6-7 ハンナ・ナーベ
王の話は続く。
「ハンナ・ナーベ。私の四女だ。他に男も二人いて、ハンナの王位継承権は……ええと、六位だな。王位に関しては、六位から即位した例は今まではない。母親はセバヤンの生まれだから、カースン、セバヤンの両方と縁が作れる。歳は十八になってるから、そろそろ本気で相手探しをと思ってた頃にネゲイの話を聞いてね。今までも幾つか話はあったんだが保留にしてた。海系の血筋だから、山系の誰かと縁づけさせたかった。バース殿、血縁としては悪くないだろ?。」
「ハンナ・ナーベです。」
オレの前に座ったハンナが会釈する。オレも会釈を返しながら考える。オレの正妻としてはネリがその席に収まる予定で、それを補強するようにエンリを側室に入れる。この二人は明らかに「山系」だ。バースの正妻もモルの出身なので山系。ネリの母であるショーの家はカースン。カースンは派閥的に見て山でも海でもない。中央だ。そこに三人目で海の要素が強い人間を入れる。政治的なバランスはよさそうに見えるが、情報が足りない。バースも考え込んでいる。
入植地と資源の探索がオレがヤーラ359星系に送られた目的だ。そこから考えれば、既に人間社会が形成されているこの場所では、政治的影響力を強めることも必要だ。政治的な影響力なら田舎の小領よりも首都の方が大きい。しかしまだ、そこまで手を広げるには、オレ自身のカースンに関する知識も不足している。
王の質問はバースに向けられた。回答はバースが返すべきなのだろうが、一応言っておく。
「バース様。私はまず今の生活を落ち着けたいと思っていた。仕事が上手く進んだら三人目を勧められることはあるかと思ってはいたが、そこまで進むのはもっと先だと。それに、海とか山とかの話にも詳しくない。私だと身分的にも釣り合いが悪そうだし、ナーベ殿とも今日初めて会ったばかりで、すぐには答えにくい。」
バースが答えた。
「陛下の勧めて下さる話は、ネゲイも呑める条件でカースン全体を富ませようというものであることはわかります。正妻ではなくコビンとして迎えるということで、当事者二人が共に納得するのであれば、私は反対しにくいですが、今マコト殿が言ったように身分の話、陛下の四女たる方をネゲイの第五位階の者に降嫁させるというのは……、よろしいのですか?。」
「降嫁の前例で一番新しいのは、第四位階、海側のサドゥ領主、アリブの所ににコビンとして嫁に出してるね。ハンナの姉、三女のラーバだ。そのあたりは考えてるよ。二位の相手は二位とかの条件を付けたら、相手を探すのは大変だ。地位よりも、能力で見たい。ハンナも了解している。請われたのならともかく、こっちから勧める話で正妻に押し込んでばかりいたら、どこで反発されるかわからない。」
ハンナの了解とは、ネリと同じように、幼い頃から自分の結婚相手は政略的に決められるものだと刷り込まれてきているからだろう。このことで本人に質問するのは無駄だと思う。バースとしては自分の娘が正妻のままでいられることは安心材料の一つだ。出身はともかく、家の中ではネリの方が格上となる。しかしエンリは、ハンナに対して身分でも年齢でも負けている。エンリにアドバンテージを与えておかないと、後々面倒が起きそうだ。
「慣例的に、コビンの間に序列のようなものは、できるんでしょうね。」
「大抵は、最初はコビンになった順序、その後は子供が生まれたとか任されてる仕事の中身でゆっくり変わるみたいだね。もうマコト殿にはコビンが一人いると聞いてるから、二番目のコビンか。無理に押し込むと悪い評判が立つ。だから最初はその順で始めるべきだ。」
王が答える。この席で、一番多くのコビンと接している男だからそのあたりも当然に詳しい。そしてエンリの強化は必須だ。記憶力その他、インプラントの活用について、α、意見は?。
『エンリとネリはできるだけ揃えるようにしてるけど、ハンナは何ヶ月か遅れるから、特別な訓練ナシだと追いつくのに一年ぐらいはかかるわ。それも調整できる。計画は作っておくから後で見てね。』
「今日会ったばかりで、私にはハンナ殿の人柄を含めてまったくわからないのですが。」
「そうだな。簡単に説明しておくと、成人するまではカースンとセバヤンの両方で同じぐらいの期間を過ごしてきたから、どちらにも人脈がある。今は商務省で事務をやっていて、議題が商務になる時は閣議にも顔を出すことがある。それ以外は、まあ、二人で庭の散歩でもしてきたらどうかな?。」
ハンナは立ち上がる。おそらく「庭の散歩」までの流れは事前に打ち合わせ済みだろう。壁際にいた侍女の一人も動き出した。彼女がハンナの世話役だろうか。オレはバースに言った。
「このような次第ですので、少し話をしてみます。」
「そうだね。こんな次第だしね。儂はマコト殿抜きでもできる話を、こっちでやっておくよ。」
バースは諦めた雰囲気で答えた。
先に庭に降りたハンナが追いついてきたオレに言う。
「改めまして、ハンナ・ナーベです。」
「ナーベ殿。マコト・ナガキ・ヤムーグだ。長ければマコトでいい。」
「では私もハンナと。コビンとなる者ですから敬称はいりません。」
「そういうものか?。慣れたら呼び方も変わるかもしれないが。」
「慣れていただければと思います。あと、マコト殿のお連れ様は……。」
「アン・ニムエです。アンで結構です。」
「アン殿。よしなに。」
「こちらこそ。」
「ハンナ殿、歩きながら話す?。それともあの四阿あたりで座って話す?。」
「少し暑いですから屋根のあるところがいいと思います。」
「じゃあ、四阿で。ここから見えてはいるけど庭の中の道は色々曲がったりしてるから、案内を頼むよ。」
庭の中は散策が楽しめるように、石畳の小径が迷路のように巡らされている。前に一度来たことがあるだけで、庭に入った場所も違うから四阿への経路がよくわからない。案内を頼まれたハンナを先頭にして、アンを含めて三人で四阿に向かった。さっきオレが世話係?と思った侍女は茶器のトレイを持って少し遅れて歩いている。四阿のテーブルに着き、アンは少し離れて立った。茶器が追いついてきてオレとハンナの前に並べられる。ハンナが侍女を紹介した。
「私が第二位階として動いている時には大抵一緒にいてくれている侍女のドリーです。」
「ドリー・コーンと申します。」
「マコト・ナガキ・ヤムーグだ。」
「アン・ニムエです。」
それぞれ紹介が終わってドリーとアンはテーブルから少し離れた場所に並んで立つ。
「マコト殿のことは、聞かせていただいております。お付きの方々を含めて知恵と物作りに長けていると。それから、池に浮かべた船に住んでいて、不思議な乗り物でネゲイの町と池を往復しながら仕事をしているとか。その乗り物は、先ほど少し見せていただきました。今回、あれでネゲイからここまで来られたんですよね。」
「そうだよ。普通の馬車よりずっと速い。昼間に走ると珍しがって人が寄ってくるから、夜中に二晩かけてここまで来た。」
「乗せていただくことはできますか?。」
「今回のカースン滞在は明日の夕方までの予定だから、その時間があるかどうかは、わからないなあ。それに、今はネゲイの外でバース様を乗せるためにネゲイの紋が入ってる。そんなものにカースンの町の中で第二位階の方を乗せてもいいものなのかな?。」
「それはあまり気にしなくていいと思いますよ。私もセバヤンに行く時、セバヤン領主の紋が入った馬車に乗ったこととがありますから。明日の私は商務省で仕事ですけど、今日なら、町の案内もできます。」
「今日はここを出たら工務省に寄るし、工務省からバース様達をネゲイ館に送り届けて、その後かなあ。五の鐘前ぐらいになる。少し遅くないかな?。工務省の前に時間が作れるか、どうだろうな。」
「そうですね。明日は……、ああ、あまりよくない。夕方になるようなら、残念ですが別の機会にしないといけないようです。」
「まあ、コビンとしてネゲイに来たらバギーに乗る機会もあると思うよ。来ればね。ネゲイの紋を入れていない時は、池と町の間で結構人を乗せてたりもするんだ。同じ方向に向かっていればね。私の知り合いは大抵何回か乗ってる。」
「バギーは、今日がダメでもネゲイに行くのを楽しみにしておきます。ええと、それから……。」
話すべき内容を思い出そうとしているようだ。
「私は商務の方で第五位階としても働いておりますので、マコト殿の知恵で作られた物を売っていく方面でお手伝いできるだろうと、父が私を選んだのはそれも理由です。」
「私はネゲイで物作りを始めたばかりで、物作りはともかく、商売の習慣とかネゲイのことだけでもまだわかっていない。だからバース様達が支えてくれているのはとてもありがたいと思っている。そこにネゲイだけでなくてカースン全体の動きをある程度知っている人が加わるのは喜ばしいことだと思う。だが心配もあって、さっきも話が出たがネゲイではもうコビンの約束をしている。そのあたりで、人間関係がおかしくならないようにはしたい。」
いきなり聞かされた結婚話で最初に懸念したことの一つを伝える。
「それが心配なようでしたら、私はカースンでのコビン、という立場でもいいんですよ。今すぐ決める必要もありませんし。カースンと領地を往復する第四位階の方々には珍しくない話です。」
「王女様をそんな立場にすることが周囲から見てどんな評判になるかは心配だな。ハンナ殿をコビンとするなら私にもそれなりの責任は生じるから、誰もが誰からも陰口を叩かれないような方法を考えるのも私の仕事になる。まあ、今日初めて聞かされた話でもあるし、その辺は、物事を動かしながら一番いい形を探すしかないとは思ってるよ。」
「でも一度はネゲイに行ってみたいです。海側はあちこち行ったことがあるんですけど、ヤダ川を遡ったことがほとんどないので。モルにも行ってないんですよ。」
「もちろん。今の私の家族になるなら、今の私の拠点にも来るべきだと思うよ。共通体験があればお互いに話がわかりやすくなる。」
会話しながら考えている。「下級官僚の娘」だったというネリの母、ドーラ・ショーはネゲイ運営の重鎮の一人になっている。寒村の平民だったエンリは、聡明さを見込まれてネゲイにおける漁業のトップになるべく訓練を受けている最中だ。王族に生まれた人間なら、幼少時から何らかの指導者的な立場になれるような教育も受けるだろう。それはコビンとしてのドーラやエンリよりも有利な状態でスタートできる。やはりエンリの立場が弱い。本人が意識しないレベルででも、記憶力や身体能力などを、インプラントで底上げしてやらねば埋もれてしまうだろう。だがそれは不平等である気もする。何が正解なのか。もう少し会話をしながら考えなければならない。
「商務の仕事というのは、どういうものかな。今やってるのは?。話してもいい範囲で構わないよ。」
「明日はヨーベの港の話ですね。あのあたりはハマサックの船も水揚げや補給に寄ることがあるんですけど、その時の関税率の話と、ついでに関税事務所の建物がかなり古くなってるからって、そんな話です。関税率次第で建物の建て直しのお金が出るかどうかとか、関税を上げすぎたらヨーベの漁船だけでは必要な魚が採れてないとか、先週はそんな計算ばかりやってました。」
「関税率をどのくらい上げたら立ち寄ってくる船の数がどのくらい減るかとか、そんな計算も?。」
「経験則っていうんですか。昔関税率を変えたときに税収がどれだけ変わったとか、そんな木簡が一杯残ってます。古いヤツなんか、カビで読みにくいし手が真っ黒になるんですけどね。運ぶだけで服が汚れます。」
ハンナは計算もできる。商務省には、どのくらいまで遡れるかはわからないが過去の経済活動の記録もある。オレ達なら、記録面の埃を払いながら一瞥してゆくだけで記録の再整理と集計ができるだろう。新しい商品の売り込みに関して、また、オレの本来の目的である惑星間通商や移民計画を検討するためには、小規模なものではあるが見ておきたい数字だ。そして、最近のハンナは古い記録を漁って手指や服が汚れることを嘆いている。石鹸を渡しておこう。オレはアンを呼び寄せた。
「最近手指が汚れてしまうような仕事をしている人には、これも渡しておこう。石鹸だよ。」
「石鹸?。」
ハンナはアンがテーブルに置いた石鹸を手に取った。刻印されている文字を読む。
「ネゲイ式の新製法で作られた石鹸。」
「試してみてよ。ネゲイではもうすぐ売りに出すつもりだけど、カースンまで届くかどうかはわからない。今回カースンまで来ることになって、お土産用に幾つか用意したんだけど、話す相手のほとんどが石鹸方面に興味の薄そうな人ばかりだったんで、ちょっと配り損ねてる。ああ、世話役の人、ドリー殿!、あなたにも何個か渡しておこう。今ハンナ殿に渡したものの予備と、回りの何人かでも使ってみて欲しい。」
石鹸の話に脱線はしたが本題に戻る。
「ハンナ殿。その古い木簡というのは、どのくらいまで古いものなのかな?。さっきジリオ殿と『紙』の話をしたときに、『紙はどのくらい長保ちするか』とかの話も出てね。」
「規定では十二年ということになってますけど、実際はもっと古いのも残ってます。大体、書かれた時期ごとにまとまってはいるんですけど整理が悪いんですよ。何かの理由で持ち出した後で、同じ場所に返してないとかでしょうね。私が見た中で一番古いものは二十年前でした。七年か八年前の箱に入ってましたけど。」
整理が悪くてというのは、どこにでもありそうな話だ。
「二十年ってわかったということは、一応読めたってことだよね。」
「ええ。多分、書庫の中のどこに置かれていたかで傷み具合は違ってますね。読みにくいものはありましたけど、全然ダメというのはほとんどなかったです。」
「ジリオ殿が言ってたけど、長く置いておくためのインクと、短い期間で読めなくなってもいい安いインクがあるんだろ?。ハンナ殿が見ていた木簡はどっちのインクを使っていたとかわかる?。」
「保存期間が十二年ということになってますから、消えにくい方だと思いますよ。」
「ああ、言われてみれば確かに。長期保存することを前提にした記録を書く部署で使われるインクはそうなるな。」
「それで『紙』はどのくらい長保ちするものなんですか?。」
「ちゃんとした材料で作って、乾いていて光が当たらなくて暑くならない場所に置いておけば、一四四年とかは大丈夫なはずなんだ。木簡でも、そのくらい経ってるものはあるだろ?。」
「そうですね。そういう古い木簡も残ってますね。」
「でも、今心配してるのは、ここ、カースンで集めた材料だけで作った紙は、一番古くてもまだ二~三ヶ月しか経ってないことでね。私が前にいたところとは、作り方はほとんど同じだけど材料が違ってるからどうなるかわからない。そういうところだよ。」
「それは本当に十二年とか経たないと、どのくらい長保ちするかわからない、ということですか?。」
「そういうことだね。」
「そうすると、短い期間で捨ててもいいようなものにしか、今は使えない。多分、木簡よりは、雨漏りとかに弱いような気もします。保管場所に気を付けながら、試していくしかないんでしょうね。」
「ジリオ殿とも、そんな話をしてるよ。さっき聞かせてもらった『十二年』とかの記録には、当面は使えないと思ってる。」
話は真面目な方向へ流れている。オレは期待していなかった、「押しつけられ女房」候補が優良物件であったことに喜びながら話をしていて、アンが黙っているのはその方向で情報を引き出そうというAIの意思の表れだ。ハンナも真面目に受け答えしている。そして会話の流れを気にしていたのは侍女のドリーも同じだった。方向は違っていたが。
「姫様、仕事の話も結構ですが、もう少し、マコト様の人となりがわかるような話も聞かせていただけませんか?。お二人とも仕事熱心であることはわかりましたけど、私も後で陛下にお二人のお話の内容を簡単にですがお伝えしなければなりませんので。」
会話の流れを変えなければならないか、オレ自身の過去を正直に話すわけにもいかないし、などと思っていたらハンナが言った。
「ドリー、私、楽しいですよ。今まで何人かの結婚相手候補と思われる方々とお話ししていますが、マコト殿が今朝まで私のことを全く知らなかったというのもあると思いますけど、私の身分に気に入られることを優先せずに、私に何ができるかを知って下さろうとしている、私を受け入れた場合の不都合なことまで口に出して下さった方は初めてです。そうなってくると、私としても、まあ、政略結婚しかできない、自分の結婚相手に何かを望むことを諦めてる女ですけど、マコト殿は悪くない相手だと感じてますよ。」
自分の評価が妙に高いのは、聞いていて恥ずかしい。
「ハンナ殿。私は自分の結婚相手として勧められている人がどんな人なのか知ろうとしただけだよ。誰でもやることをやって、それだけのことで私に対する評価が高すぎないか?。」
「いいえ。『知恵者』と呼ばれている方は、本当に知者者だなあと、そう思っただけです。知恵といえば、今日来ていらっしゃるアン殿の他にもマコト殿には何人かの手伝いの女性がいて、マコト殿を含めて全員がビックリするほどの計算上手だとか。算盤も算木も使わずに間違いもせず、って聞きましたよ。仕事で飽きるほど計算をやって思いますけど、計算の早い方が羨ましいです。」
この話題も、正直に全部は説明しにくい。
「まあ、早い方だとは思うよ。慣れとか、計算の方法とか、色々あると思うけど。」
「どういう方法で計算をやってますか?。」
「話せば長くなるよ。」
「さっきドリーも言ってましたけど、私からも質問をしないといけないみたいですので。」
ドリーが話の方向を変えさせる。
「姫様、計算の方法は、話題としては違うと思いますよ。こういう場合は、好きな食べ物とか休日の過ごし方とかを聞くべきものだと思ってましたが。」
「じゃあ、質問を変えましょうか。好きな食べ物とか休日の過ごし方とかを、教えていただけますか?。」
口調からするに、平凡すぎて面白くない質問だと思っているようだ。
「好きな食べ物は……、最近だと、昨日海の近くで食べたエビは美味しかったな。ネゲイではなかなか食べられない。」
「そうでしたね。私は小さい頃から海のものをよく食べてましたから、それが当たり前だと思ってましたが、ネゲイではどんなものを食べてます?。」
「野菜とパンと果物と川エビ、虫肉、時々獣肉。アン、こんなものかな?。」
「川エビは、まだ練習中ですけどね。」
「練習中?。」
ハンナが聞く。
「みんなが持ち上げる私の知恵とは関係なく、ネゲイの近くで新しく川エビを採れるように今整備中なんだよ。まだ始まったばかりで、季節ごとに獲れる種類も量もよくわかってない。うまくすれば、干したヤツ以外のエビが食べられるようになる。」
「好きな食べ物って、面白くない質問だと思ってましたけどネゲイではそうなんですか。面白い答えが聞けました。山と海では違いますね。」
「そういう話は私もできるだけ集めて覚えるようにしてるよ。場所によって、人が欲しがるものは違ってくるから、新しい物を作るにしても、何が売れやすいかは変わるからね。」
「商務で色々見てるとそんな傾向もなんとなくわかります。」
「また仕事の話に戻ってますよ。」
話の流れを追っているドリーが言った。
「あらあら、うっかりですね。次は、休日の過ごし方でしたね。」
「昨日はカースンで少し歩き回ってたけど、ネゲイでは、休日は、次に作るものを考えるとか試しに作ってみるとか、材料が集められそうな場所を探すとか、普通の日とあまり変わらないかな。物作りの中で、人と会わずにできることを主にやってる気がする。あと、ネゲイの婚約者二人と話をしてるかだな。最近は剣術もやってる。」
「婚約者と剣術ですか?。」
「私の動きはネゲイあたりでやってる剣術とは少し違うようでね。二人だけじゃなくて、ネゲイの兵士達とも一緒にやったりしてるんだ。」
「それも見てみたいです。で、婚約者の二人とはどんなことを話してます?。」
「ネゲイ近くの色々なことを教えてもらってるよ。それから、私が物作りで使ってる道具をあの二人にも使えるようにするための練習とかね。」
「それは私にも使えるようになりますか?。」
「必要なら教えるよ。ネゲイに来てもらってからになるけどね。」
結婚するなら彼女にもインプラントが必要だろうと思う。いつそれをやるかも、考えなければ。αがさっき言ってた計画の中身を、今夜にでも確認しよう。
「マコト殿の知恵にもなってる道具というのは、興味があります。」
「あまり広めすぎたら危ないものもあるから、その辺は教えすぎないようにしてるけどね。」
「危ないというのは?。」
「使い方を間違えたら怪我したりするようなものだよ。そういうのを教える場合は、教えても大丈夫な相手かよく考えないと。」
「それはそうでしょうね。でも、新しい何かを教えてもらえるような機会は、楽しみです。」
「楽しみに待てる、ということは、ハンナ殿から見て、私、マコト・ナガキ・ヤムーグは合格と考えている、ということでいいのかな?。」
「自分で選ぶことはできませんけど、さっきも言いましたけど、上出来のお相手だと感じてます。」
「私もそうだな。血筋以外のことをできるだけ聞きたかったけど、血筋以外のことで短い時間に聞ける範囲のことを聞かせてもらって、ハンナ殿は上出来のお相手だと思う。ネゲイの婚約者達がどう感じるかだけはちょっと心配するけど、陛下達のところへ戻って、今後の進め方とか、事務的な話もしないといけないな。」
一夫多妻が認められている場所で、国の最高権力者が勧める追加の嫁を拒否するだけの理由は持ち合わせていない。オレ達は立ち上がった。




