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4-15 CL(墜落暦)一一五日(2):デルタ(2)

 一五〇〇Mを過ぎてαが言った。


「マコト、ゴールのところに人が来たわ。領主が明日戻ってくるって先触れよ。ゴールは、明日の午後にあなたを呼ぶように、今からここへ誰か送るって言ってる。デルタの準備を、一時全部止めた方がいいわ。」


 お義父様(予定)のご帰還か。オレも「会いたい」とか言ってしまってるし、それで天気も悪くなるのにゴールが気を遣ったのか。タイミングは、悪いな。しかし、これでデルタの分離は今夜暗くなってからにするしかなくなった。


「状況了解。デルタの準備を一時中断。移動中の『虫』は予定位置まで着いたらその場で待機。ネゲイからの使いを待とう。」



 徒歩ならば、ネゲイからの使者が到着するのは一六〇〇Mを過ぎる頃になる。そこで簡単な用件の伝達のあと、徒歩で戻ってもネゲイへの帰着は一八〇〇M前だが、天候がやや不安だ。と思っていたら、馬で使者が近づいて来ると報告があった。ネゲイからここまでの道のうち、池に近い四分の一ほどの区間は道にぬかるみも多く、馬を走らせるには適していないと聞いていて、事実、今まで池まで誰かが馬で来たことはなかった。天候を考えて行程を早くしようとしているのか。デルタ分離のために池の中央附近にいたマーリン7を、また岸に戻す。今度は上陸させよう。船体の下で雨宿りもできる。椅子とテーブル、ダイアナとお茶セット。今日のお茶は、今朝テコーが届けくれた中で一番「微量物質」が多かった野菜から作った謎茶ですのよ。



 一五四五M。流石に馬は徒歩より早い。使者はゴールだった。誰を送るかという段になって、「天気が悪くなりそうだから馬で」「あそこに馬で行くのはコツが要りそう」「誰なら行ける?」「私行きますよ」「ネリ、お前はダメだそのまま泊まりかねない」「そんなことないですよ」「セルーなら行けるか?。」「用件を書いていただいてても、字を読むのにちょっと自信がないです。」「仕方ない。儂が行く。」というような会話が、ゴールに付けた「虫」に拾われていた。文官は馬が不得手で、兵士は細かな用件が不得手。どちらもこなせるとなると、人材は限られてしまうようだ。


「ゴール殿、この天気で来られるとは、急ぎの用件か?。」

「ああ。この天気だから早く帰りたいが、マコト殿には早く伝えておこうと思ってな。先触れが入った。明日、三の鐘までには、我が主、バース・ネゲイ様が戻られる。ネリの父だ。」

「それは私も会わねばならない人だな。会わせていただけるのか?。」

「ああ。上手く話が進めばマコト殿の義理の父ともなられる方だからな。だから明日、四の鐘の頃、領主館まで来てくれないか。蠟板のほか、商売になりそうなものを幾つか用意しておいて欲しい。あのペンもな。」

「わかった。私一人で伺おう。」

「この前マコト殿が泊まった時も思ったが、あまり『三つの名』持ちが連れもなしに歩き回るものではないと思うぞ。」

「そういうものなのか。じゃあ、誰か一人、連れて行こうか。」

「その方がいい。一応、『正式な挨拶』だからな。形は整えておこう。明日ここへ来る予定だった当番はネリとヨークだったが、ネリは外して別の者を回す。四の鐘に間に合うよう、全員で領主館に来てくれ。それから、話の流れ次第だが、また客室に泊まってもらうかもしれん。その場合、マコト殿の連れのお嬢さんにも部屋を用意する。そのつもりで来てくれ。」


 オレはともかく、宴席になりそうな外出で小ニムエを同伴するのは、食事の問題がある。「お茶会」程度なら問題ないのだが。


『マコト。ベティとクララはもう固形物摂取用のキットを組み込んだわ。あと、暗いとはいえサウナに呼ばれる可能性もあるから、胴体部分の外皮も今から貼っておきます。デルタのことをやりながらでも、どちらか一体なら、明日の午前中までに終わらせられる。』

『ちょっとローテーションが狂うけど、稼働累積時間の短い方で、外皮の処置を頼む。』

『了解。始めておくわ。』


「ゴール殿。明日は、先日の契約の蠟板二四組も持って行こう。あと、まだ指輪がない。これは領主殿に失礼にあたらないだろうか?。」

「なくても構わないが、あった方がいいだろうな。指輪は、注文済みだとは言ってたな。できるのはいつだった?。」

「予定では明後日だ。その時はネゲイに行くから、ハイカクも含めて蠟板の値段の話をしようということになっていた。」

「あの話か。わかった。今日ネゲイに戻ったらハイカクのところに行って進捗を聞く。あとちょっとというぐらいなら、明日の三の鐘までに仕上げるよう言っておく。ハイカクのところで聞いた話は明日の当番に伝えておくから、指輪の準備ができてるようなら領主館の前にハイカクの店に行ってくれ。当番に案内させるから。あと、明後日のハイカク達との話は確か二の鐘だったな。領主館への泊まりは決まりだな。」

「ああ。色々ありがとう。明日は、蠟板や他のものを持って、ハイカクの店に寄ってから四の鐘の頃に領主館に行く。」

「よし。それで頼む。雨が強くなる前に帰る。今の季節の雨はそんなに長く続かないから、明日は晴れるだろう。また明日。」


 謎茶を出すタイミングもなく、ゴールは帰っていった。後で飲んでみたら、単なる野菜の茹で汁の味しかしなかった。出さなくて正解だ。



 デルタの準備もあるが、その前に明日の訪問の手順をαと再確認だ。相談しながら背嚢の中身を確認したりするうちに日没も近くなるだろう。


 まず、お約束の品、蠟板二四組。流石に数が多いので、嵩張る。背嚢への収まりも悪い。紐でまとめて布で包むか?。紙は、359-1に来てから見ていなかったし、在庫に限りがある消耗品でもあるので意図的に使うのを避けていたが、布も在庫に限りがある消耗品だ。結局、今まで何回か使っている汎用の折り畳みコンテナに入れた。多少の隙間は、テコーのところから届いた食料品の保護材として詰められていた藁を押し込む。徒歩でネゲイまで運ぶのは面倒だが、明日にはバギーも使えるようになっているはず。バギーを人目のあるところで使い始めるのはもう少し待つかとも思っていたが、便利なものは仕方がない。明日は明るくなったらすぐにテストしよう。使いにくいようなら、蠟板は背嚢に詰め直さなければならない。


 方位磁針。これは嵩張らないので、求められれば贈るつもりで幾つか背嚢に入れておく。


 万年筆は、「贈り物」の中にパーカーの初期型のレプリカがあった。ペン先をインクに浸してピストンで軸内にインクを吸い上げるタイプのヤツだ。ライブラリには構造の図解もあったので、悩んだが紙に一枚印字する。現物は一本しかなかったので使わず、新たに領主とその家族用に五本(バース、ヨーサ、タタンとドーラ、ネリ)、ゴールに一本、ハイカクか誰か、職人が分解して構造を調べるための一本と、合計七本を色違い、男女別も考えて太さを変えて、船内で作っておくことにした。自分用にはボールペンを常備している。


 服装はこの前と同じでいいだろうが、山刀の代わりにゴール達が使っていたのとよく似た片手幅広剣を用意した。個人的な好みとしては少し反りのある方が好きなのだが、ヤダでもネゲイでも、直剣しか見たことがなかったので、悪目立ちしそうな曲剣は避けている。


 ひととおりを並べてみて検分。αの提案で、泡ワインも追加。保冷コンテナ一個分六本を詰める。隙間は角氷で埋めた。徒歩では運べないが、明日ならバギーが使えるようになっているはず。「義父様」と初めて会うのにこれはよい品だろう。


 あとは、まあ、一泊二日なら、この程度か。バギーの準備が不調ならオレと随行の小ニムエの背嚢二個で運べる量に戻さなければならないが。



 で、ようやく中断していたデルタの分離に戻った。一八〇〇M。待たせたな。「虫」達諸君。工程表は、二度の修正が入ったので三段書きに変わっている。


 まずは、経路上近辺の人影の確認。日没が近くて小雨も降っている。誰もが家に帰る時間だ。夜行性の動物を狩る猟師とかがいれば活動を開始する頃だろうが、この天気なら今日の仕事はあきらめるだろう。ムラウーに続く街道で見つけた隊商も、αが予想した野営地で夕食を始めている。現時点で、あちこちに配置した「虫」からの情報で想定外のものは見当たらず。


「デルタを出そう。」

「わかったわ。始めるわね。」


 マーリン7の斥力場を全て解除。浮力が減り、船体全体が五十センチほど沈む。池全体の水面が大きく波打つ。この段階で、意外に大きな音を出してしまっている。もう少し暗くなるのを待った方がよかったか?。しかし、手早く終わらせるのも手段の一つだ。完全に暗くなるまでの時間も長くない。


 中央船倉の扉ロックが外れたことを示す警告灯が点灯した。船倉内のカメラからの画像は、光源がないので暗いまま。扉の開度の数字が徐々に上昇し始める。αが状態を報告し始める。


「デルタ起動しました。」

「デルタの各部システムをチェック中」

「マーリン7の底部アンテナユニット展開」」

「中央船倉扉全開放」


 デルタの状況表示のモニタで、数字が徐々に緑に変わっていく。やがて、


「ニムエδ起動しました。」


 と、αβγの誰とも違う女の声が響いた。


「δ、こちらマコト・ナガキ・ヤムーグだ。これからよろしく。」

「こちらこそよろしくお願います。ミスタ・ヤムーグ。」

「ここまでの状況は把握しているか?。」

「このあとはバギーを下ろし、北に向けて離陸します。予定のコースはセットされています。明日は午後に領主館で領主と挨拶する予定が入っています。」

「OK。知っておくべきことは入っているようだ。じゃあ、分離しよう。」


 デルタを保持しているアームが伸ばされる。船倉内カメラは増光モードでぼやけた映像を届ける。照明を点けるのは、誰かに気づかれる可能性があるから避けている。


 アームが伸びきり、先端のクランプが開いた。が、変化がない。αが言う。


「軌道上でやるのと違って、ちょっと傾いてるみたいね。少し揺すってみるわ。」


 マーリン7の斥力場負荷モニタで船首下が一瞬赤くなる。船体が揺れるとクランプが外れ、デルタはゆっくり沈み始めた。増光された映像だが、デルタの姿は次第に見えにくくなる。


「δです。着底しました。垂直尾翼の展開を完了。これから浮上しますので、アルファの底面保護をお願いします。」

「αよりδ、底部アンテナユニットからビーコンを出し続けるから、それが途切れたら五分後に動き出して。」

「了解です。ビーコン途絶後五分で浮上を開始します。」


 アームが戻され、デルタを出した後の中央船倉扉がゆっくりと閉じ、やがて扉ロックの警告灯が緑に戻った。次に底部アンテナが収容される。デルタの中ではビーコン途絶を確認して五分を数え始めているだろう。アンテナが戻ったら、底面の斥力場を復活させる。斥力場の展開にあわせて浮力を得た船体は、デルタ分離前とほぼ同じ程度の喫水に戻った。デルタが動き始めるまで、あと二分ほどか。


「当たり前だけど質量中心がちょっとずれたわね。傾いてる。船倉に水も入っちゃったし。デルタが離陸したら上陸して、船倉の水を捨てるわ。トリミングの調整はそのあとね。」

「明日の朝までに、同じレベルの見た目に戻すんだな。」

「そのとおりよ。」


 αと会話していると、上空の「虫」からの映像でデルタが浮上してくるのが見えた。アルファの右前方、二時方向、距離約二十メートル。船体全体を斥力場で包み、透明なボールの中に浮かんでいるような姿だ。レーザーで信号が入る。


「デルタ浮上しました。浮力が小さいのでこのまま上陸し、着陸脚を展開します。」


 透明なボールの中のデルタは斥力場を細かく調整しているのだろう、徐々に水上で動き出し、アルファがいつも上陸しているあたりに上陸した。船体がゆっくり降下する、が地面まで残り三十センチほどになったところでまた二メートルほどまで上昇した。そのまま船体は動かず、着陸脚が伸ばされてゆく。着陸脚が伸びきると、船体全体がまた降下し、着地、制止した。


「着地。斥力場も制止しました。バギーを出せます。ミスタ・ヤムーグ、上陸していただけますか?。」


 δの口調は、しばらく聞いていたが、妙に固い。まあ、気になるようなら変えてもらおう。今は、離陸準備だ。


 アルファを接岸させてオレは上陸する。晴れていればまだ少し明るい頃かもしれないが、小雨曇天なので、情報ゴーグルで増光した視界を確保。これは音声会話のためのセットでもある。周囲に誰もいないことは確認済みなので久しぶりに顔のない小ニムエ二体も一緒に出た。二体はそれぞれバギーに載せるための水素カートリッジとバッテリーを持たせた。バギーの係留用に用意したロープはオレの肩にかかっている。オレがデルタの船体に近づくと、下部ハッチが開き、水が流れ出る。船体内にバラストとして入れられていた蒸留水を排出しているのだろう。結構な量だ。勢いのある水の流れは一分ほど続き、水量が少なくなったところで四隅をワイヤで吊られたバギーが下降してきた。タイヤが接地し、ワイヤが少し緩む。オレはデルタの底面で頭を打たないように気を付けながら車体に近づく。まず、肩にかけていたロープを座席に載せ、次に車体の回りを一周してワイヤ先端のフックを外す。その間に小ニムエ達も荷物を一旦座席に置いた。


「ワイヤを戻してくれ。戻したらハッチも閉鎖。」


 ワイヤが引き込まれ、折りたたまれていたハッチも伸ばされ、閉じる。オレは荷台の床にあるハンドルを回して床板のロックを解除。小ニムエ達に手伝ってもらいながら床板を持ち上げた。目視点検。水滴などは付いていない。オレが床板を斜めに支えている間に小ニムエ達は水素カートリッジとバッテリーを所定の位置に取り付けてそれぞれクランプで固定する。水素カートリッジを取り付けた時、機械式の流量計の針が一瞬動いてゼロに戻った。バッテリーチェッカーのランプは緑色に光っている。ここまで正常。床板を下ろし、またハンドルを回して床板が固定されたことを確かめる。次は反応炉の起動だ。オレは運転席に乗り込む。


 手順を間違えた。運転席から降りてシートの座面を剥がす。その下に隠れていたのはブレーカだ。バッテリーから通じているものと、融合炉に附属している発電コイルから通じているものの二系統がある。オレは両方のブレーカを接続する。改めて座面を取り付けて運転席に座り、メインスイッチを入れる。計器類に明かりが灯った。パネル類に電源は通じているがまだ何も表示していない。数秒後、計器板に状態表示が現れる。速度や現在位置などの通常使用中に必要な項目名称が並ぶ中、まださっき取り付けたばかりのバッテリーしかエネルギー源がないので、「反応炉停止中」という文字が赤で点滅している。事前にαと打ち合わせしていた手順では、今は反応炉はそのまま、バッテリーだけで動かす。小型とはいえ、反応炉が定格で動くようになるには小一時間ほどかかるからだ。操作パネルから「バッテリー駆動」を選ぶ。駆動系の電源をバッテリーに切り替えるために継電器の作動音が幾つか響き、駆動系の状態表示はバッテリーによる移動が可能になったことを示す。


 これでやっと動ける。斥力場で滑るか、タイヤで移動するか。今はデルタの着陸脚に囲まれているから、細かい動きのやりにくい斥力場よりもタイヤだろう。バッテリーで動いている今は電力消費も少ない方がいい。セレクタを「車輪」にセット。ギアはニュートラル。ブレーキを外す。動かないか。少し傾いているから後進するかと思ったが。


 ブレーキを踏み、モーターのスイッチを入れる。周波数が安定して定格まで回転数が上がったら、クラッチも踏んでギアを後退に。ブレーキを緩め、クラッチも少し戻す。車体がゆっくり後退し、デルタの外に出たところでギアを抜いてブレーキを踏んだ。訓練以来だが、憶えているもんだな。それともインプラントか?。盗難防止のためとはいえ、五MTなどという駆動方式を選んだヤツは、きっとマニアだ。


「α、デルタの予定経路近辺の人影は?。」

「まだないわ。もうない、と言うべきかしら。」

「雲の分布。」

「ムラウー方面は稜線を超えてもまだ十キロ以上は曇ってる。」

「じゃあ、行けるな。」

「行けるわ。」

「δ、セルフチェックとか、どんな具合かな?。行けるか?。」

「雲の分布、経路近辺の人影、航路情報、など、再確認しました。ミスタ・ヤムーグ、バギーとあなたの位置は、デルタが動き出した際に主斥力場の反動を受ける可能性があります。もう少し、離れていただけますか?。」


 うっかりしていた。デルタが上陸、停止した場所から、バギーは真後ろに進んだだけで軸線から離れていない。アルファを見ると、既に船体は軸線から離れた位置に移動している。


「すまん。デルタの軸線から離れよう。」


 オレはバギーに乗り込み、水際まで後退。次いで右にハンドルを切りながら前進してデルタの横に並んで止まった。改めてバギー、アルファ、デルタの位置を確認する。OK、デルタの軸線に障害なし。


「δ、集めた情報で、自分のタイミングで出発してよし。」


「了解。最終確認中。着陸脚収納。斥力場によるホバリングモード、次いで、主斥力場、出力、毎秒〇.五メートルから、方位三五二へ進路修正。推力順次増大。」


 デルタのアナウンスは淡々と流れる。機体は湿原上を少し滑ってから谷の上流へ向きを変え、加速する。肉眼ではすぐに追えなくなったが、ゴーグルには位置や高度などの情報が流れ続けている。


 そのまま数分ほど、ゴーグルに表示された地図上でデルタの位置を追う。予定経路の線を、実際の航跡が辿る。谷筋なので変な風もあるだろう。時々予定線と航跡が外れるが、誤差表示は多くても十メートル以内。優秀だ。やがて航跡がムラウーとの境界である稜線に達したところで、γの声が聞こえた。


「デルタはムラウーに入りました。『虫』の配置はここまでなので、以後の観測は私が引き継ぎます。デルタのビーコンも正常に受信できています。」

「γ、あとの追跡は頼む。異常があったたすぐに教えてくれ。α、こっちは船体の排水とバギーの係留だ。まず、上陸だな。」

「ええ。上陸して排水して、扉に変なものを挟んでないか確認して、また池に戻って、トリムを直して、それから係留よ。少なくとも三十分はかかるから、マコト、あなたはバギーの反応炉を使えるようにしてて。駆動系の電源を反応炉に切り替えたら小ニムエを乗せて水陸ともに基本的な動作確認をさせるわ。」



 デルタとバギーの一連の作業が終わり、マーリン7が池の中央に戻ったあとはまた「火」の実験を少々。小雨だが、火は着かなくても温度情報が観測できる。αは結構な量のチェックリストを用意しているが、発現できる回数は限られていて少しずつしか確認項目は埋まらない。気長にやるしかないか。


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