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5-17 定期検診

 ヨール王二三年五月三十日(日)。


 ネリとエンリの「定期検診」の日。オレがインプラントを入れた時のように病室で集中監視を受けながらの処置ではないので、成長速度は抑制してあり、本運用には時間がかかっている。とはいえ、エンリのインプラントは多分最終段階に来ていて、これからは禁止事項の自動制禦と、必要に応じて「使いこなす」方の練習とかになってゆくはず。それを判断するのは今日だ。ネリも一週間の変化を確認してエンリの記録とも比較し、順調ならエンリの後追いのようにインプラントの使い方を学んでいくだろう。休日が毎回検診に充てられるのはよくない。以前にネリが話してくれた「町の中を歩き回る」とかの日常が過ごせないから、彼女達のストレスにもなってしまう。


 前回の彼女たちの訪問時に約束していたが、〇七三〇Mに工房で二人と待ち合わせだ。エリスと一緒にバギーで工房に向かう。途中でまた、「休日に家にいたら家の仕事を手伝わされる」ヨークとすれ違った。予定時刻より少し早めに工房に着いて、周囲を散歩しながら待つ。草が伸びてきたな。紙とかに使えるだろうか?。


 二人のインプラントはまだそれぞれの成長度に合わせた最小限度の稼働状態だ。体調か精神状態に問題があればペンダントからアラームが出るようになっているが、アラームが出たとオレは聞いていないので、大きな問題は起きていないと思っている。


 ほぼ定刻のとおりに、二人がやってくる。久しぶりに天気は悪くなりそう。雲の色は、小雨が近いような雰囲気だ。先週もこんな感じだったか。


「おはようございます。」

「おはよう。また『道具』の具合を見させてもらうよ。何か体調が悪いとか、痛いとか、これまでと違っているところはある?。」

「特に困ったところはないですね。」

「私も、困っていることはないです。」

「それならいい。細かいところは、先週のエンリに試してもらっているように、船で確認しよう。」



 工房を出発し、ほどなく新池へ到着。バギーのままマーリン7に接舷した。エリスが係留索を投げ、待っていたアンがそれを受け取る。ハッチにはベティも出てきていた。


「今日はゴーグルは要らないと思います。そのまま入って下さい。ええと、二人ずつです。」


 その時点での立ち位置で、ベティとネリ、オレとエンリの順で船内に入ることになった。念のため、オレは自分の視界を二人と同じように「危ない物は赤表示」に切り替えておく。まずネリがハッチの中の梯子を降りていった。暫く待って、エンリとオレもエアロックに入れるようになる。


 エアロックの操作はエンリに任せた。問題なし。船内ではクララが待っていた。


「ベティ達は先にルームBに行きました。エンリは、ルームCで。私がエンリの『道具』を確認します。エンリ、部屋の場所は憶えてる?。」

「多分大丈夫です。」

「もし、間違えそうになったら教えてあげるから、先に歩いて。マコトは、その後から来て下さいな。」



 二人をそれぞれの部屋に分けたのは問診の内容が互いに影響し合わないようにするためと、状況確認に必要なタンクが各部屋に一基ずつであることによる。オレはどちらの部屋に行ってもいいが、インプラントの成長が先行しているエンリの方を見ることにしてルームCに入った。


 エンリは少し背もたれを倒した耐G椅子に座っていて、クララによる問診はもう始まっている。質問内容は先週とほぼ同じ。自分で感じた体調の変化の具合を確認するものだ。聞いている範囲では異常の兆候はナシ。正直でない回答をしたときなどに見られる心拍数の変化なども検知できず。ネリはどうだろう?。α、ネリはどう?。


『大体同じ質問をして、想定内の回答が帰ってきてるわよ。変な隠し事の気配もなくて、もうタンクに入ってもらってるわ。出てくるまで五分ほど。結果のお知らせはそのあとすぐにでも。』


 ルームCでもエンリがタンクに入ろうとしている。ネリのところに行ってみよう。



 ルームB。ネリはタンクの中で起き上がっている。


「ショー殿、具合、体調とか、変なところはない?。」

「ええ。何度聞かれても答えは同じですよ、って、なんかどこかで聞いたことあるけど、自分では初めて言いました。」


 ネリは笑いながら答えた。ベティも付け加える。


「単純な数字だけなら先週のエンリよりも『道具』の定着は早いみたいだけど、誤差の範囲です。今の時点で心配しないといけないようなものは見つかってないから安心してね。マコト、エンリの方は?。」


 αが操作しているベティがその質問をしたのは、ネリに聞かせるためのものだ。


「ショー殿より少し遅れて問診が始まったから、ショー殿より少し遅れてタンクから出てくると思うよ。今はまだタンクの中だと思う。行ってみるかい?。」

「少しマコト殿と話もしたいですけど、エンリを一人だけで置いておくのも寂しがらせるかもしれませんね。エンリは、エンリの部屋ですか?。」

「そうだよ。」

「確か、ここの二つ隣でしたよね?。」

「ああ。」

「ええと、前、ここにエンリと来たとき、私がタンクに入っている間にエンリは船の中を案内してもらったと聞いてます。ああ、でもダメですね。それをお願いしたらエンリが出てくる前には終わらない。」

「案内なら、エンリがよければもう一回同じことをやってもいいし、この前にエンリを案内できなかったところから順に回ってもいいと思うよ。今日も、案内はするだろうと思ってたし。あと、前回のエンリは余った時間で『磨き上げ』もやってる。ベティ、『磨き上げ』の準備もできてるんだろ?。」


 ベティは答える。


「ええ。大丈夫ですよ。今日も、『磨き上げ』はするだろうと思ってましたし。」


 オレの感覚からすれば日常的な清潔さを維持することに若干のオプションが付いているだけのものだ。ライブラリには医療的な消毒滅菌のほか、マッサージや垢擦りなどの方法も入っているし、所要時間も数分から数時間まで調整できる。ネリが答えた。


「ええと、それもお願いします。ええと、うーん。今!。もう、今すぐ、あのピカって光るのと、そこから身体を洗い流すのだけ、それだけならエンリもそんなに待たせないで済みますから。」

「じゃあ、ベティ。ショー殿はそういうことで。手伝いを頼むよ。先にエンリの所に行って、船内案内の話をしておくよ。」



 ルームCに入ろうとしてαに止められた。


『丁度今エンリはタンクから出てフラッシュとシャワーのために服を脱いでる最中よ。マコトは自分の部屋、ルームAで待ってるのがいいと思うわ。エンリもネリも、終わったららルームAに行かせるから。』

『そういうタイミングだったか。なら、ルームAで待つよ。』


 「磨き上げ」をするかどうかの会話を挟んでいる間にタイミングがずれてたようだ。オレは自分の部屋、ルームAに入って二人を待つことにした。



 エンリとネリは一緒に入ってきた。ネリが言う。


「マコト殿。案内のことですけど、前にエンリが見せてもらった順でお願いします。さっき二人で相談しました。」


 見てないところを優先するかと思っていたが、逆だったか。どちらでも対応はできるが。


「わかった。同じ順序で案内しよう。」


 最初は船首観測室からだ。エンリとクララも後から付いてきている。



 外が見える船首観測室だが、もう雨が降り出していて景色はよくなかった。だが足の下、水中の様子は前回と同じようにはっきりと見えている。エンリと水中メガネの話をしていたのを思い出した。あれから、ガラス用の炉の大きさなどを考え始めてはいたが、製作に手を着けることができていない。ガラスはストックもあるしウーダベーで作れるのだが、漁業関係者に普及させようと思ったらネゲイで生産できるようにした方がいい。エンリも前回の会話を思い出したようだ。


「マコト様、前回、『水の中を見やすくする』って話をしてましたけど、どうなりましたか?。」

「まだなんだ。エンリだけじゃなくてテンギ殿や似た作業がありそうな人数分がいるだろうし、壊れたときに直せるようにしておきたい。となると、ネゲイで作れるようになっていた方がいい。ネゲイでガラスを作るにはどうすればいいか、まだ考えてる途中でね。」

「一つだけでも見本があったら、どんなに便利なものか、誰が欲しがるかとか、わかりませんか?。」

「そうだろうね。で、早くガラスを作れるようになってくれって、注文が増えたらネゲイの職人が足りてない話に結びつく。ショー殿。これはショー殿からバース様あたりに伝えてもらう話かな?。」

「父も職人の数のことは気にしてますよ。で、今ノール様が来てて、マコト殿の作るものには『一位二位の方々も興味が』って話も聞いてまして、それなら、私としては職人を増やしたいならネゲイだけじゃなくてモルやカースンに工房を作るのもあるかな?、とか、多分、今の父が避けたいか、まだ早いと思っていそうなことも考えてます。」


 ノールから聞いたことから推測して、カースンはオレに始まった今の動きはネゲイだけで収まらないと考えている。バースも同じように感じてはいるだろうが、可能な限りネゲイの権益は確保するのが領主としての仕事だ。このため、ネゲイとしては生産力をネゲイに集中させたいが、カースンはカースンの国内ならばどこでも構わないと考えている。原料の調達、加工、製品の供給先など、最適解をAI達にシミュレーションさせようとしても、カースンや近傍諸国の産業や人口、資源の分布に関するデータがないので検討は進めにくい。


「誰がどこで何を欲しがっているか、それがわからないと何を作るべきか、どこで作るのがいいか、わからないからね。私は、準備を進めるよ。今は、ガラスが優先になってきてる。それ以外にもやりたいことはあるんだけどね。」

「それ以外って、紙とかですか?」

「それとペンもね。他にも、考えていることはあるんだ。例えば工房の屋根の作り方、あれはヒーチャンに教えたけど、建物の新築の用事なんか毎日はないから、同じような建物はなかなかできてないな。」

「あれもそうでしたね。」


 ヒーチャンと屋根を低く作る話をしていたときに同席していたネリが言った。


 屋根はそう毎日作るものではないから普及も遅い。少なくとも一冬、雪に耐えて見せなければ真似しようという人は出てこない妥当とも思う。セメントも放置されている。属人性のことを気にしていなければ、もうとっくに売り出していたか、池の周りを歩きやすく固めていたと思う。


「思いついているものの中でもネゲイにある道具、材料、職人だけでできそうなものから手を着けるつもりだったんだけど、思うようにはいかないな。」

「そうですね。『紙』は見せてもらいました。ペンも便利ですけど、全然前に進んでないですね。」

「作り方を教えたいとは思ってるんだけど、みんな忙しくてね。知ってると思うけど、職人が足りてない。職人の数が、何をするにしても弱点になってる。ネゲイで時間を掛けて育てるか、外から呼ぶか、職人が住んでる場所で作り始めるか。折角ここまで来たから、今の私がネゲイの外で職人に教え始めるのはネゲイによくないと思ってるんだ。外で動き始めるのは、ネゲイでの生産が安定してからにしたい。そんなことを全部考えたら、ここで今日決められるものでもないからね。」


 オレと小ニムエが各地に分散して、という体制を一瞬考えたが、やめた。長期的にマーリン7から離れると小ニムエ達は活動ができなくなる。そんな会話の中で、水中メガネは、一つだけ試作はすることになった。桶の底をガラスにしただけの簡単な物を考えている。使ってみて評判がよければ量産することになるだろうが、ガラスの製法も確立してないし、職人が足りない点も含めて検討事項だ。


 この部屋で水の中の様子が見えることにはネリも興味を示した。水上の風景は雨で視界も悪いから尚更だと思う。その他、星の角度を測定する器具類をざっと紹介し、前回エンリを案内した順路を辿って操縦室へ。前回同様に触られたくないものばかりの真っ赤な視界になってしまってネリも手を出そうとはしない。


「そいうえば、なんで赤なんですか?。」


 エンリが聞いた。地球文化圏的な発想で「危険=赤」としていたが、ここではそんな習慣はなかったのか。


「私がいたところでは危ないものを赤で表すことが多かったんだ。ここでは、そうじゃないんだね。危ないって表す色や形なんかはあるのかな?。」


 エンリもネリも、そういうものに心当たりはなかった。ベンジーの五角形や領主館の紋章など、何かを表す形はあるが、危険を示すものはない。色も、紋章と同じように特定の何かを表徴することがあるが、危険を意味して使われているものはないとのことだった。染料の種類もそれほど多くさそうだし、特定のわかりやすい色で危険を表してしまうと、その色は他の用途で使いにくくなるから困るかもしれない。


「ネゲイやカースンでは、色の使いかたで危険を表すものはないってことだね。また一つ、ここのことを知ることができたよ。」



 操縦室の次はセカンド・クォータに抜けた。各個人の部屋はもう案内する必要はないので、談話室兼食堂だ。前回は軽食を出しただけだった。ネリに合成調理器の使い方を教えて、各人にお茶を出してもらう。テーブルでエンリが聞いた。


「前もちょっと気になったんでしけど、この模様は何ですか?。色んな種類がありますよね。さっきの『赤』の話じゃないですけど、何かの紋章ですか?。誰の席だとか?。」

「ちょっと違うな。座る人の紋章じゃあないよ。これは遊び、主に、何人かで暇つぶしをするための模様だよ。天板の裏、右手のあたりに抽出があるだろ?。開けてみて。」


 「遊び?」「暇つぶし?」と不思議そうな顔をしながら二人は右手で天板の裏を探る。エンリの席の抽出からは白い碁石、隣のネリは裏表が白黒になっている丸い駒を取り出した。ネリの前の模様はリバーシだ。


「ショー殿の前にあるのは簡単な説明ですぐに二人ともできるようになると思う。エンリの前のヤツは、ちょっと難しくて時間もかかる。試してみたいなら、他のテーブルにも色々あるけどショー殿の前のヤツがいいかな。やってみるかい?。」

「簡単なものなら試してみたいです。」

「私もお願いします。」


 先週、変に時間が余るようなら、と考えていた計画の一つでもある。チェスの駒を彫るのはとても面倒だが、リバーシぐらいなら複製も、イヤ、また職人が足りなくなるようなことを考えかけている。


「もし、二人がこれを気に入っても、外で話すのはナシで。多分、また職人が足りない話に結びつくから。」



 基本ルールの説明はすぐに終わって、オレは二人の対戦を見ている。初戦の中盤で、多分偶然、ネリが隅を押さえた。ネリが押さえた隅を暫く見ていたエンリが言った。


「ここ、取られたらダメだったんですね。」

「不公平になるからヒントは出さないよ。」


 そんな会話のせいでネリも気付いた。


「あーなるほど。そういうことですね。そうすると、ここを取る、取られないようにするには……。」

「不公平になるからヒントは出さないよ。」



 初戦はネリが勝った。


「ここには他にも色々あるけど、ネゲイやカースンででも、似たようなものはある?。机の上で、頭を使って、何かを置いたり動かしたりして勝ち負けを決めるもの。」


 多分何かはあると思うが、今までに「虫」で見てきた場面にそういうものはなかった。ヤダが田舎過ぎるのと、領主館の中でも意思決定が行われる部屋ばかり見てきているのも理由の一つだと思う。歓楽街のような場所ならカジノとかもあるかもしれない。ネゲイの社会と接する機会は増えたが、仕事の話が中心で、娯楽の話題は少なかったし。


 オレの質問にはネリが答えた。


「多分、エンティ王妃のおかげで禁止されたものの中にこんなのがあったと思います。私が生まれる前に禁止されてるので、詳しいことは知らないんですけど、王妃が勝負にとても強い人を雇ってて、勝ち負けに金貨や家なんかの財産を賭けさせて、そんな話です。」


 賭博が問題になったので賭博またはその道具が禁止されたということか。そんな経緯なら、イカサマとかもあったんだろうな。


「今、それと同じじゃないかもしれませんが、多分、似た感じのことをやって、とても面白いと思いました。やりすぎると、禁止にしたくなるのもわかりますね。それで今は、禁止されてますからこういうものを職人が作ってない、店で売られてないっていうだけで、古い倉庫とかを探したら残ってるかもしれません。」


 田舎の娘と町の箱入り娘だから、そういう「悪徳」とされているものには縁のない生活をしてきたのもあるかもしれない。


「昔はあったけど今は禁止されてるなら、これは表には出さない方がいいな。」

「そう思います。私とエンリとマコト殿と、クララさん達だけの秘密ですよ。」

「外に出さないなら、職人が足りなくなる話に結びつかないようで安心したけど、じゃあこれは、二人とも、外では話さないでくれよ。」

「わかりました。」


 二人は素直に答える。エンティ王妃か。時代は聞いてないけど昔のカースンの悪妃だった……。一つ疑問が浮かんだ。


「エンティ王妃以来禁止ということは、それはカースンの中の話かな?。ムラウーとかトヨンとか、カースンの外では?。」


「ごめんなさい。わからないです。そういうものだと思ってましたから。でもマコト殿がいうように、カースンの外ならみんなやってるのかもしれませんね。」


 この二人からはこれ以上の情報は出てこなさそうだ。娯楽に関する文化的な情報なのだが、尋ねるなら、大人、ゴールかバース、或いはヨーサやドーラあたりか?。もっと庶民的に、ノルンとか?。今ならカースンの中枢の情報も知っているノールも来ている。だがオレが「悪徳」に関心を持っているという情報を中枢に与えるのも、影響が予想しにくい。娯楽。余暇の過ごし方。前にネリに聞いたことがあったな。


「ショー殿は前に『休みの日は町の様子を見て歩き回ったり』とか教えてくれたことがあったけど、エンリは休みの日はどうしてた?。」

「羊の仕事をしてた頃は休みの日なんかなかったですよ。毎日ちょっとずつ休んでる感じでした。ネゲイに来てからは町の地理を覚えるために歩き回ったり、この何回かの休みは船に来てますけど。」

「ヤダで、仕事の合間、羊の世話や自分の食事以外の、休んでる時は何をしてた?。」

「何もしてません。休むって、そういうことじゃないですか?。そんな時間があったかも、よくわかりません。何もしてないから、何をしてたって聞かれても、答えにくいですね。」


 聞き方が悪かったか。余暇や娯楽の概念が希薄なのかもしれない。そんな社会に新しい娯楽を持ち込むのは、加減を間違えたら生産性の面などで大惨事になりそうだ。扱いは、慎重に。これを広めるとしたら、カースンの外に手が出るようになってから、ということにしよう。それにしても、そういうものを一切禁止してしまったら、例えば商売でも修行でも、国外に出たカースンの人間が、免疫なしにそんなゲームに取り憑かれたりしたら困るだろうに。


 「悪徳」とはいえ、ここでしかできないことなので、エンリとネリは二度目のリバーシに挑み、今度はエンリが勝った。別のものを試すことを提案したが、「これ以上はよくない」と二人に断られた。悪徳に染まるのを恐れているのかもしれない。昼の軽食を経て一三〇〇Mを過ぎた頃に二人をバギーで領主館に送り届ける。雨はまだ続いていた。マーリン7に戻って、αに検診の結果を聞く。


「エンリは、大丈夫よ。工場から出荷されたばかりのAIみたいに、基本機能は備わってるけどまだ何もやらせてない、っていう感じにになってるわ。禁止事項のことも常時監視で私が介入するのではなくて、インプラントからの自律制禦で止められるよう変えたわ。ついでに、リバーシみたいな娯楽に対する欲求も抑えられるけど、性格全般に影響が出る可能性もあるから、それはやってません。」

「リバーシの記憶だけ外にいる時は封印……ダメだな。記憶の欠落に気付いたら面倒の元になるかもしれない。」

「ええ。その方法はお勧めしません。」

「ネリの進捗は?。」

「想定範囲ね。来週の休みか、もっと早くでも、状態を確認できたら、今のエンリと同じように禁止事項の運用を変えられると思う。」

「あまり二人に差を付けたくないしな。次回でネリの状態が確認できたら、二人合わせてもう少しマーリン7の開示事項を増やせるな。」

「ウーダベーのことも?。」

「それについて話をするのはまだエンリだけ。エンリがウーダベーで今以上のことをできるようになったら生産性のオプションも増えるけど、時期や内容はもう少し考えよう。」


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