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12.特訓です。


広場への道中で気付いた事が3つある。


1つ目は桃の木の配置。各家の北東側に一本、大きい家には反対の南西側にもう一本必ず植えてある。


2つ目は看破の魔眼の見える項目。見聞きした情報は全て表示される。知らない情報は一部表示される。見聞きすると随時更新される。聞いた後、職業が変わるなど内容が変わったので、表示されている内容が正確とは限らない。


3つ目は村人の強さ。


???

年齢:40歳位?

魂力:6

種族:人間

職業:村人


森野 三平太(さんぺいた)

年齢:45歳

魂力:15

種族:人間

職業:養蚕家、農家、狩人


森野 健一(けんいち)

年齢:3歳

魂力:2

種族:人間

職業:なし


森野 恵子(けいこ)

年齢:24歳

魂力:6

種族:人間

職業:農家


森野 恵美(えみ)

年齢:2歳

魂力:1

種族:人間

職業:なし


皆強い。2才が同等。3才が格上。ナニコレ。


「クロちゃん。三歳児とケンカしたら私達負けるってこと?」


『今の瑶子ならボコボコじゃな。吾は式神があれば何とか戦えるのじゃ。』


ボコボコ?

なにそれ怖い。


「よし!張り切って特訓しよう!…って。まず、何するんだっけ?」


『式神の操作じゃ。今日は最低限動す事が出来ると良いの。』


「ではでは、まずは形代を置いてっと。ここからはどうするの?」


『まずは持った状態から、霊気を練り、形代に込めていく。次に行わせたい命令を唱え、置くなり投げるなりするのじゃ。命令にも霊気を込めねばただの言葉になってしまうので注意じゃ。』


「あ、先に置くんじゃないんだね。」


形代を拾う。


『唱える命令は何でも良いが、最初は具体的な方が良いじゃろう。例えば、「形代よ立ち上がれ。」』


地面に形代を置いた。


急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう。』


形代が立ち上がった。

そのまま動かない。


「立ち上がっただけで、昨日みたいに動かないの?」


『動かぬ。とりあえず今行った事が一番簡単なやり方なのじゃ。離れた状態から念じ、命令する事も可能なのじゃ。更に極めれば式神自身で自律した動きをさせる事も出来るのじゃ。』


「なるほどー。すごいねー。さっき置いてから唱えた呪文は何?」


急急如律令きゅうきゅうにょりつりょうとは「急々に、律令のごとくせよ。」つまりは「命令を今すぐ行え。」と言う意味なのじゃ。動かす時に最後に付ける言葉という位に覚えて置けば良いのじゃ。』


「最後に急急如律令きゅうきゅうにょりつりょうと付けたら良いんだね。霊気を練って、込めるっていうのもどうやったらいいの?」


「丹田と言う、腹の辺りで霊気を循環させ強め、式神に流し、留めて行くのじゃが、口頭では難しいかも知れぬの。吾の腹の辺りを集中して見たら、気が見えぬか?」


『気は体の周りのモヤみたいなのだったよね。お腹辺り、お腹辺り…。あ!少し見えた!お腹の辺りをモヤがグルグル回ってる。』


『そうじゃ、其れじゃ。では、続いて形代へと流し込むぞ。』


お腹辺りを回るモヤがゆっくりとクロちゃんの右手へと流れて行く。そのモヤは形代へと流れ、形代からもモヤが出だした。


『此れで形代に気を固定した状態じゃ。次に命令を与える。「形代よ円を描く様に歩け。」』


形代をその場に落とした。モヤはクロちゃんから形代へと繋がっている。


急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう。』


モヤが一瞬大きくなり、形代が動き出した。グルグル円を描く様に歩いている。


『跳べ。急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう。』


円を描く様にスキップし出した。


「何だか楽しそうだね。命令は追加できるんだね。」


『うむ。命令は追加も上書きも出来るのじゃ。気の繋がりを絶っても同じ動きを続けるのじゃ。止める為には気を繋ぎ直し、「止まれ。」急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう。自身の気じゃから繋ぎ直すのは其処まで難しくはないのじゃ。』


モヤの繋がりが途切れたり、繋がったりした後、形代はその場で止まった。


「立ったままなんだね。普通の紙には戻らないの?」


『込めた気を全て回収すれば、元に戻るのじゃ。』


形代からモヤがなくなり、地面へと倒れた。


「おー。やっぱりすごいねー。私にも出来るかなー?」


パチパチパチ


『必ず出来る様になるのじゃ。試してみるのじゃ。』


「分かった。やってみせるよ!」


まずはお腹の辺りで気をグルグル回す。

あれ?私自身のモヤは見えるし、お腹辺りが少し濃くなっいるのは分かるけど、思ったように動かない。


「全然気が動かないよ。もしかして才能ない?」


『すぐに出来るものではないのじゃ。そのまま、丹田を意識して続けるのじゃ。本来は気を感じ取れるようになるまで相当な時間が必要なのじゃ。ましてや丹田で練っている気など普通の人には見えぬ。看破の魔眼のお陰で、かなり楽が出来るのじゃぞ。』


私相当楽してたみたい。


「そうなんだ。では、気を取り直して始めます!」


『頑張るのじゃ。』



何となく気が動く様になってきた。

クロちゃんが子どもに話しかけられている。

少し緊張しているみたいだ。子ども相手でも緊張するんだね。


……


緩やかに気がお腹辺りを回り出した。

クロちゃんと子ども達が遊びだした。

私の邪魔をしない様に気を遣っているみたいだ。


………


しっかりと気が回り出した。練っているとはこんな感じなんだね。

クロちゃんが式神を披露している。楽しそうだ。


……………


気を形代まで通せたが、留まってくれない。試しに命令をしてみるが、言う事を聞く気配もなく、手を話すと気が霧散する。

クロちゃんの所にどんどん子どもが集まって来ている。もしかしたら、広場にいた子が全員集まったのかもしれない。


………………


何度やっても上手くいかない。少し集中力が切れてきた。この形代に愛着でも湧くように名前を付けてみようか。我ながら良い考えだと思う。強そうな名前が良いかな。よし!


「桃太郎に決めた。君の名前は桃太郎だよ!」


やっぱり鬼退治と言えば桃太郎だよね!


ピカッ!!

形代が光に包まれた。


え?


桃太郎

年齢:0歳

魂力:1

種族:上位式神

職業:瑶子の式神

加護:瑶子


ナニコレナニコレ。

何が起きたのさ!?


「クロちゃん!クロちゃん!!クロちゃーーん!!」


『どうしたのじゃ?出来たのかの?』


クロちゃんが子ども達を引き連れやって来た。

形代は仁王立ちをしている。

当然命令などしていない。


「出来たかどうかは分からないんだけど、出来なくて名前を付けたらピカッと光って名前が付いて立ってるの!?」


『言っていることは支離滅裂じゃが、何となくは分かったのじゃ。形代に真名を付けるとはのう。一足飛びどころか、一里位飛んで行ったの。本当に面白いのじゃ。』


「面白がってる場合じゃないよ!これ大丈夫なの?勝手に仁王立ちしてるんだけど!」


『大丈夫なのじゃ。瑶子の命令は聞くし、ある程度自律して動く事も出来るのでは無いかの。』


本当に大丈夫かな。

仁王立ちで立ち続けてるし。


「桃太郎盆踊りをして、子ども達を楽しませて。」


命令してみる。

動き出した。子ども達の周りで盆踊りを始めた。

クロちゃんと遊んでいたせいか、子ども達はあまり盛り上がっていない。

式神が踊るのをやめ、走り出し、子ども達の前で側転からのバク宙、更に続けて伸身2回転バク宙半ひねりを決めた。


パチパチパチ

子ども達の拍手が湧く。


式神はそのまま踊り始め、ブレイクダンスを始めた。

頭を支店にグルグル回っている。強めの和紙だとはいえ、削れないのだろうか?


「クロちゃん。言うことは聞いているみたいだけど、これはこれで大丈夫なのかな…?」


『大丈夫なはずじゃ…。』


やっぱりちょっと不安になるよね?

私、バク宙出来ないし、ブレイクダンスのやり方も知らないんだけど、式神はどうして踊れるんだろう?


考えを巡らせている内に時間になったようだ。

多恵子さんがやって来た。

多恵子さんがこちらに着く前に、広場にいた恵子さんが多恵子さんに話しかけている。


「お母さん!その髪どうしたの?艶が出て綺麗になってるんだけど。」


「ふふふ。そうでしょう。すごくいい感じなのよ。今は用事があるから、後で教えてあげるわ。」


「ホント!絶対だよ!!」


お母さん?多恵子さんは恵子さんのお母さん?美人姉妹にしか見えないんだけど。そして、恵子さんは恵美ちゃんのお母さんだから、多恵子さんはお婆ちゃん!!!!

衝撃的事実だね。多恵子さんの見た目が若すぎる。


恵美ちゃんが多恵子さんの方にトテトテと走っていった。

「多恵婆ちゃ、遊んでー。」


「後で遊んであげるから待っててね。でもお婆ちゃんじゃありません。多恵ちゃんって呼んでくれないと嫌だからね。」


「分かったー。」


普通に考えれば言っている内容はおかしいが、見た目的には何の違和感もない。



今度こそ多恵子さんがやって来た。

「お待たせしましたー。それでは行きましょうか。」


『よろしく頼むのじゃ。』



「こんにちはー。源さんいますかー?」


トントン

奥の方で音が聞こえる。


ガラガラガラ

「多恵子さんか、何か用か?」


「はい。お願いしたいことがありまして。こちら瑶子さんに、こちらが黒乃さんです。お二人が椅子を作ってもらいたいんですが、お願いできませんか?」


「おう。俺は森野源太だ。椅子くらいいくらでも作れるが、報酬はちゃんともらえるのか?」


あ、この人さっき通りがかった人だ。


森野 源太

年齢:40歳位?

魂力:6

種族:人間

職業:大工


名前と職業が更新された。


『もちろんじゃ。できるだけ早めに二脚欲しいのじゃが、幾らくらいかの?』


「大きさはどれぐらいだ?」


「大きさは此れ位で、形は此の様な形じゃ。女性が寄り掛かって座って、頭のみ出るようにしたいじゃ。」


クロちゃんが絵を見せ、身振り、手振りで大きさを表現している。


「急ぎなら今ある椅子を作り直せば、2日もあればできるぞ。」


『作りが(しっか)りしておれば、其れで全然構わぬ。』


「それなら二脚で5,000平でどうだ?」


5万円?

ちょっと高いけど、オーダーメイドならすごく安いのかな?


『うむ。其れで頼むのじゃ。』


「分かった。それじゃあ、二日後には出来るが、届けに行ったほうが良いか?」


「お願いします。私もお手伝いしますので夕ご飯くらいの時間に届けに行きましょう。」


多恵子さんも届けてくれるようだ。


『助かるのじゃ。よろしく頼むのじゃ。』


「それでは源さんよろしくお願いします。失礼しますね。」


「おう。」


多恵子さんは広場に戻って娘さんと話してくるそうだ。

無事椅子を作ってもらえそうで良かった、良かった。


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