第六話~自宅謹慎終了~
学校行きたくないな…。
自宅謹慎が終了した。今日から学校に行かなけらばならない。非常に嫌である。何故なら、ほぼ、いや、間違いなくクラスの人達にバカにされる。それも、何やってんだよ、何て言われて、茶化す感じではなく、普通に、まわりからクスクスと笑われて、バカにされるに違いない。
かといって、学校に行かない何て選択肢、俺にはない。何故なら、うちの家には、姉が居るからだ。布団から出なかっただけで、あの惨事だった。学校に行かない何て言い出したら、何されるか、わかったもんじゃない。
憂鬱だが、学校へ行こう。
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教室の扉の前に立つ。一回、深呼吸をしてから、扉を開く。
クラス中の生徒の視線が俺にぶつかる。
俺は平然を装って、扉を閉めた。
なんだ。どうやら、俺はバカにされないみたいだ。良かった。
何故かと言うと、そうだな。耳を澄ませばわかる。このかすかに聞こえる「誰、あいつ?転校生?」の声がすべてを物語っている。
俺は三日でクラスの皆の記憶から、抹消されたようだ。なんなら、最初から記憶にあったかどうかすら、怪しいもんだ。
俺は、泣くのを堪えて、自分の席についた。
「矢澤君、謹慎終わったんだね」
山口さんが俺に話しかけてきた。
「ああ…」
「矢澤君が来るの、待ってたよ…」
ん?まさか、こいつ、俺の事…
「学級委員長の仕事一人じゃあ大変だもん」
やっぱり、こいつ、俺の事ただの仕事仲間としか思ってねえな。でも、その方がなんか、接しやすい。
「す、すまん。押し付けて」
「いや、いいよ。今日からまた、頑張ってくれれば、それでいいんだよ」
そう、笑顔で言い残すと、山口さんは自分の席に戻った。
なるほど、あいつは人の上にたつ素質を持っている。山口さんの背中に視線をやる。すると、視界の端に俺を見ている人がいることに気がつく。田原さんだ。どうしたんだろうと思って、田原さんに目をやると、何故か、直ぐにそっぽ向かれた。
ほほう。なるほど、なるほど。
どうやら、
今が泣くタイミングみたいだ。
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「キーンコーンカーンコーン♪カーンコーンキーンコーン♪」
四時限目が終わったらしい。と言うのも、気になることがあって、授業に集中するところではなかった。
俺は、田原さんの席の前まで行った。
「…………」
そしてそのまま、教室の扉まで行って外に出た。
やっぱりダメだ。多少なれたとは言え、やっぱり、話し掛けるのは、至難の技だ。今日はこのまま、どっかで、飯を食おう。
こう言う時、またしても、俺の知恵袋が役に立つ。
トイレで飯を食う。これしかない。
俺は早速、弁当箱を取って、男子トイレへ向かう。
洋式の便器に座り、弁当を広げた。
ちょっと、ドキドキする。これが初めてだからな。俺は、先ず唐揚げを頬張る。
「ぶりぶりりぶりぶ~っ!!」
隣のやつが、下痢のようだ。
まあ、いい。つづけよう。俺は、次にご飯を口に入れた。
「あっ、う~ん」
糞っ垂れが。黙って下痢しやがれ。
何が悲しくて、野郎のあえぎ声を聞きながら、飯を食わにゃならんのだ。
しかも何だ、この異臭は?
ダメだ。ドラマやアニメじゃあ、結構快適に食ってるイメージだったが、実際はこんなもんか。俺は弁当を閉じて、トイレから出た。
食欲も失せたし、席について机で寝るか。俺は、教室へ向かった。にしてもあれだな。何であの時、田原さんいきなり視線をはずしたのだろう。
俺の事避けたいのだろうか。
そうであるなら、ちょっと寂しいが、距離を置くか。
それが、田原さんの望みであるならばそうするしかないだろう…。
教室の扉を開けて、俺は、田原さんの席のあたりに視線がいかないように、気を付けながら、自分の席まで移動した。
「どこに行ってたんですか…?」
田原さんが、俺の机の上半分に弁当箱を置いて、持ってきた椅子で、俺の机の前に座っていた。
いつもの、場所だ。
「と、トイレ…」
「そうなんですか…」
「め、飯まだ食ってないのか?」
「ま、待ってました…」
「そ、そうか…」
「あの…、迷惑ですか?」
何言ってんだこいつ。
「いや、居てくれ…」
「は、はい…」
良かった。
避けられてはいないんだな。俺は自分の椅子に座った。
「け、今朝さあ…」
「はい?」
「何で…?」
これだけで、伝わるかな?
「あの…、それは…」
伝わったみたいだ。
「な、内緒です…」
そう。あまり、詮索はしないでおこう。別に、田原さんに避けられたくないから、とかではない。ただ、俺は紳士だからな。女の子を困らせることは絶対にしない。
「や、矢澤君、顔に米粒が…」
付いているのか。恥ずかしいな。俺は米粒を取って、近くの女子の髪に向かって投げ飛ばした。
おおっ。くっついた、くっついた。
「あんまり、他の女の子と仲良くしないで欲しいです…」
俺が米の粘着力に感心していると、何やら、田原さんが、ボソボソと何かを呟いた。
「ん?」
「い、いや。何でもないですっ…」
田原さんは顔を真っ赤にしながら、下を向いている。
そうか、わかったぞ。
田原さんも、米粒を飛ばして遊びたいんだな。
でも、残念だったな。
米粒全部、あの女の髪に引っ付けてしまった。
もう、遊ぶ米がない。




