表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/38

第六話~家庭部体験入部~

放課後、俺は家庭部の体験入部とやらをしに行った。集合場所は、家庭部の活動場所である、調理実習室。長めの机が、六個並べられていて、椅子も準備されている。

俺は適当な椅子に座った。回りを見渡す。やはり、文化系の部活だけあって、女子が多い。と言うか、男子は俺しかいない。すごく気まずい。

ちょっとキョドっている俺を田原さんが心配そうに見ている。ちょっと、情けないな。しっかりしなければ。俺は大丈夫と言わんばかりに、笑って見せた。

「矢澤君、嬉しそうです…」

と言いながら、田原さんがちょっと落ち込んでいる。

糞っ。

笑顔が足りないのか。

「ふふ、ふふふっ」

今度は、ちょっと声を出して笑って見せた。もちろん、恥ずかしいから、目は合わせていない。

「……」

田原さんがさらに落ち込む。

ダメだ。よくわからん。女心ってのは、俺には複雑すぎる。

「こんにちは。私は、家庭部部長の綾里溺瑠代(りょうりできるよ)です。今日は集まってくれてありがとうございます。早速ですけど、机の上にある、エプロンを着服してください」

俺と田原さんは机の上にあるエプロンを着服した。

と同時に、回りの人たちも、着服を完了したようだ。それを確認した、綾里さんが、再び口を開く。

「今日は体験入部と言うことで、簡単なものを作っていただきたいと思います。野菜の煮浸しです」

すごいな。このひとぜんぜん噛まねえ。その才能ほしいな。

「レシピは黒板に書いてある通りです。質問がある人は、私を含めた家庭部部員に声をかけてください。基本的に部員には名札をしてもらっていますので、判断できると思います。では開始してください」

俺は黒板を見た。

1、野菜をダーと切る。

2、それを何分か塩水に付ける。

3、熱い油にぶちこむ。

4、油を近くにあるトイレからトイレットペーパーを持ってきて、それで拭き取る。

5、つけ汁に入れて召し上がれ。

なんだこれ?質問しかねえよ。

俺は質問をしようと、名札をつけている生徒を探した。

おっ、一人いた。けど、ダメだな。

あいつ、今携帯ゲーム機で遊んでいる。話しかけられない。俺は次の人を探した。ん?いたけど、こいつもダメだな。今、俺のとなりにいる田原さんをナンパしている。

残念だ…。

男子は俺だけじゃないじゃないか。

こうなったら、一番まともそうな、綾里部長に質問してみるか。

俺は、綾里部長のいるところに目をやる。ああ、なるほど。そういうことか。

綾里部長は、タバコとビール瓶持ちながら、競馬の中継をラジオで聞いていた。もちろん、赤い鉛筆を耳に挟んでいる。

どうやら俺は、ヤバイところに来たらしい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とりあえず俺は、野菜を全部、みじん切りにした。多分これであっているだろう。

よし、その次が、塩水に付ける。俺は、器に水道水を入れた。塩を探す。

………ないぞ。まいっか。

俺は、塩の代わりに鼻くそを入れた。

だが、足りないな。これじゃ、野菜はしょっぱくならない。俺は、綾里部長に近づいた。

「質問なら、受け付けんぞ」

「いや、違います。鼻くそ下さい」

「ああ、鼻くそね…」

部長は鼻をほじりはじめた。

「ん?」

いきなり、部長が鼻をほじる動作をやめた。

早くしろよ。料理が出来ないじゃないか。

「何で鼻くそがいるの?」

「塩水を作るためです」

「なるほど…」

綾里部長は再び鼻をほじって、鼻くそを出してくれた。

「次からは、塩持ってこいよ」

「はい」

よし、これで美味しいの作れるぞ。俺は早速、鼻くそと野菜を水に入れた。

しばらく、放置したほうがいいわな。

そうなってくると、暇になる。回りを見渡す。あんなに、入部希望者がいたのに、今では誰もいない。俺とナンパされている田原さんを除いて。

まだやってんのかよ。はよ、手伝わんか。じゃないと、食わせてやらないぞ。

「俺、超君タイプなんだよね」

「……」

「今度、映画行こうよ」

「……」

「遊園地でもいいよ」

「……」

「なんなら、俺ん家来る?」

「……」

こいつ、ハート強いな。俺なら一回無視されただけでもう、一ヶ月は夜な夜な、枕を涙で濡らす自信がある。

それが例え、相手が母さんでも。

そうこうしているうちに、野菜の準備ができた。俺は、あらかじめ温めておいた、油に野菜をぶちこんだ。

ジュワジュワと良い音をたてている。

しばらくすると、沈んでいた野菜たちが、良い揚げぐわいに浮いてきた。

俺は、一個一個箸でつかみ、皿にうつした。この作業だけで約30分かかってしまった。よし、次はトイレットペーパーだな。だけど、取りに行くのは非常にめんどくさい。俺は、再度綾里部長の元へ歩み寄った。

「また、君か。今度はなんだ?」

「パンツ貸してください」

「はいはい、パンツっと…」

部長はスカートの中に手を入れて、フリーズした。

いちいち面倒くさいやつだな。さっと出来んのかね。

「な、何でパンツがいるんだ?」

「油を拭き取るためです」

「なるほど…」

綾里部長はパンツを脱いで、俺に渡そうとする。

「な、何してるんですか?」

後、数センチパンツに触れるところで、田原さんに止められた。

糞。後、少しだったのに。大人しく、ナンパされてりゃ良いものを…。

「ティッシュ持ってますから、これで油取ってください」

俺は、田原さんから、ティッシュを渡された。

なんか、ちょっと、怒ってる?

相当、ナンパがしつこかったんだな。

俺は、貰ったティッシュで野菜の油を取った。次は、最後の作業。つけ汁に入れる。幸い、つけ汁は用意されているようだ。俺は、つけ汁と書かれている、醤油瓶を手に取って、野菜にかけた。

おおっ、はじめての料理の完成だ。

俺は、ちょっと泣きそうになる。なんと、素晴らしい出来ばえであろうか。この、醤油から浮かぶ野菜の粒々が、なんと神々しい。まるで、夜空に浮かぶ、眩しく輝く星のようだ。

俺は、これを食いたくないから、部長に試食を頼むことにした。

「しょっぱいなこれ。って言うか、醤油の味しかしない」

やっぱり、そうか。

「でも、よく最後まで、頑張ったな」

と言って、綾里部長が微笑んでくれた。

瞬間、俺の胸は、充実感で満たされた。なるほど、これがやりとげるというやつか。

新たな感情と共に、俺は、入部を決意した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

学校の帰り道。田原さんと並んで帰宅する。後もう少しで、田原さんん家に着く。ここに来るまで、一切の会話がなかった。と言うか、田原さんは帰宅の間ずっと、膨れっ面のままである。全くもう、あのナンパ男、どうしてくれるんだこれ。

「そ、そんなにナンパが嫌だったのか?」

「………」

おっと。

今夜俺の枕が濡れることになるな…。

「違います。矢澤君に怒ってます…」

「お、俺はナンパしてないぞ…」

なんなら、今日、話しかけたのだって、今のが初めてだ。

「た、助けてくれなかった…」

なるほど。

やっぱり、全然わからん。

けど、あれだな。こんな顔されるぐらいなら…

「つ、次から絶対、助けるから…」

「は、はい。お願いします…」

あの時、助けてほしかったのか。

ナンパ男、結構イケメンだったし、女ってのはイケメンが好きな生き物じゃなかったのか。

本当、女心は一生かかっても、わかりそうにない。

まあ、理解するつもりも、毛頭ないが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ