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10.力があるらしい。


「特訓って何をするの?」


『先ずは持っている力を使い(こな)せる様にするのじゃ。其れが出来るようになってからは実戦じゃな。』


持っている力?

お父さんが護身術なら教えてくれたけど、それ位しか思いつかない。

もしかして、我に秘めたる力がっ!!

とかは流石に無いか。


「私にはパパ直伝護身術とオババ様の知恵袋しかないけど、何かできるの?」


『うむ。出来るのじゃ。其方は代々続く陰陽師の家系。陰陽術への適性があるのじゃ。どの属性が使えるかは調べねばならぬがの。』


え?

予想外の返答が返ってきた。

陰陽師?陰陽術?

どういうこと??


「家は確かにかなり古くて大きな家だけど、地主か何かだと思うよ。家で陰陽師とか聞いたことも見たこともないよ。オババ様が占い得意らしいけど。」


『そのオババ様とやらは、最高位の陰陽師じゃし、お父上も相当高位の陰陽師じゃ。何かしら理由があって隠しておったのじゃろうが、よく隠し通せたものじゃの…。陰陽師の「安倍晴明(あべのせいめい)」という言葉は聞いたことはないかの?』


それはもちろん聞いたことがある。


ハルくんと同じ苗字だからか、記憶に残っている。


ハルくんとは血は繋がっていない。諸事情によりハルくんが5歳の時に義理の姉弟となった。戸籍も一緒ではないから、正確には義理の姉弟でもないけれど、私はお姉ちゃんである。

ややこしい。


「平安時代のすごい陰陽師だよね?」


『そうじゃ。安倍晴明とは稀代の陰陽師であり、土御門家の祖なのじゃ。土御門家はそこから脈々と受け継がれている由緒正しき家系じゃな。春愛希の安倍家も其の傍系(ぼうけい)にあたるの。其れだけの家じゃから普通は隠し通せるものでもないのじゃがな…。』


衝撃の事実だよ!

言われてみれば、大きな不動明王の像があったり、至るところに五芒星(ごぼうせい)が描かれていたり…。小さい頃から当たり前だと思っていたけど、友達の家にはそんなものはなかったような…。


「ま、まあ、それはいいとして。陰陽術には何が出来るの?火を吹いたりとか、水の上を滑ったりとか?」


『それは特殊な忍術か大道芸じゃな。じゃが、当たらずとも遠からず。やり方によっては近いこともできるかの。陰陽師・陰陽術に出来ることは学問から神秘の術まで多岐に渡る。じゃが、覚えきれぬだろうから必要なことのみを説明するかの。』


それは助かる。

正直脳の容量は大きくない。

頭が悪いわけじゃないんだよ?


『まずは式神(しきがみ)の操作を覚えるのが良かろうの。他にもたくさん覚えることはあるが、順に教えていくのじゃ。』


覚えきれるかな?

式神の操作?


「式神って何?」


『式神には擬人式神(ぎじんしきがみ)思業式神(しぎょうしきがみ)悪行罰示式神あくぎょうばっししきがみと呼ばれる3種類あるのじゃが、細かいことは追々かの。

先ず擬人式神じゃが、主に紙や葉などで作った形代(かたしろ)と呼ばれるものに仮初(かりそめ)の命を与え操る。その形代を飛ばして化け物と戦うのじゃ。

次に悪行罰示式神あくぎょうばっししきがみは化け物どもを降伏(こうぶく)させ、ば式神として使役(しえき)するのじゃ。当然紙や葉を飛ばすだけより、断然強いのじゃ。

思業式神は(しばら)くは無理じゃから省くのじゃ。』


ぷしゅー。

頭から煙が出そうだ。

擬人?悪行?形代?降伏?使役?

むむむむむ。分からぬ。覚えられぬ。


『徐々に理解していけば良い。簡単に言えば、化け物どもを瑶子が降参させれば、言うことを聞くことがある、と言うことじゃ。形代を操るのは見せた方が早いかの。』


クロちゃんがナイフで紙をスラスラ人の様な形に切り、何かを呟いた後、宙に浮いた。


クロちゃん器用だなー。


って言うより、浮いた!?


「どうなってるの!?手品!?浮いてるよ!」


『此れが形代じゃ。手品ではないの。陰陽による(わざ)じゃ。此れを自在に操る事で化け物どもと戦うのじゃ。』


形代は床に降りファイティングポーズからのシャドーボクシングを始めた。


「すごーい。でも、あんまり強そうじゃないね。大道芸みたい。」


『見ておれ。』


クロちゃんが窓を開けた。形代はそこから外に飛んでいき、拳大の石を持ってきた。


「思ったよりも力持ちだね。」


形代は石を床に置き、チョップした。

石は真ん中から真っ二つになった。


「えええ!真っ二つだよ。何これ。怖いよ!」


『其の者の力に応じて、強さは変わるのじゃ。明日からは此れを特訓するのじゃ。』


形代が腕立て伏せや腹筋をしている。

ちょっとカワイイかも。


「こわかわいいね。面白そうだし、頑張るよ!」


『うむ。後は目も同時進行で目も鍛えるのじゃ。』


ん?

目?


「視力はもう良くなってるよ。クロちゃんみたいに遠くを見えるようにするの?」


『視力や吾の加護の話では無い。瑶子の目の力を使い熟すのじゃ。其方の目は看破の魔眼と呼ばれる魔眼の一種なのじゃ。』


Oh…。

魔眼?何それ?


「先生!魔眼とは何ぞやです。全然分かりません!」


其処(そこ)からじゃったか。そうじゃの。魔眼とは特殊な能力を持った目と思えば良いのじゃ。有名所(ゆうめいどころ)ではメデューサの石化の魔眼、吸血鬼の魅了の魔眼(あた)りかの。瑶子の看破の魔眼は言葉の真偽や善悪、弱点等様々な物を見破る能力じゃ。思い当たる節も有ろう?』


真偽や善悪?

人を見る目にはとっても自信があるけど、もしかして目の力というやつですか?

女の勘ではなくて?


「あるといえばあるけど、女の勘だと思ってたよ。人に会ったときにピキーンってなるんだよ!この人は信用出来るとか、気を付けろとか。そういえば、パパが嘘ついたときもピキーンってなってた様な…。」


『本当に良く気付かずにいられたものじゃな…。無意識に使っておった様じゃが、今後は自らの意思で発動出来る様にするのじゃ。』


「頑張るよ!ちなみにクロちゃん。お母さんの目も同じ色だったんだけど、同じ能力があったの?」


『十中八九そうじゃろうな。魔眼は遺伝するのじゃ。隔世遺伝で現れる事もあるのじゃ。』


「だからお母さんに嘘ついたら、全部バレたんだね。納得だよ。お父さんは全部騙されるのに。」


言葉巧みな話術を持ってしても、お母さんは誤魔化されないからね。そういう事だったのか。


『恐らくじゃが、魔眼とは関係無く見破っていると思うがの…。(やはり素直に育ち過ぎじゃ…。幻想種何かかっ…。ボソッ)』


なでなで


「どうして私の頭を撫でているの?気持ち良いけど。クロちゃんって(うち)の事も詳しいよね。神様だから?」


なでなでなで


『そうじゃ。神様だからじゃ。そろそろ遅いし、寝ようかの。』


なでなでなでなで


「そうだねー。眠たくなってきたよ。」



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