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○○王子と婚約者の私

和菓子王子と婚約者の私

掲載日:2023/12/31

応募の都合上……試行錯誤の末、本文は千文字で終わりです。

 私の婚約者は王子様。

 王位継承順位は、そこそこ低い。

 ご公務とかも、本当にそこそこ。

 殿下はいつも暇そうで、それでも時々は忙しく。


「でんかー……」

「やあ婚約者殿」


 ここは殿下と私の研究室だ。

 暇人の趣味の部屋とも言う。


「今日も婚約者の私が様子を見に来ましたが……」


 暇人なのは殿下であって、私は暇ではない。

 珍しくご多忙の殿下だけど。


「……お疲れではありませんか」

「いやまったく。仮に疲れていても、君に……って、そんなことより」


 今日は何か様子がおかしい。

 殿下が、と言うよりも、部屋の空気が違う。


「これを見てくれ。すごいだろう」


 ちょっと高そうな小皿が並んでいた。

 王族が、と言うよりも、おしゃれな貴族や商人が使いそうなやつだ。

 皿の上には。


「これは……どこかの使節のお土産ですか?」


 違和感の正体。

 テーブルを彩る珍しいお菓子。


「そうだ。『和菓子』と言うらしい」


 今この国では国際会議が開かれている。

 人手が足りないので、王族はみんな駆り出された。


「まるで美術品ですね。食べるのが勿体もったいないです」

「うむ、俺もそう思った。先方は笑っていたが」


 この口振りからすると、会談の席でも出されたのだろう。


「でも……召し上がったんですよね。お味はいかがでした?」

「うむ……」


 口籠もる。


「えっ……」


 何か問題でもあった?

 口に合わなくて……おいしくないと思ったのが顔に出ちゃった?

 外交問題……!?


「いやいや、問題はない。淡白で上品な味だった」


 良かった。外交問題にはならなかった。


「俺をなんだと思ってるんだ。ただ……」


 ほら来た。


「……自分でも作りたいと思って、レシピを聞いてきた」


 違和感の正体。

 部屋の空気が……甘い匂いがする。


「だが和菓子の再現は素人には難しく……」


 この人は……やっぱり暇なのだろうか。


「……試行錯誤の末、出来上がったのが……これだ」


 ちょっと高そうな大皿が出てきた。

 特におしゃれとかではないけど、しっかりしたやつだ。

 皿の上には。


「なんですかこれ?」


 努力の跡は見える……気がする。

 一つ一つに顔のようなものがえがかれている。

 なんだか絶妙にかわいくない。


「これは……和菓子には名前を付けることがあるらしい」

「はぁ」

「銘は……『婚約者』だ」


 正直笑った。

 不細工過ぎでしょ。


「お茶にしましょうか。まずはこちらを……食べられるんですよね?」

「あ、ああ。お茶もあるぞ。和菓子に合うお茶だ」


 お菓子とお茶なんて、まるで王子と婚約者の会話だ。

 甘い殿下。

 苦い私。

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