第五話~はじめての笑顔~
暇だ。暇すぎる。今日は自宅謹慎二日目。親からの外室は禁止されている。その為、やることがない。
昼寝も三回ぐらいして、時刻は今、夕方の5時半。
……本でも読むか。俺は、机の上に積み重なっている本を1つ手に取った。
ページをめくる。うん、いいね。
「や、矢澤君…」
おっ、この角度も!
「お兄ちゃん!!」
「うえっ!」
何だ!?何で、妹が俺の部屋にいる?
「こ、こんばんわ…」
しかも、田原さんまで…
「田原さん!?な、何でここに?」
「弟に聞いて…」
俺ん家の居場所を龍神に聞いたのか。
「ど、どうしても、話がしたくて…」
「そ、そう…」
にしても、何て行動力だ。俺は今まで、田原さんを誤解していたのかもしれない。
「それより、お兄ちゃん…」
「何?」
「そろそろ、エロ本読むのやめてくれない?」
そう…。
せっかく良いところだったのに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
妹にエロ本だらけの俺の部屋では、話ができないと言われて、俺達はリビングに移動した。
「さっ、どうぞ。座ってください」
妹が田原さんをソファに座るように導く。
「あっ、はい。ありがとうございます」
「いえ。今、お茶お持ちしますね」
「す、すみません…」
凄いな。うちの妹は。俺と大違いだ。同じ親から生まれたとは思えん。
「あ、あの…」
田原さんが座りながら、ちょっと右へ移動して、下を向いた。
隣に座れって事らしい。俺は、高鳴る鼓動を無視しながら、人一人分のスペースを空けて、田原さんの左側に座った。
「で、で?話って何…?」
目処はついているが、あえて聞いてみる。
「部、部活、何にしますか?」
予想外だ。俺はてっきり、昨日の事を聞いてくると思っていた。
「ど、どうしようかな…。田原さんはか、家庭部だよね?」
「違います…」
ん?
「どういう事?」
「あ、あの、私…」
「お兄ちゃん、お茶持ってきたよ~」
なんと言うタイミングで。
やっぱり、お前は俺と同じで、あのハゲの子供だわ。
「はいどうぞ」
「ありがとうございます…」
「ほい、お兄ちゃんも」
「あ、ああ…」
妹が、俺達にお茶を手渡すと、俺の左隣に座った。
狭い。元々俺は結構、ソファの左端っこに座っていた。そこに妹が座ってきたから、今、俺と妹は結構密着している。人の近くにいることが嫌いな俺は妹から離れるために右へ移動した。
「あっ…」
右に目をやると、田原さんと目が合う。座っていた距離が大部縮んだ。鼓動がさらに加速する。
こいつ、わざと…
「友、お前…」
「なーに?お兄ちゃん♪」
ムカつく…
「それより、どうですか?普段の兄ちゃんは?」
「えっと…」
おう、言ってやれ。俺の善人っぷりを。
「ド、ドッジボールじゃあ、女の子ばっかり狙ったり、授業中に寝たり、パンをのどに詰まらせたりして、ちょっと変な人です…」
なんか。あれだな。
死のうかな。
「ははは…、何か予想通りです…」
妹が乾ききった笑い声を出して、俺を顔を見る。
笑いたいのは、俺の方だ。
「け、けど…」
田原さんが俺の方を向く。
「や、優しいです…」
瞬間、止まる寸前だった心臓が、突然勢いよく、踊り始めた。
やかましい。この状態じゃあ、否定することもできゃしない。
「うんうん」
妹が何やら、意味深な顔で俺の背中を叩いている。
やめろ。
お茶がこぼれちゃうだろうが。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わざわざ、すみません…」
「いや、良いよ…」
今、俺は、田原さんと一緒に、田原さんん家の前にいる。妹に言われて、送ってきたのだ。
「んじゃあな…」
もう、二人でいることが耐えられなくなった俺は、一刻も早くここから立ち去りたかった。田原さんに背を向けて、自宅に向かう。
「あ、あの…」
俺は、田原さんの方へ振り向く。
「部、部活、決まったら言って下さい…」
「ん?」
何で、そんなことを…。
「お、同じ部活に入りたいから…」
決めた。
俺が心臓病になったら、お前を訴えてやる。
「家庭部…」
「えっ?」
「か、家庭部に入るつもりだ…」
「い、いいんですか?」
「お、俺が入る部活にケチを付ける気か…?」
「いえ、ふふっ」
あっ、笑った顔はじめてだ。
なんか、癒される。と同時になんか、むず痒い。
「ん、んんじゃあな…」
俺は逃げるようにこの場から去ろうとする。
「こ、今度は、ダメです…」
田原さんに袖を捕まれて、逃げられない。
「あ、ありがとうございます…」
糞っ。
本当に、訴えてやる。
絶対、
訴えてやる…




