②ピアとアスカ
あれから一週間が経ち今の状況を少しずつだが受け入れられるようになってきた。
まず、ここは私が住んでいた地球とは違う。
説明が難しいが...要するにざっくり言うと異世界らしい。
魔法と冒険のファンタジーの世界‥わくわくするかと思いきや自分が実際にその世界の中で生きるとなれば全くの別物だ。
だって‥魔物とかいるんだよ?
普通に怖いでしょ?映画の、ほら、あれ、ジュ○シックパークみたいな。
魔法だっていきなり火とか水とか出てくるんだよ?手品とかじゃなくて本物とかマジで恐怖しかないから...。
あれは物語の中だから格好良かったり、憧れたりするもので…リアルでは無理無理っ!!
とはいえ、今現在その世界の中にいるのだから受け入れるしかないんだよね。
それと、一番肝心な事。それは‥‥‥。
私が人間じゃないっていうか、爬虫類?いや、自分でもわからないんだけど。
鱗があるから爬虫類かもってだけで、もしかしたら魔物とかのパターンもあり?
あんまり見たくないから自分の体をよく見てないんだけど、薄いピンクとか本当ファンタジーそのもの。
何もかも悲惨だけど、悪い事ばかりでもない。
私の保護者?が将来有望なイケメンの上にめちゃくちゃ優しい子だったの。
どういう経緯で私がこの場所で生まれたかは不明だけど、多分最初に見た少年が私の保護者らしい。
本当の保護者は少年の親になるけど、少年が毎日甲斐甲斐しく私の世話をしてくれて、まだ一週間しか一緒にいないけどあっという間に仲良しになっちゃった。
少年‥あ、名前はアスカ。
何か日本人ぽい名前で親近感沸くよね~、少年に似合ってるとても良い名前だと思う!
それから私の名前もアスカが名付けてくれたんだけど‥
「ピア、お待たせご飯持ってきたよ」
ピアに決定したようだ。
何故ピア?うーん、私の喋り方からかな?
変にかしこまった名前よりも可愛らしいし、うん、なかなかセンスある!
それにちょうどお腹すいてたんだよね、ご飯ご飯~
アスカが持ってきてくれた木のお皿の中をみると…うごうごとうねってるでかいイモムシみたいなやつとゴツゴツした硬そうな木の実、それからよくわからない何かの骨が入っていた。
ゾゾゾゾ!!!!鳥肌、いや鱗肌?何だっていい!こんなの食べれるかっ!
『ピュアッッ!!!(こんなのいらないっ!!!)』
私はまだ短い小さな手で木のお皿をアスカの方へと押し戻した。
「‥え?食べないの?」
アスカがすごく寂しそうな顔をする。
いやいや、そんな顔されても嫌なものは嫌だ。
「ごめんね、他の物を探して持ってくるよ」
そう言ってと私に背を向けぼとぼと戻って行く。
アスカの哀愁ただよう背中‥‥ううううっ
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ピュア!』
私はぽてぽてと走りアスカの足にガシッとしがみついた。
「ピア、どうしたの?」
『ピュアピュアピュアッッ』
さっきの木のお皿を指差し訴えかける。
「もしかしてこれが食べたい?」
食べたいわけあるかっ!!!!そう言いたい。
だが、アスカの悲しそうな顔は見なくなかったので歯をくいしばって肯定の意味でピュア、と鳴く。
アスカは満面の笑みで私の前にお皿を床に置いてきた。
「いっぱいお食べ」
くっ‥‥!!
私は獣、私は爬虫類、これはご馳走。
そう自分に暗示をかけ…‥‥完食した。
♢♢♢
「ピア大丈夫?具合悪いのかな?」
食べ終わった私は人間だった頃の尊厳をなくしたかのように感じ精根尽き果て床に転がっていた。
アスカが心配しているが別に具合が悪いわけではない。
イモムシもどきはとにかく気持ち悪かった…口の中でもうねうねして吐き出したい気持ちを堪え咀嚼すれば食感はプリプリとして味もまろやかなクリームチーズみたいでつい夢中になって食べてしまった。
硬そうな木の実も口に入れれば柿○ーのごとくボリボリと手が止まらなくなり、得体のしれない骨にいたってはチューチューとしばらく吸い付いて味わってしまう程だった。
あっという間に食べ終わってから我に返り何だか自分が人間からは遠い存在になったら気がして落ち込んだ。
私、元女子校生‥‥だよね?
「ピアおいで」
アスカはそう言って私を腕の中に抱えぎゅっと包み込んだ。
あったかい。アスカの腕の中はとてもホッとする。
『ピキュウ‥‥』
私、この腕の中が大好きだ。
あまりに心地好く離れたくなくてアスカにしがみついた。
「ふふ、ピアは可愛いなぁ」
アスカも嬉しそうに笑っている。こんな異世界へと生まれ変わってしまったけど、アスカがいてくれたらこの世界も何だか悪くないような気がする。
まだ赤ちゃんの私は強い睡魔に襲われアスカの腕の中でうとうととまどろむ。
「おやすみ、ピア。ずっと僕が守るからね」
私だって強くなってアスカを守るよ‥‥おやすみなさいアスカ。
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