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第三話~一歩前進~

「朝です。朝です。朝ですよ~。朝です。朝です。起きまし…」

ポチっ。小学校の頃から使っている目覚まし時計を止める。

やかましい事この上ない。

でも、この目覚まし時計でなければ起きられない自分がいる。

パジャマのままで洗面所へ行く。歯ブラシをとって歯みがき粉をつける。

ゴシゴシとリズムよく歯を磨く。

ふと、姉の歯ブラシを見つけた。

そう言えば、まだ、復讐してなかったな。

姉の歯ブラシで便器を磨くか…

俺は姉の歯ブラシを持ってトイレに向かった。

「ちょっと、あたしの歯ブラシ持ってどこ行く気?」

見つかってしまった。

「いや、姉ちゃんの姿が見えたから、歯ブラシを持ってあげようかなと…」

完璧な言い訳だ。

「あ、あそう。ありがとう…今度は歯みがき粉もお願いね」

俺は首を縦に振った。

この場はやり過ごせたが、復讐はやれずじまいだ。まあ、いいか。学校で考えよう。

うがいをして、洗面所から出る。

おっと、いけね。忘れもんだ。俺は青い薄汚れた歯ブラシを持ってトイレに向う。

「父さんの歯ブラシで便器磨きならあたしが先にやっといたけど…」

そっか。

1日で、俺がもっとも楽しみにしていることなのに。

復讐の内容をちょっと重くしてやる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

眠い。非常に眠たい。なんだこれ。高校の授業ってこんなに眠たいもんなの?

中学の時はやたら先生に当てられていたから、気を抜けなかったが…

これは何?先生がただ教科書を読んで、板書しているだけじゃないか。

ちなみに、今は現社の時間。オゾン層の破壊だの、京都議定書だのが主な授業内容。

耐えられなくなった俺は、机に頭を伏す。先生の声が心地のよいBGMのように聞こえる。窓からさす春の太陽の光は、夏の刺激的な光ではなく、ちょうど気持ちがよくなるあたたかさだ。

自然とまぶたが重くなり、眠りに着く。

俺は今、夢の中にいる。

回りを見渡すと、視界一杯に広がる色とりどりの花達が風に踊らされている。ここに寝っ転がったらさぞかしいい気分だろうな。俺は好奇心がままに、花達をベッドがわりにした。夢の中なのに、背中に感じる花一本一本の感触がやけに心地良い。

誰かが向こうから走ってくる。

や……ぁ……ん

なんか言っているが、よく聞こえない。

やざ……な……

うーん。まだ聞き取れない。

耳を澄ます。

「矢澤くん、起きなさい!!」

「うおっ」

俺はビックリして、情けない声をだしながら目を冷ました。

「やっと起きたか。んじゃあ、京都議定書から途中で離脱した国を答えて。出来ればその時の国の大統領も言ってね」

現社の先生が何やらごちゃごちゃ言っている。

寝起きの頭でついていけない。

ここで、わかりませ~ん。何て言ったら、なら授業中に寝るな。と怒られるのは目に見えている。

ここは無理にでも答えなければ…

まず先生のした質問を思いだそう。

京都何とかって言ってたから、多分今日の授業のメインである、京都議定書の事だろう。後は、離脱と何かと、大統領って言ってたな。

そもそも、京都議定書ってなんであろうか。名前から推測すると、あれだな。なんかの本だな。しかも、ミステリー系のやつ。

そう考えると全くもって何故、離脱と大統領が出てくるのかがわからなくなる。

まあ、いっか。無視しよう。現社ってのは多分、世界史の延長みたいな物だろう。なら、誰が京都議定書を書いたのかを聞いているはずだ。社会教科ってのは大抵人名しか出てこないからな。

でも参ったな。本の作者なんて誰一人知らんぞ。

ん?あ、そうだ、そうだ。

あの人なら知っている。我輩は猫であるで有名な

「だ、太宰治ぅ?」



「…………。違います。授業が終わったら話がありますので、職員室まで来てください」

間違えたか…

回りから失笑が聞こえる。

「だ、太宰治ぅ?だって。ふふっ」「い、言うんじゃねえ。思いだしちまうだろうが。っふははは」

「こらっ!私語は…っぷ、慎みなさ…ふふふっ、コホンっ。黙りなさい」

先生にまで笑われるとはな。そもそも俺は何をどう間違えたのかすら、わからないままである。

ただ、わかったのは、授業中は寝ない方が身のためだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先生のお叱りを受けたあと、俺は、教室に戻った。昼休みであるがために、皆は昼食を食べていた。

やってみるか…

俺は昨日の言った事を思い出す。

[仲良くなるきっかけを作る」

俺は一人で飯を食っている田原に近づいて、机の前に立った。

田原は驚いた顔で俺を見上げる。

まあ、普通驚くわな。俺も結構驚いている。俺は元来コミュ癖。そのため、他人に話しかけたことなど滅多にないのだ。大抵は相手の方から話しかけてくる。そんな俺が、誰かに、しかも女の子に話しかけるなんて、夢にも思わなかった。そう考えるとなんだか緊張してきた。手が震えてきた。この場から逃げたい。今すぐなに食わぬ顔をして自分の席につきたい。そんな衝動にかられる。自分の席に戻ろうと足が動いた瞬間、龍神の泣き顔や妹の笑顔が頭をよぎる。

糞っ、逃げられない。

「あ、あああのさ…」

絶対顔真っ赤だよ、俺。

「一緒に、ひりゅめし、くくく食わないか?」

言った、言ってやたぞ!!

これは経験則だが、変わり者というやつは大抵返事すらしない。けど、もうどうでも良いわ。ちゃんと言ったからな!もう、未練やら罪悪感はない。

俺は確かな満足感とともに自分の席に向かう。

「うん、食べよ…」

俺は自分の耳を疑った。

マジかよ…

返事しやがった。しかも、OKだと?

いや、そんなはずはないと思って田原の方を見る。

真っ赤な顔で下を見ながらモジモジしている。

なんだ、こいつ…



可愛い…



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