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30.森野村襲撃、翌日。②


「壊されたお家は思ったよりは多くなさそうだね。」

『そうじゃな。数日中には普通の生活に戻れそうじゃな。じゃが…。』


折られた桃の木を見る。村の入口も数本切られているらしい。


「今のままだと、化け物は入り放題なんだよね?」

『うむ。由々しき事態じゃ。村長に話して、吾等が暫くの結界を張ってやるかのう。』

「クロちゃん結界を張れるんだね。ん?我ら?もしかして私も?できるの?」

『出来るのじゃ。早速村長を探すかの。』

クロちゃんが千里眼を使い探している。


『すぐ近くで瓦礫の片付けをしているのじゃ、行くかの。』




「ん?お嬢ちゃん達が結界を張れるのか?それは非常に助かるが、結界は高名な術師しか張れないんじゃないのか?」


『出来るかどうか試してみれば良かろう?で…じゃ。出来たらお願いしたい事があるのじゃが。』


クロちゃんが何かを交渉しだした。すごい。神様というより生粋の商売人なのではなかろうか。

コミュ障なのに、何故か交渉事はスラスラとやってのける。コミュ障なのに。


『コミュ障は余計じゃ…。』

クロちゃんがボソリと呟く。


「もったいぶられると怖いな。かなり困ることだから、出来る範囲なら良いが…。」


クロちゃんが小さくガッツポーズをした。

これは交渉の勝ちを確信したのか?


『何、難しい事では無い。村から出てすぐにある廃寺を直して欲しいのじゃ。ついでに小さな神社で良いので建てて欲しいのじゃ。』


これは難しい事ではないのかな?

前から狙ってた事だけど…

クマさんが考え込んでいる。


「木は切ってくればタダだし、補修も建設も源太と若いもんにやらせればいいし、人件費くらいか…。」


クマさんがぶつぶつ言いながら計算している。

あの廃寺をただの修理のように言うなんて、クロちゃん、やはりやるな。

確かにほぼ崩れかけとは言え、補修は補修である。


この村の若者は素直なのかな?ずっと使いぱしりにされているような…。


「よし!いいぞ。廃寺の補修も神社の建設もやってやる。ただし、しっかりと結界が張れたのが確認してからだがな。」

『熊吾郎よ、男に二言は無いな。』

「ああ、ない。任せておけ。」


クロちゃんが大きくガッツポーズをした。


『瑶子よ、すぐに結界を張りに行くのじゃ!』


クロちゃんのテンションが静かに爆上がりしているように見えるが、気の所為であろうか?


「うん。とにかくやってみるよ!」


すぐに村の出口へと向かった。

念の為クマさんも付いてくるようだ。



二人で不動明王の真言を唱えた

『「ノウマク サンマンダ バザラダン カン、ノウマク サンマンダ バザラダン カン、ノウマク サンマンダ バザラダン カン。」』

同じく九字を切る

『「(りん)(ぴょう)(とう)(しゃ)(かい)(じん)(れつ)(ざい)(ぜん)」』


『「護符よ、邪なる者を通さぬ結界となれ。急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう」』


呪文を唱え、折れた桃の木の根元に貼り付けていく。



『此れで全てじゃな。広場の方は明日やるのじゃ。』

「クタクタだよー。結界って結構体力使うんだね。」

『実際使っているのは霊力じゃが、疲れを感じるじゃろうな。』


熊さんはおもむろに豆鬼を村の外から投げた。


「ぎゃがっある!」


変な声を上げながら、豆鬼は石だけを残し消えた。


いつの間に村の外に行って、いつの間に豆鬼を捕まえて来たのだろうか?


「よし。しっかり結界が作用しているな。これはどれ位の期間持ちそうだ?」

『劣化の具合にもよるが、5,6年は余裕で持つじゃろう。』

「それだけあれば、桃の木も育つな…。これで村人も安心できるだろう。」

『熊吾郎よ、約束忘れるでないぞ?』

「おう。もちろんだ。」



後日、クマさんを廃寺を案内した。

あまりの惨状にクマさんが男に二言を言いそうになったが、お供えしていた金貨達と、鬼人の魔石を渡した所、二言は再び引っ込んだ。


クマさんがクマってた。なんてね。

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