第4話 魔道具
二度と目が覚めることはないと思っていた。
ワタシが最後に感じ取ったものは体が魔王によって破壊される感覚であり、魔王が大暴れした後である以上、魔王の能力によって大地は黒く腐敗し、生き物が生活できる環境ではなくなっている。
それに、他の個体の部品も多く転がっており、その中から正常に動くワタシの部品を探し出すのはあまりにも効率が悪く、新しく1から作った方が少しコストが高くなるが、あるかもわからない損傷の無い部品を探すより時間も労力もメモリーでさえ0番個体にある程度の情報は行き渡っているので、ワタシの部品が再利用されることはないと考えていたからだ。
しかし、そんな予想とは裏腹にワタシは誰かの手によってたった今、起動されようとしていた。
ワタシは目を開き自身の体を確認する。魔王に破壊される前と同じ構造だ。しかし、武器は携帯しておらず衣類もいつもと違った装いになっており、今いる部屋もメモリに保存されていない場所だった。部屋には人が生活していくために必要な物と、作業台やその周りには工具や魔道具の精密機材などが置いてあり、ワタシを作り直したであろう痕跡が見られる。そして、ワタシの正面には17ほどの歳の青年がこちらの様子を伺っていた。
ワタシは想像していた状況と違い困惑し、ここはルナベル帝国ではないのかも知れないとそんな疑念を抱き0番個体に確認の情報を送ろうとする。
しかし、0番個体に情報ご届くことはなかった。どうやらワタシたちが送り合っている情報ネットワークから意図的に遮断されているようだ。その事実が分かるとワタシは情報得るため、青年との対話を試みる。
ー疑問・ここはどこですか?ー
「ここはバルバルト王国の最北西端にある魔法学園の学生寮だ」
ー疑問・あなたがワタシを回収・修復した。その認識で合っているでしょうか?ー
「そうだ」
正面にいる彼は魔道具でできた右腕を除くとただの学生にしか見えない。
帝国の技術が漏洩?否、ワタシたち魔道具を設計し、作ったのはマスター1人。マスター亡き今唯一作り方を知っているであろう者は魔道具であるNo.0000A。
人間ではない魔道具がマスターへの不利益になる情報を漏らすことなどあり得ない。
青年はたった1人で大破した部品を集め原理を理解し、修復したというのか?しかし、マスターもただの人間である。少し頭の良い人間が直した……
それほどおかしなことではない
仮説が適切である可能性82%
そう結論付け別の質問をしようとした時、青年の方から声をかけられた。
「突然のことで混乱してるかもしれないが、互いに自己紹介しないか?」
ワタシは友好的な態度に安堵する。
スムーズに情報を得られるのはありがたい。
ー回答、問題ないですー
「了解。俺の名前はグレン・アルマンフィ気軽にグレンって呼んでくれ。で、あんた名前は?」
ー回答、私のシリアルナンバーは0049B型ー
「は?」
グレンと名乗った青年はワタシの返答に困惑した様子を見せた。
理解不能、ワタシは何か気に触るようなことでも言ったのだろうか?
グレンとの関係が悪化し、情報が得られなくなるのは避けたい。すぐに対応をしなくては
ー疑問・ワタシはグレンに対し、何か気に触るようなことを言ったのでしょうか?ー
「?!、呼び捨てまじか…」
ー!ー
気を利かせた言葉をかけたつもりだったが失敗したようだった。
ー疑問・また間違えたのでしょうか?ー
「いや大丈夫だ」
何か返答した方がいいのか?
話し始めるのを待つか?
そう考えているとすぐにグレンが質問を繰り出してきた。
「その、『しりあるなんばー』ってのはお前の名前なのか?」
先ほどの困惑していた理由はこのことについてなのだろうか?
確かに、シリアルナンバーという単語はワタシたち魔道具に対して使うものである他国の住人が知らないのも無理はない。
ー回答、シリアルナンバーとはワタシたち魔道具の識別番号です。ワタシのNo.0049B型には既存モデルであるA型B型C型D型のうち、B型のバックアップ、外見、性能を元に49番目に量産されたと言う意味を込められたものです。人間の言う名前と同義だと判断し、回答へと至りましたー
「いや、そりゃ名前じゃねぇだろ」
意味不明、個人を識別するという観点で名前と同義なのでは?
ー疑問、なぜ?ー
「なぜって……」
グレンは言葉に詰まらせている。
そこにすかさずワタシは持論を唱える。
ー疑問、名前とは個人を識別するための呼称であり、シリアルナンバーとなんら変わりないと推定ー
「違うもんは違うんだよ」
ー理解不能ー
「とりあえず今は、互いに呼び合える言葉が欲しだけだ。さっきのは俺が呼びにくいから却下だ。俺がなんか決めていいか?」
ー回答、問題ないですー
「了解」
なるほど、確かにNo.0049B型を口頭で発すると呼びにくい。今までほとんどがワタシたち魔道具同士、ほとんどが直接頭に情報を送り合っていたため気づかなかった。
「んー」
「じゃあ…ビーちゃんでいいか?」
ー回答・問題ないですー
「本当に……そんなのでいいのか?嫌なら嫌って言ってもいいんだぞ。」
ー?ー
グレンは申し訳なさそうな顔をしている。
意味不明、最も呼びやすい最適化された呼び名では?
何を危惧しているのかわからない…
ー回答・問題ないですー
「そうか、ならいいんだが」
グレンの言いたい事は言い終わったのだろうと判断したワタシはずっと聞きたかったことを問いただす。
ー質問、現在私は魔王の動向を追っている知っていたらでいいので何か情報を教えてほしいー
グレンは少し驚き、少し考えたのち答えた。
「………魔王、それはルナベル帝国の帝王ノーマンを殺したと言われる『腐食の魔王カーミラ』のことか?」
ー回答、そうですー
ワタシが肯定するのを見るとグレンはため息をついて重い口を開いた。
「魔王は死んだよ。2年前に」
魔王が死んだ?
ワタシはその事実を受け止めきれずにいた。
死んだ?あの魔王が?触れたもの全てを腐食させる魔王が?誰に?殺せるのか?一体、どうやって?
ワタシが作り直される間にどれほどの時間が経ったのかわからないが、バルバルト王国の最北西端にある学園が無事?そのことを考慮するとやはりバルバルト王国へ向かっていた魔王は着く前に殺されたと考えるのが妥当
ならいったいだれ……
ワタシが情報を整理しているうちにグレンは話しを続ける。
「バルバルト王国へと進行した『腐食の魔王』は『閃光の勇者』とこの国の第一王子『時空の賢者』そして魔族の3人によって討伐されたのだよ。」
グレンの話は先ほどまでに取り乱していたワタシの疑問を打ち値消すほどには納得するに足る内容だった。
魔王は死んだ
命令である魔王の殺害は二度と叶えることができなくなった。
ではワタシは何をすればいい。
なんのために稼働している。
これからどうすれば良い。
わからない……




