第七話~準備完了~
さて、これから行う嫌がらせは、ごくシンプルなものだ。うちの姉のように、生き物を使って、嫌がらせをするのはアウトだ。警察沙汰になりかねん。かといって、直接的、言わば、暴力を振るうのは、絶対にしない。一応、相手は女だ。
じゃあ、どうするのか。簡単だ。いじめる対象を俺に変えるような嫌がらせをすればいい。相手は人をいじめることが出来るやつだ。ろくな人間ではない。人で無しだ。だからこそ都合がいい。俺は紙切れにシャーペンを走らせる。その紙を持って、頭緩女の机の上に置いた。勿論、誰にも見られないようにだ。どっかに行っていた頭緩女が教室に戻って、自分の机の上にある紙切れを拾って、目を通した。
瞬間、その女は背筋が冷えるような笑顔を作った。うまくいきそうだ。
後は、俺の勇気次第だな。
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放課後、帰る準備をする。田原さんと目が合うがすぐに剃らされる。
本当に申し訳ないことをした。だが、まあ、イジメは今日までだ。確かな決意をもって、俺は体育館の裏へと向かった。
しばらく歩く。下駄箱で靴を履き替えて、外に出る。毎日見てるはずなのに、なんだか、久しぶりに感じる桜を見上げる。花びらが散りまくっているのに、中々、かれることを知らない桜がやたら凛々しく思える。うちの親父が見たら、泣いて喜びそうだ。
俺は、またしばらく歩くと、体育館の裏まで到着した。
案の定そこには、あの女が立っていた。俺に目をやると、さっきとは比べ物になら無いほどの、ひどい笑顔を見せつけられた。
「いきなり、こんなところに呼びつけて、何するつもり?」
決まってんだろ。
「告白だ」
女の顔が最初こそ、驚いていたものの、次第に余裕の笑みを浮かべるようになる。
脈ありだ。
「俺と付き合ってくれ」
緊張も糞も感じねえな。初めてだってのに。
「何であたしと?」
ちょっと、疑っているみたいだな。
「顔だ。俺のタイプだ」
「わかった。付き合ってやるよ」
速答だな。まあ、予想通りだが。
「んじゃあ、早速だけどさあ、金かしてくれん?彼氏ならいいっしょ?」
早速過ぎるだろ。
でも、うまくいって良かった。
「いくら?」
「有り金全部に決まってんだろ?言わすなカス」
俺は、財布から有り金全部を女に渡した。
「百円!?しけってんな。明日からはもっと持ってこい。じゃないと…」
女が俺のそばまで近寄って、耳元で呟く。
「別れるから…」
そういい残すと、ふっと俺のそばから離れ、ダルそうな足取りで帰っていった。
これで、あの女は、新しい玩具が手に入った。しかも、金のなる玩具だ。
古い玩具にはもう、興味を示さないだろう。都合がいい。
でも、あれだ。これは始まりにすぎない。何せ、人生でここまで怒ったのは初めてだからな。全部ぶつけてやる。
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あれから、一週間が経つ。俺は毎日のように金を脅し取られ、場面によっては、暴力を受けてきた。幸い、田原さんへのイジメはなくなった。しかし、言うまでもないが、俺たちの関係は改善していない。分かっていることだが、もう二度と改善することもないだろう。俺が悪かったって言うことは充分理解しているが、やっぱり、あのアマは絶対に許せない。俺から毎日金をとるのは良い。盗み返しているから。だが、俺たちの関係を崩したのは、やはり、許せん。
「おい、今日の分」
頭緩女が、俺にてを差し出し、金を要求する。って言うか、こいつの名前は何て言うのだろうか?
「お前の名前何て言う?」
「いいから、はよ金出せや!」
「名前を教えなかったら、金はもうやらん」
女は舌打ちをしてから、面倒くさそうに口を開いた。
「和累恩納だ」
俺は財布から、一万円札を出して、和累に渡した。
「早く出しゃいいんだよ。グズりやがって」
そう言うと、和累は的確に俺の左頬をとらえる右フックを放った。
痛い。だけど、まあ。今日までだな。
もう、準備は全て整った。
俺は去っていく和累に話し掛ける。
「学校生活、楽しめよ」
「お前のお陰で、これからもずっと楽しめるよ」
背中越しにそういい残すと、和累は自分の席に戻った。
馬鹿が…
お前にこれからはない




