閑話4.君を虐めるなど
ドタドタドタドタッ
「瑶子が虐められたって!!」
玉藻から内線を貰い、急いで執務室から抜けてきた。
「ええ。小学校の先生から電話が掛かってきたの。机にたくさんの落書きがあったそうよ。」
「下手人は分かっているのか?」
私からも玉藻からも黒い気が迸っている。
瑶子を虐める者など許せようか。
「言い淀んだから、きっと先生は分かっているんでしょうね。教えてくれないから、私の分体に探らせているわ。」
「どれ位で分かりそうかな?直ぐにでも虐めた子と親に、何をしたか分からせに行きたいんだけれど?」
怒りが天を衝き、町ごと破壊してしまうかもしれない。
「そうね。私も同じ気持ちだわ。直ぐに分かると思うから思い知らせてあげましょう。もうすぐ瑶子が帰って来るはずだけど、心配だわ。」
「ああ。心配すぎる。今から迎えに行って来るよ。」
「お願い。行き違いになるといけないから私は家にいるわ。分体で会うとバレちゃうだろうし…。」
「そうだね。じゃあ、行って来るよ。」
…
幼稚園で問題が一度も起きなかったから、油断してしまった。髪の色が違うから?目の色が違うから?性格は良い子過ぎる位だから関係ないだろう。
しかし、それよりもまずは元凶を絶たねばならぬ。
小学校に入りたての子が普通そんな事をするとは思わない。親達が何か吹き込んでいるのだろう。
絶対に許せない。
瑶子がトボトボと歩いていた。
「瑶子!!」
「おとうさん?どうしたの?」
「落書きされたって聞いて、心配で迎えに来たんだよ。」
走り寄って、抱き上げる。
「びっくりしたけどだいじょうぶだよ?つみをにくんでひとをにくまずだよ。」
抱き締める。
「瑶子は偉いな。それに難しい言葉を知っているね。ウチの子は天才だよ。」
抱き締める。
「いたいよ。おとうさん。」
瑶子が笑ってくれている。
「ああ、ごめんごめん。瑶子が可愛すぎて強く抱き締め過ぎちゃった。」
この笑顔をこれ以上曇らせぬよう、直ぐに対処せねばならない。
…
「ただいま。」
「ただいまー。」
タタタタタ
ガバッ
帰り着くと直ぐに玉藻が走って来て、瑶子を抱き上げた。
抱き締め、頭を撫でている。
「お帰りなさい。」
「ただいま。おかあさん!」
瑶子はとても良い笑顔をした。
ウチの子は強い子だな。
玉藻は瑶子を降ろし、手を繋いだ。
「あなた、執務室に分体がいるから話を聞いて。」
玉藻が耳元で囁いた。
「瑶子。お母さんと一緒に遊びましょ。」
「うん!あそぶー!」
「ちょっとお父さんはお仕事してくるね。」
「うん!がんばってね!」
ウチの子はやはり天使なのだろうか?
…
執務室に行き、玉藻の分体から話を聞いた。
「下手人は3人か。思っていたよりは多く無くて良かったよ。」
「今から行くの?」
「うん。そのつもりだよ。万一消しちゃった時の為に先にオババ様に相談してから行って来るよ。」
「そうね。それが良いわね。私も行きたいけど、瑶子を全力で見てあげたいから、分体も消して家にいるわ。」
「そうして欲しい。ありがとう。じゃあ、行って来るね。」
…
「ばっっかもん!!!!」
「ええ!?瑶子を虐めたんですよ!許せないじゃないですか!!」
「気持ちは分かるし、儂も許せん。だが、痛めつけるのも消すのもやり過ぎじゃ。」
「では、泣き寝入りをすると云うのですか!今はまだ大丈夫ですが、取り返しの付かない事になってしまうかもしれません!」
「戯けが。泣き寝入り等するものか。存分に思い知らせてやるわ。見ておれ、お主のやり方よりも根本から原因を取り除いてやろう。」
オババ様が邪悪に笑った。
冷静になり、ふと考えたが、瑶子を溺愛しているのはオババ様も同じ。やり過ぎだと叱られたが、もしかしたら私以上の何かを考えているのかも知れない。
「分かりました。お任せ致しますが。直ぐにご対処頂けますか?」
「当たり前じゃろう?儂を誰だと思っておる。明日には解決しておるわ。」
「それではどうぞよろしくお願いします。」
…
翌日
「えりちゃんとね、さきちゃんとね、すずちゃんがね。おとうさんのおしごとのつごうでね。おひっこししちゃったの。せんせいも、てんきん?なんだって。さびしいねー。」
「そうだね。寂しいねー。新しい先生は優しい。」
「うん!やさしいのー。」
落書きをしたのは三人の女の子だった。
やはり、親から有る事、無い事吹き込まれ、更には女の子達から人気のある男の子が瑶子を好きだったため、犯行に及んだとのことだ。
三人の親は仕事の都合で急な転勤をする事になったが、オババ様の事だからきっとそれ以上の何かがあるのだろう。
小学校の担任は一族の者から選出された。
もう二度と虐めなど起こさせない。
私は瑶子の敵になる者には容赦をするつもりは無い。
君の為なら私は修羅の道でも進んで行くよ。




