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等価価値

作者: 如月ふたば

 資本主義っていうか、資本主義の一部は随分わかりやすくて良い。

 それは金額に対応できる人間ならば、の話だ。


 この絵師に依頼すると一枚3000円から。

 有名絵師にお願いすると、もっと高くつく。

 彼らにたする技量と経費ということだろうか。


 大卒、初任給は〇〇万円。

 高卒は大学卒業資格を持つ人より、ほぼ低く見積もられている。

 本人の能力は関係ないらしい。


 こんなふうに分かりやすく、

誰かに自分の価値を値段でも付けてくれたらいいのに。

 初任給なんかは、ある意味契約だから分かりやすいのかもしれない。


 わたしは身体が弱いせいで、なかなか上手く働けずにいる。

 つまり世間との契約が成り立っていない訳だ。


 両親が太いお陰で、「家事手伝い」という職業欄に居ることが出来ていからラッキーだ。

 

 だからとわたしの価値がわかるはずもない。


 職業欄が一応、埋まってるんだから「ステータスオープン」で、

この世界での価値やレベルが示されてもいいのに。

 そんなこと出来きないのは知っているけど。


 だから出来ることを探したのだ。

 簡単にわたしにも出来る金額の分かること。

 当たれば金額の大きな宝くじを買っているのだ。


 雷に打たれる確率より低いというだけあって、元すら取れない時もある。

 何年も大量に買っているのに。

 最近は購入し、当選番号が発表されるまでが楽しい。まである。


「夢を買っているんです」ということにしておいて、今回も一等前後賞合わせて一億円を買いに行く。


 今日は「夢」の発売日。

 当たりが出ると有名な所まで買いに行くから、わざわざバスに乗っていく。


 あまり遠くまで外出しないわたしには、ときどきバスに乗ることで街の変化を感じることが出来る。

 秋が終わりに近づけば、お洒落の為に早々にコートを上着にしている人。

 春を間近に控えれば、淡い元気な色が目に入る。


 わたしはこうして、世間の流れに気づかされる。


 今回はバスの入口近くにある席に座る。

 周囲の人や窓の向こうに流れる景色を何気なく眺めていた。


 すると止まったバス停で、大荷物をもった新米ママさんが赤ちゃんを連れて乗りこんだ。


「どうぞ」

 わたしはママさんに声を掛けると、笑顔で彼女は答えてくれた。

「ありがとうございます」


 席を立ったのは良いものの、なんとなく彼女の側にい続けるの気まずい。

 わたしは降りるバス停まで、出口近くで待っていた。


「助かりました」

 わたしより先に降りた、新米ママさん。

 バスを降りる際まで、感謝の言葉をくれた。


  バスが走り出すとともに、わたしは彼女を眺めると赤ちゃんに声を掛けているようだ。


 なんだかほのぼのした気分のまま、わたしは宝くじ売り場近くのバス停まで揺られて行く。


「一等合わせて一億円」という幟が見えてきた。

 流石、当たると有名な宝くじ売り場。

 売り出し当日ということで、大勢が並びわいわいがやがや。


 大勢詰めかけた人で出来た長い列と、売り場に存在する慌ただしい空気。


 法被を着てスピーカーで「宝くじ売り場」であることを宣伝している彼らから購入を終えた人に「ありがとうございました」の声が聞こえた。


 ふと新米ママさんの感謝の言葉が重なった。

「今回は、いっか」

 わたしは誰かに「ありがとう」と言ってもらえる存在だとわかったから。


 だから、宝くじ売り場を去ることに決めた。

良い意味でも悪い意味でも良いから、あなたのこころに少しでも引っかかるとうれしいです。

お読み下さりありがとうございます。

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