25.村長への報告、その影で。
「そうか、子鬼が出たか…。大鬼もいるかもしれん。六郎の事も気になるな。」
『予定を遅らせて平田から、もう少し情報を聞けぬのかの?』
「ワシももう少し情報を聞きたかったんだが、どうやら村から逃げ出してしまったようなんだよ。出口付近に住んでいる狩人から先ほど連絡が来た。時期を遅らせると全滅の理由が分からなくなってしまうかもしれんからな…。」
「平田さんいなくなっちゃったんだ…。」
状態は良くなってきていたし、やっぱり何かがあるんだろうな。
『其れは確かにどうしようもないかのう…。二人がいない間の村の守りは問題ないのかの?』
「そのために一週間調整したからな。当日は俺以外の村の実力者は守りを固めている。大鬼が出ても村に入れんはずだが、実際に隣村が全滅してるので油断は出来んな…。」
「何かあった時の避難場所は広場で合ってますか?」
平時の時に避難場所は確認しておかないと、いざという時に逃げられないよね。防災の基本だね。
「ああ、あそこは桃の木で囲んでいるからな。緊急時の鐘が鳴ったら、集まるようにも注意喚起している。」
仕事が出来るクマさんである。
『何か起きた時には全力で戻って来るのじゃぞ。』
「当たり前だ。娘や孫に何かあればワシは生きていけん。もちろん多恵子もだ。」
後ろで静に話を聞いていた多恵子さんが、まぁまぁと頬に手を当て体をフリフリしている。とても嬉しそうだ。
二人とも仲良いな。自身の両親を思い出す。お父さんもお母さんも周りが恥ずかしくなるくらい仲良かったな。
二人に会いたいなー。夢の中で会えたけど、会いたいなー。
こちらに来て少ししか経っていないが、ホームシックを感じる。母など15年近く会えていない。久し振りに母の暖かみを感じて、会いたい気持ちが強まってしまった。
なでなで
クロちゃんが頭を撫でてくれる。
『大丈夫じゃ。必ず会えるのじゃ。』
「クロちゃん、ありがとう。」
「話はそんな所だな、じゃあ明日の出発する時間だけ決めとくか?」
コウちゃんが私のホームシックでアンニュイな顔を見て、話を引き継いだ。
……………………………………
「はぁっ。はぁっ。はぁっ!」
男は走っていた。
「はぁっ。はぁっ。はぁっ!」
森の中を一心不乱に駆け続けていた。
「すまない、。すまないっ。やっぱり怖い!あれは無理だ!森野村も全滅する。死にたくない!死にたくない!はぁっ。はぁっ!」
平田は逃げ続けていた。森野村から。そして隣村を襲ったナニカから。
「はぁっ。はぁっ。はぁっ。」
ガサガサガサガサ
「ひっ!」
恐怖のあまり足が立ち竦み、その場で止まってしまった。
ガサガサガサッ
茂みから豆鬼が飛び出してきた。
「良かった。豆鬼か…。」
ガサガサッ
ぷちゅり
豆鬼がナニカに踏み潰された。
「え?」
平田はナニカを見上げた。
「あ、ああ"ぁぁぁぁぁぁ!」
ナニカは平田にゆっくりと近付いてきた。
「ロクろウクーん。ひら田ロクろウクーん。サびシイじゃぁなイか~イ。逃ゲルなンてさ~ァあー。きョウ力しテくレル約そクだろぉ~お?」
「いやだ!嫌だ!!俺達の村だけでもう十分だろ?助けて!嫌だ。」
平田はナニカに怯え、体はぶるぶると蛇に睨まれた蛙の様に一歩も動けなくなってしまった。
「サびシイことイうなヨ~。とりアエず、家ニしょウ待シテあげルから、おハナしシよウネ~。」
ガサッガサガサガサ
「ヒッ!イヤダ!イヤダ!!」
平田は頭をナニカに掴まれ、茂みへと消えて行った。




