢澤君…」
俺の心臓がとび跳ねる。あの日以来、田原さんと一緒にいると、ずっとこんな調子だ。
平然を装わないと。
「ん?」
「明日、お暇ですか?」
「あ、ああ…」
「な、なら。明日、う、うう…」
病気を疑うレベルで顔が赤いぞ、あんた。
「あ、明日さ。た、田原さんの家に行って良い?暇なんだよね…」
「あっ、はい。是非!!」
勢いで、田原さんが俺の手を握ってきた。
「うわぁ!!」
情けない声でビックリする。鼓動の加速が止まらない。
「あっ、す、すみません。つい、嬉しくて…」
田原さんは直ぐに手を退かしてくれた。
ちょっと残念な気持ちを押し殺して、俺は口を開いた。
「き、今日、部活、行こうか?」
「は、はい…」
相当恥ずかしかったのか、田原さんはずっと下を向いている。
「い、行こう…」
「はい…」
俺達は、調理実習室に向かった。
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「おっ、久しぶりだね」
「あ、はい…」
部長が何事もないかのように、歓迎してくれている。
あっ、そうだ。この人なら。
「綾里部長、僕の彼女になってみませんか?」
「あ、いいよ…」
「そうですか。良かったです」
よし、これで危機は免れたぞ。
「って、彼女!?」
なんだ適当に返事をしただけか。
「えっ、矢澤君。どういう事です…?」
田原さんがすごい目で俺を見ている。
怖い。
「ち、違うんだ。事情があって、三日後彼女がいるんだ」
「そうだったのか。でもすまんな。三日後は予定が入っている」
何だ。残念だ。こうなったら頼る人が…。
いや、待てよ。
ちゃんといるじゃないか。
「ちなみに、部長の母親の予定は?」
「お母さんは貸さんぞ?」
糞。
「だいたい、何で彼女がいるんですか?」
田原さんが何故かちょっと、怒っているようだ。
「ちょっと、賭けをしていてな」
「賭けを、ですか?」
「うん。俺に三日後まで彼女が出来るかって賭け」
まあ、実際できそうにないがな。
「私じゃダメですか?」
「ダメに決まっている」
「ええっ!!」
田原さんがおもむろに落ち込んでいる。
どうしたんだろうか?
「うちの親父にも会わせなければ、だからな。美人が来ては困る」
「えっ、そんな…」
今度は恥ずかしそうに、下を見ている。
忙しないというか、表情豊かな人だな。
「どういう意味だコラ」
おっと、そう言えばこの人まだおったな。墓穴を掘ってしまった。
「ち、違うんです。綾里部長は、AV女優になれるほど綺麗ですけど、性格がダメじゃないですか?そう言う点で不細工と評価しただけです」
「なるほど、そう言うことか」
バカで良かった。
でも、本当に容姿だけなら、この人は紛れもなく、美人だ。
でも、こうなったら手詰まりだな。
…………いや、待てよ。まだ手があるぞ。
ちょうどあの男が今、田原さんにやっている、あれをやれば。
俺は男に近寄った。
「俺と一緒に、料理しない?」
「………」
「あ、あの」
「何だてめえ?俺は今忙しいんだよ」
「ナンパのコツを教えてくれ」
「はあ?」
「えっ?」
二人が同時に、俺を見て驚く。
お前ら仲良いな。
「教えてくれ」
俺は再度、お願いした。
「駄目だ。俺は弟子をとらない主義だ。帰れ」
偉そうに、この野郎。
でも、こう言うやつの扱いは慣れている。
「性教育に関する、本、10冊でどうだ?」
「う~ん…」
悩んでいるな。もう一押し。
「男同士のも一冊「俺に付いてこい」
よし、なんとかなった。
俺達は、ナンパをしに、学校から出ることになった。
っと、その前に。
「あ、明日。一時に行くから…」
「あっ、はい。待ってます…」
「うん…」
これだけは、言っておかないとな。
「おい、何している愛弟子よ。早く行こうではないか」
「あ、ああ…」
俺達は、学校を出て、駅の周辺へと向かう。
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「良いか?まずは、ナンパしても成功しそうな女を見極めるんだ」
「見極める?」
「そうだ。結構簡単なことだ」
と言うと、男は喫茶店に入っていった。訳がわからないが、俺もついていく。
店員に案内されるがままに、席に着き、コーヒー二つを注文する。
ここではコーヒーはおかわり自由らしい。
「よし、5時間ここでコーヒー飲んどくぞ」
五時間?ふざけるな。
「何でそんなに…」
「ナンパの成功方法を教えてやる」
「はぁ…」
「先ずはさっきも言ったが、女の見極め。これは本当に簡単だ」
「どうやって、見極める?」
「終電が過ぎるのを待つのさ」
意味不明である。
「分からない、と言いたげだね。でも、ナンパしたことないなら当然だ。お前は知らないと思うが、終電が過ぎても、駅付近でうろちょろしている女は間違いなく、ナンパされたい奴なんだ」
嘘だろ?そんな、法則が…。
「だから、声を掛ければ、間違いなく女が着いてくる」
「なるほど。で、ここで終電が来るのを待つわけだな」
「そう言うこと」
あ~、何て言うか、世界は広いんだな。
知らないものだらけだ。
「そう言えば、名前はなんと言う?」
「俺か?」
当たり前だ。
「俺なら、難破槍陳だ」
「そ、そうか…」
ひどい名前だ。
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時刻は夜中の12時。終電が過ぎた駅に向かう。
案の定、そこには女がちらほらうろちょろしていた。
「まずは、俺が見本みせっから、見ててくれ」
そう言うと、難破は一人の女に近寄った。
「お姉さん、美人っすね。俺と、カラオケ行ってくれたら嬉しいな。勿論俺がおごるから」
「そ、そう?なら、行こっかな」
「うわー、マジで?超感謝感激だわ」
何あれ?
日本にいるなら、日本語を喋れってんだ。
でも、何となくわかった気がする。
まずは、相手をおだてて、気分よくさせる必要があるな。そしてそこから、本題に入るっと。
俺は、ビッチ臭いギャルに近づいた。
聞いた話では、ビッチって言うのは、股を開いた相手の数がステータスらしい。そこを誉めてみよう。
「お、お姉さん、何か、HIV持ってそうな雰囲気っすね。俺と一緒に、ゲーセンでメダルゲームしねえ?」
よし、完璧だ。
この頭の悪そうな口調も真似してやったぞ。
「キモい…」
と言って、ビッチがどっかに行ってしまった。
何がいけなかったんだ?もっと頭の悪そうな口調の方がいいのかな?
ビッチを追いかける。
「チョ、チョリース。チョリース!!」
「うわああぁ!!」
ビッチが全力で俺から逃げる。
何て言うか。
ナンパって難しいな。できる気がしなくなってきた。
でも、諦めないからな。
更にビッチを追いかける。
「い、嫌!!来ないで!もう、二度とこんな所に来ないから。許して!!!」
「………」
ビッチが号泣しながら、俺から逃げる。
何か……
なあ。
もう、ナンパはいいや。
全く、難破は適当なことを言うな。
着いてくるどころか、全力で逃げたじゃないか。




