五.軍神武甕槌神②
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「オン・キリキャラ・ハラハラ・フタラン・バソツ・ソワカ、オン・キリキャラ・ハラハラ・フタラン・バソツ・ソワカ、オン・キリキャラ・ハラハラ・フタラン・バソツ・ソワカ。バザラ・ド・シャ・コク 。」
「神はこれ位では死にはせぬ。前鬼、後鬼、そのまま警戒せよ!」
「貂、横から何時でも攻撃出来るようにしていて。」
養父さん、僕、式神達で五方より、何時でも攻撃に移れる様に身構えた。
『ふむ…。こんなものか…。思っていたよりはつまらぬな。ふんっ!』
「なっ!!」
声を上げた瞬間に羂索が弾け、護符は全て燃えてしまった。手で直剣を掴むと、ずむむと胸から引き抜いた。
胸には血も流れていなければ、穴が空いた後もない。
『剣の神を剣で貫ける筈も無かろう。後6分。時間稼ぎとしてはまあまあか。』
神は直剣の刃を天に向けて置くと、その上に胡座をかいて座った。
『手加減はしてやるから死ぬなよ。』
ヒリヒリとしていた空気が更に重くなり、空気中には小さな雷が舞っている。
「来るぞ!」
武甕槌神様の身体から冷気が立ち籠め、前方へと氷柱が発生した。
ひゅんっ、ひゅんひゅんひゅん
次々と氷柱が飛んでくる。養父さんも僕も全ては躱し切れず、徐々に怪我が増えていく。
ザクッ
「貂!」
まず貂に直撃し、姿が消えて去った。僕の中に還ってきた感覚がある。消滅は免れている。
前鬼、後鬼も避けきれず、幾つも氷柱が刺さっている。
『後5分。これ位は耐えるか。それでは、どんどん行くぞ。』
次は肩や膝の辺りから何本も鞭の様にしなる刀の刃が生えてきた。
「護符よ、私と春愛希を守れ!急急如律令」
「霊符よ、刃を打ち払え!急急如律令」
ザシュッザシュッ!ザシュザシュザシュ
全ての札は呆気なく切り裂かれてしまった。
「があぁ!」
「ぐうぅ!」
刃はしなり、伸び変幻自在な動きで迫ってくる。避けようとはするが、かなりの刃を避けられず、幾つも幾つも身体が切り裂かれ、血が流れていく。歯を食いしばり耐えるが、声が漏れ出てしまう。
ザシュッ
ザシュッ
とうとう前鬼、後鬼も消え去った。
『後4分。もう終いか?諦めてしまっても良いぞ。』
「決して諦めぬ!」
養父さんが叫んだ。
僕も目に力を込め、抗う意思を伝える。
『うむうむ。そうで無くては面白くない。速度を上げるぞ。』
刃のスピードが上がった。同時に氷柱も発生し、飛んでくる。切られ、裂かれ、刺され、二人とも血だらけになり、体は氷柱が生えているみたいだ。
「トラ、亀吉、私と春愛希を守れ!急急如律令」
トラ Lv.85 上位式神 白虎
HP 4852/4852
MP 2250/2250
攻撃力 3852
守備力 1532
敏捷性 4533
霊力 785
運 1451
スキル:爪牙Lv.99、瞬脚Lv.99、剛力Lv.99、雷撃Lv.99
称号 :泰成の式神、十二神将
亀吉 Lv.80 上位式神 玄武
HP 8964/8964
MP 732/732
攻撃力 351
守備力 4232
敏捷性 156
霊力 1321
運 4859
スキル:金剛Lv.99、自己再生Lv.99、長命Lv.99、巨大化Lv.99
称号 :泰成の式神、十二神将
白虎が武甕槌神様へと襲いかかり、玄武が僕たちの前で膨れ上がり、盾となった。
『ワハハハハハハ。野良猫が飼い猫を放ちよったぞ。面白い!面白いぞ!!後3分だ!』
養父さんは受けきれるギリギリまで奥の手を隠していたようだ。僕も霊気を全力で練り直し、最後の力を振り絞る。
「グルルルルル。ガッ!」
「ハハハハハハ」
白虎が襲いかかり、直ぐに引く事を繰り返している気配を感じられるが、武甕槌神様の笑い声は止まらない。神にとっては本当に飼い猫と戯れて遊んでいる様なものなのだろう。
「ガフッ」
『後2分。猫はもう終わりか。次は亀か。』
「式神よ、神を穿て!急急如律令」
養父さんが玄武の陰から飛び出し、何体もの式神を放ち、そして、玄武の陰に戻ってくる。
「亀吉もそれ程持たぬやもしれん。春愛希はそのまま霊気を錬り上げ、一撃を放て。」
「分かりました。」
ザシュザシュザシュ
玄武から血が舞い、血の霧の様なものまで見える。
亀吉 Lv.80 上位式神 玄武
HP 535/8964
MP 265/732
攻撃力 351
守備力 4232
敏捷性 156
霊力 1321
運 4859
スキル:金剛Lv.99、自己再生Lv.99、長命Lv.99、巨大化Lv.99
称号 :泰成の式神、十二神将
再生が間に合わず、もう玄武も消えてしまう。
10分とは何と長い時間なのだろう。
ザシュッ
玄武は光の粒となって消えた。
『後1分。流石に持たぬか。もう手は残っておらぬのか?』
養父さんは式神も護符も放ち続けるが、神にとっては障害とは呼べぬ様で、養父さんも僕もボロ雑巾の様になっていく。
「があぁあぁぁぁぁ。」
「あぁぁあぁぁぁぁ。」
『倒れぬ事だけは誉めても良いが、何も無いならもう終われ。』
神は一際大きな氷柱を放とうとしている。
養父さんも僕も立っている事が奇跡の様な状態になっている。足にも手にも力は入らない。入らないが終わる訳にはいかない。将来姉さんの命に関わる事なのだ。
霊気を極限まで練り上げたまま、一歩を踏み出す。
『ほう。その状態で前に出るか。すまんな。死んでしまった時の為に、先に謝っておこう。』
氷柱が放たれた。
僕はすでにほぼ意識を失っている状態で、北谷菜切抜き、剣撃を放った。
バリバリバリッ
氷柱を打ち破れたが、そこで意識は完全に無くなってしまった。
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神は独り言を呟いた。
『0。合格だ、加護を授けよう。ふむ。二人とも意識を失っておるな。良く立っておるものだ。何だ、小僧の方は死に掛けておるではないか。まあ、それも運命か。』
はらり
髪の毛が3本落ちた。
『俺の髪を剣で切ったのか!愉快、愉快だ!!死なすには惜しい。』
神は泰成と春愛希を横たえた。春愛希の上に一本の剣を置いた。
『布都御魂と俺の髪を授けよう。これで、しばらくは延命出来よう。』
長剣である布都御魂は光輝き、短剣の長さへと変化した。
『大国主神!大国主神よ来い!!』
…
……
『こんな所に呼び出すなんて、何なのですか?家、遠いんですよ?』
『そんな事はどうでも良い。どうせ暇だろう?』
『確かに暇ですけど、呼び出されたくはないです。』
『つべこべ言わず、コイツらを癒やせ。そして、加護を与えておけ。コイツは俺に髪を剣で切りやがった。絶対面白いものが見られるぞ。』
『へぇ。それは面白そうですね。それに、何だか僕の腐れ兄弟達とも因果が繋がっているみたいですね。』
大国主神がニヤリと笑う。
二人に薬を塗りたくり、神の言葉を唱えた。
『傷よ、癒えよ。』
たちまち傷は塞がり、肌は元の状態まで戻った。
『血液までは戻ってませんから、しばらくフラつくでしょうが、もう死にはしないでしょう。』
『それで良い。じゃあ後は適当に表に放り出しといてくれ。』
『僕がですか!?まあいいですけど、神使いが荒いなぁ。国だって譲ってあげたのに…。』
大国主神が尻すぼみでぶつぶつと呟いている。
『あ”っ。何か言ったか?』
『いえ!何でもありません!!すぐ行ってきます。』
「おう。頼んだぞ。後、これも持って行け。」
布都御魂、髪の毛を小さな袋に入れ、紙とともに渡す。
『はい。それでは行ってきます!僕には何も無いんですね…。』
今度は聞こえない声の大きさで呟いた。




