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イケメンの彼は見栄っ張りで黙っていられない

作者: 女主人公Y


ゆか子は、昭和生まれ。


あなたは、人を好きになったほうが幸せ?

それとも「好きです」と言われた方が幸せ?


ゆか子は、恋をしています。


夜間の調理師専門学校に通っています。

 夜間は、一年半で卒業です。


一年先輩の彼と同じバスに乗っていたことが恋の始まりでした。


彼の方から、ゆか子に「いつも、この時間のバスに乗っているんですかね」と声を掛けた。

 ゆか子は、日に日に彼の姿を目で追うようになりました。


半年後、彼は卒業です。

 しかし彼は、学校の見習い講師として働き始めました。

その時、彼の名前を知りました。


達木友 身長は172cmでイケメン、ゆか子と同じ年の20才。


ゆか子は、ふと「この人と結婚末うのではないか」と思った。


学校へ行くと片思いだけど好きな人がいる嬉しさで心は、『ウキウキ』夕方になると『そわそわ』何度も時計をみる、頭の中は友君でいっぱい。


そば屋で、働いていたゆか子は、お客様の好いている所をチャンスと思い

「店長さん今日は、この時間に帰っていいですか」聞き、何時もより30分も早くバスに乗りました。


今日は、友君は、遅番で学校に来ているはず。

 バスから見えてくる学校、夜間の生徒の為に仕込みをしているはず。

「来ているかなぁ」


調理室の教室を見渡す。

「やった、来ている」

ゆか子は、調理師の勉強どころではなくなっていた。

 友君に夢中です。


ゆか子は、自分でもびっくりするほど友くんへの思いは『積極的』です。

 友くんが咳をしていれば風邪薬を手渡し、バレンタインデーにはチョコを手渡す。

友くんに似合いそうなネクタイをプレゼントし、自分の物は節約し友くんにプレゼントを選んでいる時が楽しく幸せでした。


学校のゆか子の行動は、誰から見ても友くんが好きですと言っているような態度でした。


ドアを開け友くんが廊下に出ようとしたら目の前に立っていた。

すれ違いざま、2人は見つめ合った。


あっという間に1年が過ぎゆか子が学校は卒業する日。

 今日で学校、友くんの片思いを卒業する日と思い涙が止まらなかった。

帰ろうと学校の門を出ようとした時、友くんが走ってきた。

「いつでもいいから学校に電話ちょうだい」と言った。

ゆか子は茫然としていた。

喜んでいいのか何を意味しているのか分からなかった。


その後、迷いに迷って学校へ「達木さんお願いします」と電話した。

 友くんが電話口で「俺の家の電話番号めもして」と言って教えてくれた21歳の春でした。


ゆか子は、こわごわアパートの近くの公衆電話から友くんのダイヤルを回した。

 友くんの反応はあまり良くはなかった。

電話しないほうがよかった、心はむしゃくしゃする。


考えてみると、ゆか子は友くんの顔にひと目惚れでした。

 もし、どんな人なのか聞かれてもどうと答えることはできない。

ただただ好きだった。


3日も経たないうちにまた声が聴きたくなる。

 友くんの反応はどうであれ声が聴きたい。

指折り3日以上たつのを待ち、今日で5日目だから電話していいよねと

公衆電話の受話器を持ったまましばらく考えた。

 「やっぱり今日はやめよう」

受話器を置くと10円玉が倍になって落ちてきた。


私は、生きている。

 誰でもない私は、ゆか子なのだと自分に言い聞かせた。


1か月が過ぎ久しぶりの電話。

 友くんは「今度の休み遊園地に行こう」とゆか子を誘った。

初めてのデートだった。


友くんは、このまま見習い講師を続けていても本当の講師になるには10年かかる。

 自分の腕を磨くため学校に東京から来た講師に相談をし、来年その講師の所へ再就職をするという。


友くんは来年、東京に行くので思い出として今日は遊園地にゆか子を誘い終わりにしたいと思っていた。

 

なぜ、友くんはゆか子に話してしまったのか。

 だまって東京へ行くことも出来たのに。

ゆか子の心は「よし、友くんが東京に行くのなら私が先に東京へ行ってよう」と思った。


早速、週刊誌の就職情報を見た。

 ファミリーレストランのウェイトレスを希望し履歴書を送った。

暗算3級を持っているのでレジ係として即採用されました。


ゆか子は22才で東京へ出発した。

 上野に着くと、就職先の男の方が迎えに来てくれました。

不忍口を出ると雷が鳴っていると思うほどの衝撃、頭の上を電車が走っている。

 一瞬、頭に手が伸びた。


寮に案内され、いよいよ職場と寮の生活が始まった。


友くんの気持ちを考えると、ゆか子が東京へ行ったことはさぞかし迷惑な事だったでしょう。


東京は、夢や希望がかなえる事が出来る。

 叶えるために努力をする場所。


自分を同じ若者が溢れている。


まっすぐ歩いていて25メートル、何人の人と目があっただろう。

 歩く些細な事でさえ、自然にしゃんと胸を張り自分に満ち溢れていた自分が居た。


ゆか子は、レジ係の仕事を、お札の数え方から丁寧に教えて頂き仕事に慣れ量では友達ができ楽しい毎日を過ごしていました。


ただ、東北なまりが出て標準語の大切さが身に染みていました。


いよいよ、友くんが東京に来る。

 ゆか子は、お昼休みになると急いで昼を食べ公衆電話に向かう。


友くんの職場へ電話、奥で忙しそうな声がし慌てて受話器を置く。


昨日、電話したから今日1日目、明日2日目、明後日3日目、いやまだまだ早い。

 あと何日過ぎたら電話しようか。


今日は、なぜか「電話しなくちゃ」そんな気持ちでダイヤルを回すと友くんが体調を崩し仕事を休んでいるとお店の奥さんは言った。

 

ゆか子は、友くんの家に様子を見に行った。

 「熱があったので、病院で薬をもらってきた」と友くんは辛そうに言った。


ゆか子は、コンビニへ米と食べれそうなゼリーやプリンを買い、その夜は友くんの看病をした。


サラサラした髪、美しい顔。

 前髪をそっとよけ、おでこに冷たいタオルを当てた。


熱に、うなされている友くんが「おふくろ」とうわ言。

 ゆか子は、この人を支えたいと思った。


時には、寮の仲間と友くんのお店に食べに行きました。


ゆか子の職場のレジカウンターには、相合い傘に友くん、ゆか子といたずら書きした子も居ました。

 ゆか子は嬉しかった、いつも近くに友くんが居る様で。


友くんと2度目のデート。

 好きな人の声が聴きたい、会いたいしかし、実際二人で向き合うと友くんの顔をまっすぐに見る事が出来ない。

 つい、下を向く。


「調理師学校の頃から、何時も下を見ていたね」と友くんは言った。


喫茶店でアイスクリームを注文したが好きな人の前で口を開けて食べる行為さえ恥ずかしく、一口食べお皿のアイスクリームは溶けてしまった。


友くんは、クリームソーダを飲み「父親の体調が悪く、今1万円も実家にお金を送っている」と言った。


ゆか子は、初めて友くんの心の中を垣間見たような気がした。


「一万円も」という言葉が気になった。

 何故なら、ゆか子は中学卒業後、15才で地元で働きはじめ給料袋を開けずに母親に渡していたので自分がいくらもらっているのか知らなかった時代があるからです。


ゆか子は時々、仕事帰りに電車を降り遠くから友くんの仕事姿をガラス越しに見て「元気そうだ」と思い帰っていった。


寮の仲間で仲良しだった子が、東京で結婚。

 2つ下の子は女友達と暮らすための寮を出た。


この先、ゆか子を支える事となる大切な高ちゃん。


寮を出た後は高ちゃんと一緒に暮らし又は、近くにアパートを借りてお互いを支える存在になりました。


「ゆかちゃんは、友くんの話ばかりして私の話は聞かずにいつも寝てしまう」

「もしも、ゆかちゃんが男だったら結婚する」と高ちゃんは言った。


今日は、友くんと二人で会う三度目のデート。 

 友くんはゆか子に真面目な顔で言う。

「俺は、長女と結婚をする気はない、酷なこと言うかもしれないけど俺の事忘れて田舎に帰って欲しい」


ゆか子地震、子供のころから父親が居なく、祖父、祖母、母、妹と暮らしていて母の職場に夕方迎えに行くと必ず「早く大きくなってお母さんを助けてあげなさい」「親孝行をしなさいと」と色々な、大人に言われ母からは「やっぱり長女は胡坐が上手だ」なんておだてられていた。


自分は長女、母親の老後は必ず自分がと子供心に思った。


友くんは、末っ子なのに親の老後を考えている人とは付き合いたくないのか。


ゆか子は、悲しかった。

 友くんと結婚するような気がしていただけに、友くんが何を考えていたのか。

 ゆか子が電車に乗り帰る姿を何時までも見ていた。


20才から24才まで毎日朝から晩まで友くんを想っていた「一瞬にして忘れろ」と言われているような。


今までの思い出を頭から消すという事、心の支えを失しなった。


自分との心の戦いです。

 どのようにしてこの心を癒せばいいのか、どうしたらいいのか。


美しい花びらが少しずつ花開く様な幸がゆか子の心を満たしていたが。


あまりにも、ゆか子の心が熱く燃えすぎた。

 そのせいで、花は咲くことは無く散ってしまった。


ゆか子は帰ることを決めた。

 新幹線の窓際に座り、溢れる涙を止める事が出来なかった。


田舎へ帰り、アルバイトをし友句を忘れる為にお見合いを繰り返した。

 お見合いは、相手が顔を見てにやけたらOK、顔色が変わらなかったらダメ。


東京を離れて1年、ゆか子は何故か友くんに手紙を出していた。


そんなある日、突然の電話。

 「はい」受話器から聞こえてくる男の声。

 「どちら様ですか」まさかの一度も電話をくれたことのない友くんからでした。

「今、こっちに来ているあって欲しい」

「え、いまさら何を話すの」

 ゆか子は、心から喜ぶことが出来なかった。

 苦しい思いをして忘れかけていたのに。


友くんに言われた場所、時間にゆか子は待っていた。

 時間になっても友くんは来ません、あの電話は夢だったのかなと思いながら1時間後にようやく友くんは姿を見せた。


以前なら遅刻しても何も思わなかったでしょう。

 しかし、心の中では一時間も待たせていたのにごめんの一言もない。

 確実に友くんの見る目が変わっていた。


友くんは、兄の結婚式に出席するために帰ってきたらしい。


ゆか子と結婚前提に付き合いたいので東京に来て欲しい。

 ゆか子の親のめんどうを将来見るという。

 ゆか子は何度も母の老後の事を友くんに確認をし母の許しをもらい東京に向かった。


友くんの指定したお店で待っていると友くんが迎えに来た。


「あー紙袋できたのか」と、さっそくいやみ。


友くんが住んでアパートは新築で6万円。

 ワンルームにユニットバスにトイレ。


ゆか子が来る前にファンシーケース、包丁や細かいものを買っておいた。


「家賃代は折半で3万円出して」

「え」

「俺一人に6万円だせっていうのか」

まさかの言葉にゆか子は心の中で東京に来たその日にこのセリフ。

「うんいいよ」


「友くんの通帳作って月末に3万円入金するね、預金になるのでいい考えでしょ」


俺、本当は好きな人がいたんだけど、その子なんでも欲しがって。

 そんな人とは結婚できないと思った。


勿論関係はもうない。


ゆか子と同じような付き合い方でした。


ゆか子は、その話を聞き「s黄な人が居るのになんで好きでもない私を東京に読んだんだろう」

 東京に来た日に話をする内容ではない。

 ゆか子は友くんの言葉に困惑した。


「それから、結婚するまで男女関係なしね」


友くんの遠い親戚がの子が同棲し妊娠すると男が家を出て行った。

 その子を友くんが産婦人科に連れていき子供をおろした。


辛い思いをするのは女性だからと、友くんは布団を引き「こんな優しい男はいないよなって店の奥さんが達木くんと結婚する人苦労するだろうな」って言うんだ。


ゆか子は、その言葉の意味が分からなかった。

今まで、電話で短い話とデート二回、友くんの性格はまるで分っていない。

友くんは、ゆか子が来てくれて本当に安心したと言った。


就職先もすでに決められていました。


友くんの会社の社長の紹介で洋菓子店の販売の仕事でした。


殆ど遅番で、夜の10時にお店を閉め帰る。


ゆか子は、できれば就職先は自分で決めて昼間働きたいと思った。


遅番が多い、ゆか子に友くんは気を使い、朝は自分で起きゆか子を寝かせたまま静かにドアを開け仕事に出かけた。


そんなある日、友くんは英語ぺらぺらな友達がいて、その人の家へ行った。


時は、英語しか話してはいけないという。


今度、ゆか子を紹介するので連れて行くという。

 急に英語をしゃべることはできない。

友くんは怒っていた。

「そのくらいも出来ないのか」

友くんは言った。

「ゆか子は、俺が教育する」


明日から、二日間友くんは出張。

 出かける前に小銭を入れた便を持ってきて、これを銀行へもっていって通帳に入金しておいて。

 ゆか子は思った。

 「こんなせこい事、はずかしい。募金したらいいのに」と。

 仕方ないので銀行へ行った。


友くんは出張から帰ってきた。


お土産と言っては箱菓子をおいた。

 本当は買ってくる気はなかった。

 社長にお土産のひとつ、買っていきなさい。その気持ちがないと逃げられるぞ彼女にと言われて買ってきた。

 「そこまで説明しなくてもいいのに」と、ゆか子は思った。


時には、社長から貰った鮭の西京漬けをオーブンで焼き友くんは、「おいしいおいしい」と言いながら食べる。

ゆか子に食べさせることなく自分ですべて食べていた。


友くんの性格が徐々に出てくる。


人間は顔だけじゃ分からない、どんなに美しい顔をしていても心が温かいかは分からない。


友くんはイケメンなので、中学の頃からかなりモテていて女の子からラブレターを貰ったり告白されたりしていたらしい。


「イケメンの弟がいるから兄貴には嫌な思いをさせた」と友くんは言った。

己惚れの強い人だと思った。


以前、ゆか子が誕生日プレゼントした。

「あんなダサいセーターは俺は着ない。兄貴は何でも着るからあげたら喜んできていた」


ゆか子は、男の人は黒や白の無地がを好むとは思いもしていなかった。


明るい、来ているだけで楽しくなりそうなカラフルなセーターを友くんに似合うと思い選んで買った。

「お兄さんに上げたのならそれでもいい、でも言わなくてもいい事」

 どうして、友くんは一言多いのだろう


「ゆか子の親はどんな親、ゆか子馬鹿だから親も馬鹿だろうな」

私の田舎に「まがっている位馬鹿」という言葉がある。

 友くんはそれに値すると思った。


友くんはまた自慢話を始めた。

 「友くんと結婚できるのならお金を払ってでもしたいって近所の子に言われた」

これは「ゆか子と結婚してやるから金払えって意味?」


そしてある日、友くんとゆか子はレストランで食事をしていた。

 友くんは、ゆか子の手を見て「その手気持ち悪い」といった。

「やっぱりこの男馬鹿だ」

 なんでも思ったことを口にする。「少しは考えろ」


親の話を出せば「それは、おいおい話し合おう。俺は50才まで田舎に帰る気はない」


改めて考えると、ゆか子は結婚是㎜艇の付き合いのはず。

 同じ部屋には住んでいるが男女関係はなく。

 

自分が言っていることは、結婚を目標としている人の態度ではないというのをどうして友くんは気付かないのか。ゆか子は淋しい。


専門学校時代のバスの窓から探していたあの人に会いたい、愛おしい。


アパートは新築とはいえワンルームでプライベートを守る部屋ではない。

 下に住んでいる人の声も聞こえる。

 二階に住んでいる私たちの生活音も聞こえている。

 ゆか子は、お腹の調子が悪かった。

 仕事先で一口物を口にしただけでお腹を壊します。

 横っ腹に、違和感。絞られるような痛み。

 おならを出したくても肛門の辺りでガスが行ったり来たりでてこない。

 お腹が苦しい。


今度は出始めると止まらない。 

 吸った空気がすべてガスになっているかのような症状。


高ちゃんに相談して病院へ行った。


大腸の過敏症、ストレス、疲れ、食生活の乱れが原因だった。

 飲み薬を一週間分貰い帰った。


この病気で自殺した人もいたと、病院の待合室で話している人もいました。


新年元旦、高ちゃんと神社に初詣。

 心の中で友くんと別れたいと、そんな気持ちで手を合わせてしまった。


アパートに帰ると、友くんが「お正月なのに俺をおいて友達と初詣、普通は彼氏が居たら彼氏と一緒に行くものだろう」


不機嫌で話してはくれない。

 黙っている位なら文句を言われた方がまし。


ゆか子も、言われてから友くんと行くべきだったと思った。

 友くん自身は、大晦日は何処へ行っていたのだろう?


朝に「帰りが遅くなるから紅白歌合戦で華やかな、衣装の歌い手の方を見たいから」

 「そのほうを、ビデオに撮ってくれ」と言って家を出た。


ゆか子は、ビデオにとれるか心配でとれなかったら何を言われるか分からない。

 ドキドキハラハラな大晦日を一人で過ごしました。


「友くんは、いったい何処に行っていたでしょうか」


そこに、年賀状が届いた。

 ゆか子は、自分を大切にしてほしい願いを込めて友くんに年賀状を書いて送った。

「明けましておめでとうございます。私には友くんしかいません、これからも私の事をよろしくお願いします。」

 そのハガキを見て、好きな人の歌がビデオに入っていることを確認し「うまく入っていた」と言って嬉しそうに見ていた。

 機嫌がよくなっていました。


数日後、ゆか子のお店の方に「籍が入っていなくても一緒に生活をしていたら彼の扶養ににしてもらえるよ。社会保険と年金の手続きをしてもったら」と教えてくれました。

 さっそく、友くんに話をすると「俺の給料が減るだろう、ゆか子は仕事をする気ないのか」


たっしかに、103万円以下に収めなくちゃいけない、そうでないと扶養にはなれない。

 「だけどあのいいかた」

 友の給料から、ゆか子の分として全額払うわけではない。

 厚生年金を払っている方、数人分の金額が扶養されている方の年金になる。

 不要にしていたら税金は控除される。

 ますます将来が不安になってきました。


「友くんは給料、ボーナスいくらもらっているのだろうか」

 友くんは口癖のように、俺は30才までは子供は要らない。


現在26才のふたり。

「友くんは、いくら貯金があるのだろうか」


ゆか子が知らない合間に結婚式場が決まっていた。

 ホテルで結婚式、披露宴。友くんはそういった。


「ゆか子がこのアパートに来た時、いろいろ買いそろえたから結納金はなしにする」

 一方的に事が進んでいて、ゆか子は茫然としていた。


友くんの財布事情を知らないゆか子は、2人で正装し写真を撮るだけでもよかった。


ややこしい状況が目に映るようだ。


友くんの仕事の都合で彼岸以外休みが取れない。

 彼岸に両家へあいさつに行くという。


母には、めでたい日なのに彼岸に来るのか、他の日に変更はできないのか。

「いぬ、ねこ、じゃあるまいし結納金なし」

 兄と兄嫁に母は知恵をつけられている。

母が「あーでもこーでもない」と電話をよこす。

 

母が若い頃、兄夫婦があまりにも話が長くくどかったため弟は頭にきて兄夫婦の顔面を殴ったらしい。

 兄は右、嫁は左目を紫色にして二人で家に居たよ言う。


友くんは友くんで「結婚資金がとんとんのなるように親戚には5万円包むように話をしろ」という。

 母と友くんの間で、ゆか子は身動きが取れない状況になった。


友くんは、ゆか子に両家の挨拶用の菓子を細かく注文してきました。


友くんは、ゆか子に両家の挨拶が終えるまで髪を切らず伸ばすように言って、ゆか子の髪を撫でこの方が似合うと言った。


「俺、おふくろの髪もとかしてやった」と言った


挨拶用の服も友くんが全て決めました。


「腹が出ていると思ったが出ていないな」と友くんは言いました。


大腸の調子が悪い時お腹が張って薬を飲めばおさまります。


ゆか子は、精神的に疲れていました。

 目が充血していると職場の人が、夜頑張りすぎているんじゃないのかと言う。

 しかし、2人はまだ男女の関係はないし手を繋いだことすらない。


友くんは帰るとき必ずコールをする。

「今から帰るから」

「今帰る、職場から帰る、最寄りの駅から帰るか」どれかも分からない。


ゆか子は、遅番でアパートに着くのが22時40分頃。

 友くんは朝早く、夜も遅い。何故なら行きつけのスナックに行っているから。

 どこにあるのかは教えてもらえなかった。「これだけは秘密」だそうだ。


そのお店に行っているものやら冗談めかして「結婚しても浮気は容認してもらう」そんなことを言っていた。


友くんが、ケーキを買って帰ってきた。

「ゆか子はケーキとか買ってきたことないな、たまにはシュークリームとか買ってこれないか」

 友くんとゆか子共に洋菓子店で働いている。

 二人の仲も甘くなくても、おさえた中でもいい、一度でいいから「好きだ」と聞きたかった。


果汁10%のジュースを買えば、俺は100%のしか飲まないと言われる。


突然、専門学校の女教師の話。

「ゆか子さんは、あなたにぞっこん。もっとお金のある人と付き合いなさい」

 その先生は、ゆか子の母と電話で話したことがあります。

 母に「とても素直で良いお嬢さんですね」とほめていたと聞いていたので、やはり人間は表と裏の顔があると思いました。


友くんは、口は悪いが嘘をつくような人ではない。


しかし、友くんは何が言いたいのか分からなかった。


ゆか子は、中学を卒業してから働いていたので親に手渡しをしていた給料から手帳を作り預金してくれていた。

 まして景気のいい時代10万円を定期預金すると一年後には五千円の利息が付いた。


ゆか子が、頭でざっくり計算をした。

 結婚資金は十分ある。ただ、田舎の家に置いてきた。


友くんは、自分の内面を全てさらけ出している状態。

 ゆか子は、友くんの機嫌と伺いながらの生活なので自分の内面を隠している。


友くんは女の子が寄ってくるほどのイケメン。


友くんと出会った頃は苦しさ愛おしさの中に喜びがあり甘い生活を想像していた。

 しかし実際に生活してみて、美しい顔立ちの友くんは見ているだけの方が幸せで友くんとの生活に迷いが生じた。


その中、些細な事で真面目ての口喧嘩。

 友くんが「別れるか」

 ゆか子は、その言葉を正直待っていたのかも

 「うん、別れてもいいよ」


ゆか子の父親は、ゆか子と妹が幼い頃に出稼ぎに東京へ。

 その後、母は父からの支送りを待っていました。

 郵便配達のバイクの音が聞こえるたび今日こそは今日こそはと思い、バイクの音が自分の家を通り過ぎたときの胸の痛さ不安に押しつぶされた。

 父は何処に行ったのやら。


そのため、ゆか子は、結婚は贅沢しなくてもお互いに助けあえて、冗談言えるごく普通の家庭を望んでいました。


向上心の強い友くん。

 ホテルで結婚式を強引に決め、ゆか子の気持ちを知ろうともしない。


友くんは勘違いしている。

 ゆか子には、何を言っても許してもらえる。

 しかし、結婚式や披露宴は見栄でするものではない。


ゆか子は、心の内を友くんに言った。

 「今は友くんと一緒にいても嬉しいとか楽しいとか思えない。恋愛と結婚は別」

 友くんは、唖然としていた。


友くんは,慌てていった。

 これからは、休みを合わせてゆか子をディズニーランドに連れて行ったり映画を見に言ったりするから。「な、ゆか子今までどこにも連れて行かずにごめん」


その夜、初めて友くんが風呂上がりのゆか子に「抱くか」と言った。

 ゆか子は、首を縦に振らなかった。いや、振ることが出来なかった。


すでに友くんに話をしていた手の荒れ。

 ゆか子の手は一日中、水仕事をすると手の皮が厚くなり突っ張ってしまう。

 まっすぐに指を伸ばすと手にひびが入り、皮がポロポロと剥け普通の手になるがそれの繰り返しだ。

 

もう一つの症状は、手に湿疹ができ痒くて手を縛りたいほどでした。

 そのため、常に料理をする時は薄いビニール手袋をして洗い物の時は厚いゴム手袋をしていた。


友くんは、将来、今働いている店長夫婦が引退した後に社長に店を引き継ぐように言われているような気がすると言った。

 その話を聞いた時から結婚はさらに無理と、ゆか子は思った。


ここまで手荒れの事を悩んでいるとは、友くんは知らない。

 本当に店を引き継ぐのか、中途半端な言葉。


次の日、ゆか子が仕事に出かけようとドアを開け閉めようとした時、友くんが「俺をここに一人置いて出ていくのか」と言った。

 友くんの顔をドアの隙間から見て、何も言わずにドアを閉めた。



友くんは、英語がペラペラの友達に相談したという。

 社会的に上に上がろうとした時、ゆか子は自分についてこないだろうと身振り手振りで説明している。


だから、ゆか子とは結婚できない。

 今日、結婚式場をキャンセルしたと友くんは言った。


友くんは、始まりから終わりまで自分で決めた。


友くんは、自分の人生にもがき苦しんでいたのだろう。

 また、ゆか子も同じである。


人生は、自分の思う様にはなかなか進まない。

 

ゆか子も、若かったゆえ友くんの優しさ考えをうまく想像し理解することが出来なかった。

 そして、友くんは男女関係がなかったことを姉に話したら「よくやった」と褒められたと言った。


友くんの最大なる優しさと思っていただけに、ゆか子の心の中は複雑だった。


黙っていられない友くん、どうして「そこまで、話す?」


友くんは、どこまでもプライドが高い。

 人前では、ハンサムでかっこいい人間でありたい。


そして、間もなくアパート代入金の通帳をテーブルに置き、ゆか子は、くしについた友くんの髪の毛をティッシュに包みそっと鞄に忍ばせた。

 あの日の事を思い出にした。


友くんが酔って帰ってくると寝ていた。

 ゆか子は、髪や頬に触れおでこに唇を当てた。

 

言葉では、何も言ってはくれなかった友くんを感じた。


友くんには「自分が部屋に居る時アパートを出て行ってくれ」と言われました。


友くんを一人残しアパートを出る自信がなく、いない間に準備し出ることにした。


ゆか子は、20から26才まで片思いで苦しい思いをしたが友くんの存在が生きる全てでした。


大好きだった祖母が亡くなった時に支えになってくれたこと。

 東京の荒川で亡くなった父の供養が出来たこと。

 そして、東京の寮での女友達との出会う事が出来ました。

 それも全て、友くんのおかげと感謝した。


「ありがとう友くん」


そして、いつか本当の幸せを手にして下さいね。




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