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実は、の話

「普段は王都から離れた場所で生活しているらしいね」


 ベイデールのその言葉に頷いた。


「はい」


「結婚後もそこで?」


「仕事があるので基本的には…。とはいえ王都に戻ることも今までよりは多くなるかと思っていますが」


 これまでとは勝手が違う。ラルフィールは必要なものもあるだろうし、女性は新しいものに触れておいた方が良い。今後も社交の場に出るのならある程度は必要なことだ。それに離れてしまう親にも会わせて上げないと。そんな事を考えながらオーソクレースは呟く。


「ふーん…」


「おい。何を企んでいるんだ」


 相槌を打ったベイデールの顔を横から覗き込んでアリドレイズがメンチを切った。近い。流石にうざったい。


「企むって…ただ近況を聞いているだけだろ」


「そんな事を言いながらお前、オーソクレースのところに視察に行こうとか今後も王都に戻ってくるタイミングで会いに来ようとか思ってるだろ」


「そりゃ、機会があれば是非そうしたいね」


「俺だってまだ行ってないのに、このストーカーがー!!」


 発狂したアリドレイズに二人は黙る。夜会の翌日。急ではあったけれど三人は王宮の一室に集まっていた。数年ぶりに顔を合わせた三人には積もる話があったから…だった筈だけど話が全然進まない。


 ちなみにラルフィールはベイデールの妻と別室でお茶をしている。昨日、ラルフィールに聞いた限りではとても好感の持てる女性のようだ。彼女の世界が広がるのは好ましい。


「ストーカーと言えば、アリドレイズ殿下?」


「へ?」


 オーソクレースに低い声で呼ばれてアリドレイズは急に大人しくなった。


「少し前、ラルフィールを呼び出して私の事を根掘り葉掘り聞いていたそうですね」


「…」


 その言葉に黙ったアリドレイズを見てベイデールはどん引きした。


「え? 本当に? お前、他人の恋人に何してるんだよ」


「まだ恋人じゃなかった!! それに直接じゃなくて彼女の親経由で打診したんだから邪な呼び出しじゃないのは事実だ!」


 そうじゃねえわ。と男二人は思う。


「貴族令嬢を独身の王太子が呼び出し? どう見たってそんなのヤバい匂いしかしないだろうが」


「こそこそするよりはマシだろ」


「なんでやる前提でよりマシな方を持ってくるんだよ。そもそもそんな事をするのが異常だって言ってんの」


「…だってー」


 しょぼしょぼ。と、いじけながらアリドレイズは呟く。む。と、オーソクレースに睨まれては流石に白状せざるを得ない。


「ラルフィールに、恋愛的な意味ではない興味があったのは事実だよ。オーソクレースが女性と継続的に会うなんて驚いたし。それにオーソクレースの近況を知りたかったのも事実。でもそれだけじゃなくて、実はラルフィールも結構危うい状態にあったんだ」


 危うい? と、穏やかではない言葉に二人は目を丸くした。


「オーソクレースの動向は貴族の間でかなり注視されていたからね。そこに継続して訪問している女性がいるという噂が立って、それが誰かということもバレ始めて、男性からも女性からもラルフィールが注目され始めてたんだ」


 継続してと言っても話を聞くに二回目か三回目の事だろう。間も相当空いていたのにあれで情報掴まれてたの? 貴族ネットワークこわぁ…。と引き攣るオーソクレースの前でベイデールは頷いた。


「なるほどね。そこに王太子が名乗りを上げれば外野は強引な手を打てない。他にもやり様はあったのかもしれないけれど、アリドレイズも損をしない良い選択だったかもな」


 ラルフィールを守るついでにオーソクレースの情報が手に入る。…本人にしてみると気持ち悪い以外の何物でも無いけれど、気付いていなかった危機からラルフィールを守って貰えたのは有り難い。


「でも、ラルフィールは怯えてましたからね」


 反省はして欲しくてオーソクレースは呟いた。


「オーソクレースの話でお互い楽しく過ごそう思ってたのに上手くいかなかったねー」


「そりゃーそうだろ。社交界で後ろ指さされていた令嬢が王太子に呼び出されて、金を稼ぎまくってる意中の伯爵令息の近況を教えろって言われてどこに楽しめる要素があるんだ」


 ベイデールに解説されて、改めて「無理があるな」と、三人は納得した。でも結果良い方に転がったから今では笑い話だ。


「大体、勝手にこんなことして最後どうするつもりだったんだよ」


 このタイミングで二人が纏まったから良かったものの、そうじゃなかったら収拾がつかなかったぞ。と、オーソクレースの代わりにベイデールはアリドレイズを非難した。いい加減、その無茶振りを止めろと忠告した言葉はひらりと躱される。


「そろそろ種明かししようと思って、昨日の夜会でラルフィールのパートナーにどうぞってオーソクレースをこっそり準備しようと思ったら断られちゃった」


「おま…何考えて…」


 と、一応それを咎めようとしたベイデールは吹き出した。


「笑い事じゃ無いんですけど」


 そうは言いながらもつられて笑いそうになり、怒りきれないオーソクレースが呟く。二人で肩を震わせていたら全く反省しないこの国の王太子殿下が「まぁ、終わり良ければ全て良しって事で」と勝手に締めた。かちん。


「オーソクレース。やっぱりうちに来いよ。この国に未来は無い」


「前向きに検討します」


「ちょっと待ってくれー!!」

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