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ほんとの『好き』を教えて?  作者: 原田 楓香
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2.  なあなあ。

 

 「なあなあ。みなみ、定規貸して」

想太が、隣から話しかけてくる。彼は、隣の席だ。班も同じ。私は、いそいで筆箱から、定規を出して、はい、と手渡す。

「ありがとう」 想太が、少し関西弁のアクセントで言って、ニコッと笑う。

(これ……! この、関西アクセントの『ありがとう』が、めちゃくちゃいい!)

想太に会うまで、私は、関西の言葉は、芸人さんの話す言葉しか知らなかったし、それも、なんかちょっとふざけたオジさんぽい、イメージしかなかった。でも、想太が話す関西弁は、やわらかで、優しい。ふざけた感じじゃなくて、温かい。

 自分の机に向き直った想太は、一生懸命、プリントに線を引いている。 下を向いているので、長いまつげがきれいだ。



「うらやましすぎ。ずるい」

しょっちゅう、いろんな子から、そう言われる。

「そういわれましても……」

「とにかく、そのポジションを生かして、みなみ、あんたは、チョウホウカツドウにはげむのよ」

……何に励めと?

「とにかく、何でもいいから、想太くんのこと、ササイなことも、ちょっとした変化も、みんなに伝えるのよ。いい? わかった?」

ミヤちゃんが言う。彼女は、想太ファンクラブの会長のひとりだ。(会長はたくさんいる)

「わ、わかった」

 

想太には、ファンクラブが多数ある。もちろん、本人は知らない。

多分、本人の知らない非公式ファンクラブが、校内には、いくつもあると思う。

でも、表だってそれを言わないのは、想太がテレて、困った顔になりそうだということや、変に目立って、想太が、他の男子連中に、目をつけられたり、からかわれたりしてはいけない、という気づかいからのようだ。

 


 無事、必要な線を引き終えたのか、想太が、再び、ありがとう、と言って、定規を返してきた。

「ん」

短く答えたのは、教室の向こう端から、じっと見ている視線を感じたからだ。ミヤちゃんとは別のファンクラブ会長、ナナセだ。彼女は、ちょっと手ごわい。


そんな気配に、まったく気づく素振りもなく、想太がのんびり声をかけてくる。

「なあなあ。みなみ、オレ、算数の教科書忘れたみたいや。」

授業が始まったら見せてな、と言うので、私は、素直にうん、と言った。

(ごめん、ナナセ)

ナナセの目がキランと光った気がした。


ちなみに、チョウホウカツドウもササイも、なんとなく読めるけど、漢字で書くのは、……ちょっと自信ないかも。

そんなことを思っていると、隣で、想太がつぶやいた。

「あ、……国語も忘れた」


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