第四話~わからない答え~
俺は致命的なミスをした。
コーラを氷抜きで頼まなかったことだ。実際、見てみると、グラスのほとんどは氷で埋め尽くされている。これは詐欺で訴えても勝てそうな気がする。って言うか、喫茶店におかれているメニューすべてが詐欺だ。例えば、このコーラ。300円もした。おかしい。自分でコーラを作っているのならば、まあ、納得はできよう。しかし、飲んでみたところ、市販のコーラと大差ない。しかも、圧倒的に量が少ない。まあ、ここの喫茶店はそんなに大きくはないから、飲み物ごときで、いっぱい儲かりたい気持ちはわかる。だが、300円は無いだろう。お陰さまで、俺の所持金がマイナスへいってしまった。俺は今、200円しかもっていない。 まあ、こんな事はどうでもいい。ただ、ただ、コーラを氷抜きで頼まなかったことが悔しい。でも、俺もあの状態だったし、仕方ないか。もう、あんな気持ちになるのはごめんだ。でも、田原さんは可愛い。これは揺るがない事実だ。嫌でも、また、いつかあの感情が押し寄せてくるに違いない。だが、俺はその対策をもうすでに思い付いている。自分に自信をつける事、これに尽きる。
田原さんは、ミルクアイスティーを飲み終えたのか、暇そうにしている。俺も、コーラをグラスの3分の1ぐらいまで、飲んだ。こんなもんか。
「か、会計済ませて、外で待ってくれん?」
「あ、はい…」
田原さんは、不思議そうな顔をしたが、素直に言うことを聞いてくれた。
受付で、お金をだし、喫茶店の外へ行く。
よし、俺も会計を済ませよう。
「す、すみませーん…」
俺は店員を呼んだ。
「はい、何でしょう?」
「これ、200円ですよね?」
「いえ、300円ですが…」
はあ?何をいっているんだこいつ。頭がおかしいのか?
「良く見てください。俺は200円分しか飲んでないんですよ」
俺は飲み残しのコーラを前に出しながら、言った。
「はぁ…」
店員は心底面倒臭そうだ。
何でだろう?俺の理屈が通用しない。
こうなったら、別の方法でいくか。
「だいたい、皆、平等に同じ値段って言うのがおかしい。例えば、あそこのデブ」
俺は、ちょっと離れた席にいる、同じくコーラを頼んでいた体重100キロぐらいの男性に指を指した。
「いかにも、糖分有り余っている体をしている。アイツにはもう、糖分は必要ないだろう」
デブが俺を睨んでいる。
ちょっと、怖い。
「だが、今度は俺を見てほしい。いかにも健康的な、いい体をしているだろう?」
「は、はぁ…」
「すなわち、俺は糖分を必要とする。よって、正当な代価を支払う必要があって…」
ん?おかしい事になった。
「…………」
店員は今、困り果てている。
…しょうがない、最終手段だ。
俺は、床に頭をつけた。
「すみません、お金が足りないんです。皿洗いでもなんでもしますので、許してください」
人生初の土下座だ。回りからの視線が痛い。
「あ、あのですね。お会計の方はもうお済みになっていますが…」
そうか…。あの時、田原さんは俺の会計まで済ませてしまったのか。言い方が悪かったかな。
どうしよう…
今、田原さん、俺の事、せこい人って勘違いしてるかもしれない。
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店を出て、無い金を返そうとすると、田原さんは、自分が誘ったんだから、自分が支払うのは当然と言ってくれた。
本当、俺は助けられてばかりだ。
俺達は、再び、百貨店へと向かった。
そう言えば…
「か、家庭部って、具体的には、な、な、何をする?」
やっぱり、話し掛けるのは、まだなれそうにない。
「お料理を…」
作るのか。なるほど。
「好きなの?」
「良く、やってます…」
洋菓子店に住んでいるぐらいだからな。でも、料理を作るイメージはないな。
「しゅ、シュークリーム…。あれは、私が…」
作ったのか。
「す、凄い…」
「いえ、と、とんでもないです…」
そうか、あのシュークリーム田原さんが作ってくれたのか。なんか、申し訳ない。
しばらく歩いていると、百貨店が見えてきた。ここら辺で一番大きい店だ。大抵のものは揃ってある。一階には、スーパー、二階には玩具、洋服売り場、三階にはゲームセンター、映画館等が設置されている。
俺達は、百貨店に入った。休日だけあって、人混みがすごい。
「な、なに買う?」
「なに、買いましょう…」
決めてなかったのか。
「とりあえず、二階に」
「は、はい…」
俺達は、エスカレーターで二階に行った。一階と違って、ここは余り、混んでいないようだ。
さてと。
「と、とりあえず、洋服見る?」
「あ、はい…」
俺達は洋服売り場に向かった。
ざらりと、色んな服が並べられていた。
俺と田原さんは、一つ一つ、の服に目を通していった。
わからん。全くわからん。どの服がいいのか、悪いのか見当がつかん。田原さんも同じらしく、さっきから首をかしげている。服なんて警察に捕まらないために着るんじゃないのか?なんでこんなに種類がある。
「に、似合いますか…?」
田原さんは、真っ黒なTシャツを自分にあてながら聞いてきた。当然、俺は似合ってるかどうか、わからない。けど…
「に、似合ってる…」
顔が紅潮する。
「そ、そうですか…」
「う、うん…」
下以外見られない。
「か、買うもの決めました…」
「そ、そう…」
田原さんはコクリと頷く。
心臓がうるさい。
田原さんはそのTシャツを持ったまま、逃げるようにレジへ向かった。
瞬間、解放された気分になった。
レジへ向かう田原さんに目をやる。
今更、不思議に思う。どうして、一緒にいるとあんなに緊張するのだろうか。それは、田原さんが女の子であるから?
何か違う気がする。
俺が、そういう性格だから?
それもあるだろうが、何か釈然としない。
考えても、全く答えがわからない。
けど、焦ったって仕方がないだろう。
いつか、答えは自ずとでてくる。
そうに違いない。




