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陰キャの陽キャロールプレイ  作者: Aみんみん
第一章 準備は入念に
1/5

他の人より圧倒的優位

どうも、陰キャです。陰キャっていうのは、中学~高校のあだ名です。別に、女子に陰キャくぅ〜ん?みたいに語尾に犬の鳴き声みたいなのをつけて、エロい展開になったことなんてありません。普通に女子にはまず呼ばれませんでした。呼ばれても苗字の君付けでした。



あ、別に虐められてたとかそういうのじゃないですよ。あくまで、弄りとして僕のことを陰キャと男子は呼んでくれてたに違いありません。クラスで馴染めなかった僕のことを少しでも仲良くできるようにの配慮でしょう。ありがたや〜ありがたや〜。



えーと、ちょっと前置きが長くなりすぎてしまったかもしれません。なので、今から僕の行動指針を教えますね。僕は彼女が欲しいので、大学では陽キャになります。これが、これから始まるであろう青春の物語の根幹をなすものです。大学は遠い所に行くので、多分地元の知り合いはいません。だから、僕が陽キャになってるところを見られて恥をかくという展開がないのです。これで心置き無く陽キャを演じることが出来ます。



え?そんな恥ずかしいこと大学生活でしない方がいいって?冗談はよしてください。大学は自分から行かないと恋なんて始まらないと言います。恥ずかしがって、何もしない方が愚の骨頂ですよねw僕は恥ずかしがって陽キャになれないような奴とは違います。恥を捨て、陽キャになり、彼女を作る勝ち組になるのです。




さて、第1志望校試験日当日がやってきました。何?どうして試験から始まるんだって?なんで大学生活からじゃないのかって?それは貴方が勝手に勘違いしてただけでしょ?大学生活は入試から始まっているのです。でも、まだ髪を黄色やピンクには染めたりしていません。一応受験生ですから。



試験から始まった理由はもちろんあります。それは、大学に入るであろう人々がたくさんいるからです。大学に入る前に彼女、少なくとも友達を作れれば、目標達成直前まで近ずけるし、目標の基盤となります。僕は先の見れる男ですから。このくらいの未来を予測した行動は余裕なのです。


ん?入試で友達作るのは無理だろって?ふふん。普通ならそうかも知れません。だが、僕には秘策があるのですよ。僕、予備校に通ってたんですが、その予備校講師の1人が僕たちに教えてくれたことです。


「多分、試験本番は相当緊張すると思う。そんな時は、ぴょんぴょんしてみるのも手かもしれない。俺の教え子にとある超難関国公立に合格した子達がいたんだがな、俺のアドバイスを覚えててくれて、みんなでぴょんぴょんしてくれてたんだ。1人がぴょんぴょんしてたら、どんどん人が集まってきて、みんなぴょんぴょんし始めたらしい。」


〜ぴょんぴょんの回想〜


「やべ、緊張するっしょ。これあの先生直伝のぴょんぴょんするしかないっしょ」


ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん。


「おい、お前なにぴょんぴょんしてんだ?」

「緊張をほぐすためのぴょんぴょんっしょ」

「もしかして、あの先生の教え子か?」

「そうだっしょ!」

「なら、俺もぴょんぴょんさせてもらうぜ!!」


ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん


「もしかして、あの先生の生徒さんですか?わたくしもぴょんぴょんしとうございます」

「もちろんしょ!」

「誰も拒むものは居ない」


ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん


「おい、試験監督の前でそんな事をやっていいと思ってるのか?俺も昔やってたからなぴょんぴょんしたくなっちまうじゃねぇか」


ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん


「てな感じだ。このぴょんぴょんのおかげで、ぴょんぴょんした人達は全員合格したって訳だ。どうだ?みんなも当日ぴょんぴょんしたくなってきたか?」


この話を要約するとこうです。ぴょんぴょんすると合格するし、友達もできるし、彼女もできるってことです。みんな、まじかって顔してますね。そりゃ驚きますよね。もっと早くに知ってれば人生が変われてたかもしれない。ぴょんぴょんしてればあの大学に合格出来たかもしれない。そんな後悔も聞こえてきます。



今、試験が始まる30分前です。流石に試験教室内でぴょんぴょんするのは頭のおかしい奴なので、他のところでぴょんぴょんするしかないでしょう。てか、あの人たちは何処でぴょんぴょんしてたのでしょうか?トイレという訳ではないはずです。女子がいましたから。他の教室って可能性もありますが、だとしたらなんでそんな教室に人が集まったのでしょうか?



まとめると、場所に必要な条件は以下の通りになります。複数人がぴょんぴょんできるくらい広くあること、女子も参加可能なこと、他の人に迷惑がかからないことです。そんな場所あるのでしょうか。これは僕のミスですね。場所まで講師に尋ねとくべきでした。


あ、気づいちゃいました。これ叙述トリックってやつですね。さっきから部屋部屋言ってましたが、廊下の可能性があるじゃないですか。廊下でぴょんぴょんすれば、迷惑を被る人は少ないし、広いし、女子も来れます。



結論が出ましたね。廊下でぴょんぴょんすればいいってことです。思い立ったが吉日、廊下に行ってぴょんぴょんし始めましょう。


ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん


これであの教師の授業を受けたことのある人間は、僕のぴょんぴょんを見てるだけでぴょんぴょんしたくてたまらなくなってるでしょう。さぁ、来い!友達になれる子来い!彼女候補来い!


今三分が経ちました。もう辞めるべきなのでしょうか?僕の前を通ってく受験生達が変な目をしてたり、忌避の目をしてたり、強いては怒りの目をしてました。三分やってただけで心細いです。あの「〜っしょ!」とか言ってた人はどれくらいぴょんぴょんしてたんでしょうか。


だけど、諦めるにはまだ早いのです。これは、僕の理想の大学生活を送るため仕方ないことなのです。


ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん


更に5分がたった頃、ついに機転は訪れました。


「君ってもしかしてあの先生の生徒?」


後ろから声がかかりました。話しかけて貰えた感激で頭がいっぱいになりそうです。けど、ここで焦っちゃダメです。一緒にぴょんぴょんするようし向けなきゃなりません。振り向きます。そして絶望します。服装から見て完全に試験監督でした。


「懐かしなそのぴょんぴょん」


もしかしてですが、ぴょんぴょん経験者でしょうか?ぴょんぴょんの秘訣について聞いてみましょう。この際、試験監督でも良いです。


「ぴょんぴょんしても人が集まらないです。どうしたらいいんですか」

「ん?緊張をほぐすためにぴょんぴょんしてるんだろ?人は集まんなくていいんじゃないか?」

「いえ、あの先生の話ではぴょんぴょんしてたら人が集まってきたらしいんです」

「あ、俺の武勇伝をまだ生徒に語ってたんだ。まじで懐かしいな。あの緊張した試験の時が。いや、俺さ、何をとち狂ったか知らないんだけど、30分ぐらいずっとぴょんぴょんしてたんだよな。緊張をほぐすため仮想の人達と一緒にぴょんぴょんしてたんだよ。」

「仮想の人?想像上では一緒にぴょんぴょんしてたってことですか?」

「そうだよ」


待ってください。先生の話と食い違います。あれはだって現実の話です。きっと違う人達の話だったのでしょう。それを確かめる有効な手段が1つ存在します。


「〜っしょ!って語尾の人だったので、多分違う人のことを先生は言ってるんだと思います」

「え、懐かし〜。その語尾。大学生活入ってから自分が恥ずかしすぎることについて気づいて辞めたんだよね」

「あ、えっと、先生はぴょんぴょんして集まってきた人全員合格したって話してました。」

「なんだそりゃ?」



あぁ良かった。どうやら全員合格したってくだりは知らないようです。てことは、きっと違う人なのでしょう。そうに決まってます。


「あの先生誇張大好きだったからな。生徒が受けるためには割と嘘もそこそこつく人だったなぁ」


誇張?


「いや、ありがとね。俺以外に実際に試験でぴょんぴょんしてる奴初めて見たよ」


初めて?


「じゃあな」


じゃあな?


じゃあな?に疑問を持つ必要はありませんでしたね。あの講師はどうやら、空想の話を現実に置き換えてたらしいです。なんて野郎なんだ。末代まで呪います。



2週間後不合格通知が届いてました。さっきまでのは下りはなんだったんでしょうか。

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