第五話~痛感する思い~
「さあ、説明してもらおうか?」
今、俺は生徒指導室にいる。俺の前には、奥地先生と生徒指導の先生がたっている。
果たして、どうしたものか。苛められていた、田原さんを助けるためにあんなことをした。と言えば、間違いなく、田原さんがここに呼ばれる。それは避けたい。
「黙ってねえで、早よ言わんかい!!」
生徒指導の先生が、いきなり怒鳴ってきた。俺は勿論、奥地先生までビクッとなった。
やーい、びびってやんの。
「そ、そうだぞ。黙ってたって自分のためにはならないぞ」
うるせえな。今、言い訳を考えているから、ちょっと黙ってろ。
……………駄目だ。なーんも思いつかん。適当にいこう。
「あ、あの、泣いていた女子いたじゃないですか?」
「ああ、出蓋の事だろう?」
俺は、コクンとうなずく。
「あ、あの人、デブじゃないですか。俺はデブが嫌い何です。あと、不細工も。人として見れません」
二人の先生は、口を開きながら、驚愕をしている。
奥地お前は口を開くな。臭いだろうが。
「だから…」
「はい、苛めてやりました」
俺は、爽やかスマイルで答えてやった。
「……」
「……」
その後の事は、言うまでもないだろう。俺は、二人からこれでもかと言うほどに、怒られ、けなされ、怒鳴られた。人間としてダメだの、お前を産んだ両親が可哀想だのと、結構キツイ事を言われた。
その後、罰としては、三日間の自宅謹慎を命じられた。
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謹慎のため、俺は早速教室に行き、帰る準備をする。田原さんがずっと心配そうに俺の方を見る。
大丈夫。あなたのせいではない。全部あの豚女が悪い。
でも、はっきりいって、結構ラッキーなことだ。休みが三日増えた。これはきっと、田原さんを助けた神様からのプレゼントに違いない。
俺は帰宅の準備を終えて、教室から出る。下駄箱へ向かう。下駄箱についた俺は、はいていた上履きを脱いで、靴にはきかえる。
「や、矢澤君…」
なんだ。来たのか。
「わ、私が、キーホルダーをしていたから…」
「田原さん…」
初めてじゃないけど、やっぱり名前を呼ぶのは照れ臭い。
「キ、キーホルダーし、してくれて…」
俺は田原さんの目を見て微笑んだ。
「う、嬉しかった…」
もう限界だ。
俺はダッシュでここから立ち去った。
「あっ…」
途中、田原さんの声が聞こえたが、ダメだ。耐えられん。
やっぱり、良いことをするのは、気分が悪くなる。
そう痛感した。
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「ふふふふふ~ん♪」
テンションが上がる。
それもそのはず。今俺は、親父の服全部、肥溜めに漬け込んでいる。
元々、親父の服は加齢臭くさい。洗ってもだ。だから、臭いを変えてやっている。実際、俺は親孝行をしているのだ。異論は認めん。
「矢澤君、何してるの?」
そうか。忘れていた。今は下校時間だったな。
「ち、ちょっとな。や、山口さんは今お帰り?」
「うん、そうだよ。にしても、大変だったね。矢澤君」
「ん?」
「ほら、出蓋さんの事」
あっそう言えば、そんなこともあったな。今が楽しすぎて、すっかり忘れていた。
「にしても、矢澤君ってあんなにすらすら喋れたんだね。ビックリしちゃった」
「ま、まあな。人を貶す時だけすらすら喋れる」
「へ、へぇ~。そ、そうなんだ…」
あっそう言えば。
「き、今日、部活体験やった?」
「うん。家庭部って言う所に行ったよ」
家庭部か。なら
「田原さんいた?」
「いや、私、最初から最後まで家庭部に居たけど、来なかったよ」
ん?どういう事だ?
たしか、田原さんは家庭部に入部するバスじゃなかったのか?
「田原さんの事、気になる?」
何を言ってるんだこいつは…。
き、気になるわけないだろう。全くもう。
「い、いや…」
「そうだよね」
ん?以外とあっさり…
「矢澤君って、田原さんの弟と付き合ってるんだもんね♪」
いや、待て違う。誤解だ!
「じゃあ私、もうそろそろ行くから。んじゃあね」
山口さんは小さく手を振ってから、立ち去った。
まあ、いいか。後で誤解をとこう。
俺は、再び作業に戻る。
「あっ、そうそう」
山口さんが戻ってきた。
「それ、出蓋さんん家の畑の肥溜めなんだよね。バレない内に帰った方がいいよ」
ほう。って事は、俺はずっと、あの豚の排泄物の入り雑じった物に世界に一人しかいない、大切な親父の服を入れていたってことか。何て事だ。
漬け込む時間が長くなるじゃないか。




