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短編他

等価価値

作者: 如月ふたば
掲載日:2025/08/07

 資本主義っていうか、資本主義の一部は随分わかりやすくて良い。

 それは金額に対応できる人間ならば、の話だ。


 この絵師に依頼すると一枚3000円から。

 有名絵師にお願いすると、もっと高くつく。

 彼らにたする技量と経費ということだろうか。


 大卒、初任給は〇〇万円。

 高卒は大学卒業資格を持つ人より、ほぼ低く見積もられている。

 本人の能力は関係ないらしい。


 こんなふうに分かりやすく、

誰かに自分の価値を値段でも付けてくれたらいいのに。

 初任給なんかは、ある意味契約だから分かりやすいのかもしれない。


 わたしは身体が弱いせいで、なかなか上手く働けずにいる。

 つまり世間との契約が成り立っていない訳だ。


 両親が太いお陰で、「家事手伝い」という職業欄に居ることが出来ていからラッキーだ。

 

 だからとわたしの価値がわかるはずもない。


 職業欄が一応、埋まってるんだから「ステータスオープン」で、

この世界での価値やレベルが示されてもいいのに。

 そんなこと出来きないのは知っているけど。


 だから出来ることを探したのだ。

 簡単にわたしにも出来る金額の分かること。

 当たれば金額の大きな宝くじを買っているのだ。


 雷に打たれる確率より低いというだけあって、元すら取れない時もある。

 何年も大量に買っているのに。

 最近は購入し、当選番号が発表されるまでが楽しい。まである。


「夢を買っているんです」ということにしておいて、今回も一等前後賞合わせて一億円を買いに行く。


 今日は「夢」の発売日。

 当たりが出ると有名な所まで買いに行くから、わざわざバスに乗っていく。


 あまり遠くまで外出しないわたしには、ときどきバスに乗ることで街の変化を感じることが出来る。

 秋が終わりに近づけば、お洒落の為に早々にコートを上着にしている人。

 春を間近に控えれば、淡い元気な色が目に入る。


 わたしはこうして、世間の流れに気づかされる。


 今回はバスの入口近くにある席に座る。

 周囲の人や窓の向こうに流れる景色を何気なく眺めていた。


 すると止まったバス停で、大荷物をもった新米ママさんが赤ちゃんを連れて乗りこんだ。


「どうぞ」

 わたしはママさんに声を掛けると、笑顔で彼女は答えてくれた。

「ありがとうございます」


 席を立ったのは良いものの、なんとなく彼女の側にい続けるの気まずい。

 わたしは降りるバス停まで、出口近くで待っていた。


「助かりました」

 わたしより先に降りた、新米ママさん。

 バスを降りる際まで、感謝の言葉をくれた。


  バスが走り出すとともに、わたしは彼女を眺めると赤ちゃんに声を掛けているようだ。


 なんだかほのぼのした気分のまま、わたしは宝くじ売り場近くのバス停まで揺られて行く。


「一等合わせて一億円」という幟が見えてきた。

 流石、当たると有名な宝くじ売り場。

 売り出し当日ということで、大勢が並びわいわいがやがや。


 大勢詰めかけた人で出来た長い列と、売り場に存在する慌ただしい空気。


 法被を着てスピーカーで「宝くじ売り場」であることを宣伝している彼らから購入を終えた人に「ありがとうございました」の声が聞こえた。


 ふと新米ママさんの感謝の言葉が重なった。

「今回は、いっか」

 わたしは誰かに「ありがとう」と言ってもらえる存在だとわかったから。


 だから、宝くじ売り場を去ることに決めた。

良い意味でも悪い意味でも良いから、あなたのこころに少しでも引っかかるとうれしいです。

お読み下さりありがとうございます。

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