お兄様が婚約者のお姉さまを裏切って浮気をしたのを目撃してしまいました。婚約破棄をするというのでそれを妹である悪役王女の私が阻止しますわ! 10歳はもうおちびじゃないのですわ!
「……これはピンチなのですわ」
私は王宮の中庭で王太子であるお兄様が知らない女性と接吻をしているのを目撃してしまいました。
しかも婚約者であるローゼリアお姉様を裏切って、無実の罪を着せて婚約破棄をしようと相談をしていましたの。絶対そんなの許せません、阻止しますわ!
私はステラ・ミーゼリウム・エリムといいます。王女ですわ。
お兄様はあんなのでも王太子なのです。でも頼りないですわ7歳も私よりも年上ですのに!
私はお優しいリアお姉様にこのことを話すと心を痛めると思い、私だけでこの案件を処理することにいたしましたの。
「……まず、あのぼーっとしたお兄様が最近もっとぼーっとしているのは何か変だとは思っていたのですわ」
「ステラ、僕を巻き込むのやめてよ……」
「アレク、お兄様が浮気をしていることがばれて廃嫡にでもなれば、次の王太子は誰だと思います?」
「あ……僕だ」
「そうですわ、それはいやですわよね?」
「うん……」
私の婚約者のアレクシスは、私の従弟、つまり王弟、おじさまの一人息子です。
つまり、次の順番はおじ様……はたぶん拒否されると思いますから、アレクになるのですわ。
ほら、私と婚約をしてますし子供が生まれれば血統も守られますしねえ。おじ様は側妃の子なのです。
「協力するよ。僕王太子なんて責務に耐えられないと思うんだ」
「頼りにしてますわ、アレク! 私一人じゃ絶対に無理だと思いますの」
「うん頑張るよ!」
まず私はアレクとともに、お兄様の身辺調査に取り掛かりました。まずお兄様はこの一か月くらい、ずっと一緒にいる女生徒がいるのを突き止めました。
それが接吻をしていた元庶民のメリーという方でしたわ。
「うーん、元庶民、男爵の落としだねってことがわかって引き取られたんだね」
「……あのぼんやりお兄様の好みじゃありませんわあの方」
「うん、おっとりして優しいリアお姉ちゃんと違って気が強いみたいだし、まるでステ……うわごめんよ!」
私はアレクの足を思いきり踏んで、そしてどうしようかと考えました。
まず、好みじゃない女生徒と浮気をする甲斐性はお兄様にはありませんわ。
とすると……。
「多分、何かの魔法ですわ。魅了系ですわね。妙な波動を見たときに感じましたし」
「そうなの?」
「魅了の力を持つ魔法道具があるってお友達から聞きましたの」
「そうなの?」
「あのぼんやりお兄様が浮気をするとしたらそのあたりしかありませんわ」
私はお友達から聞いた、身に着けるだけで異性を虜とやらにする魔道具の存在を思い出しました。
取り上げて壊せば、効力はなくなるそうですわ。
「無実の罪を着せて、婚約破棄とやらをする場面にあの女が現れるはずですわ。その時に取り上げて、暴露すればいいんですわ!」
「でも確実に魔法道具とやらがあるかわからないよ」
「アレク、確かめてくるのですわ!」
「ええ、いやだよお。あのおばさん怖そう」
「行くのですわ!」
私は無理やりアレクをたきつけ、魔法道具の波動を感じ取れる道具が反応するか試しにいかせましたわ。
するとやはり反応あり。
「うわーん、なんで僕が!」
「男にはあのおばさん愛想がよかったのですわ。私では近くによらせてたぶん貰えませんわ」
「あうあうあう」
アレクがうわーんと泣きながらこちらにくるのをよしよしと頭をなでながら、私は婚約破棄断罪の日を待ってました。日に日にお姉様は元気がなくなっていきますし、お話しちゃおうか迷いましたわ。
ううう……でも余計話がややこしくなりそうなので黙ってましたの。
「ローゼリア・フォルム。お前がここにいるメリーをいじめ!」
「ちょっとまったですわああ!」
私はお兄様が宣言とやらをするのを何とか中断させようと、王宮の広間に躍り出ましたわ。
アレクがこわいよおといいながら私にしがみついてます。
「どうした? ステラ、こんなところにきて、離れておいで」
「お兄様、お兄様はその女狐に騙されているのですわ!」
私はびしっとお兄様の隣にいるメリーとやらを指さし宣言します。するとまあ何をいわれるの? としらをきる女狐。
「リアお姉様、お兄様はこのメリーという女に操られているのですわ!」
「え?」
リアお姉様が驚いた顔でこちらを見ています。私はアレクに目配せると怖いよといいながら、アレクが束縛の魔法を唱えました。
「何をするの!」
「ライト・チェイン!」
光の鎖が女狐に巻き付きます。私は女の元にだーっと走り寄り、その腕をつかみました。
「この腕輪が魅了の力を持つ魔法道具なのですわ! これを外して……」
私は無理やりメリーから腕輪をとり、懐に入れていた箱に入れました。お友達からもらった効力を無効にするものですわ。
するとお兄様はあれ? というように目をぱちくりさせて私たちを見ています。
「あれ、僕は?」
「お兄様、この箱に入っている魅了の魔法道具にお兄様は操られていたのです。このメリーという女がたくらんだのです!」
びしっとメリーという女を私は指さし、婚約破棄とか無実の罪をリアお姉様に着せようとしていたことは覚えてますか? と聞いてみるとなんとなくとは自信なさげにいうお兄様、頼りないですわ!
「衛兵、この女をとらえなさい!」
「はい!」
隠れていた衛兵がメリーを捕えます。アレクが怖いよおと泣きながら私のそばにやってきました。
「アレク、ありがとうございます。助かりました。やっぱりアレクは頼りになりますわ!」
「あうあう、ステラのためだもん……」
「大好きですわ!」
私はアレクのほっぺにキスをしました。真っ赤になるアレク、年下はかわいいですわあ。
リアお姉様のもとにお兄様が走り寄りごめんよと謝っています。許しますとか何とか言ってますが、私なら許しませんわ。
だって魅了の道具なんかにとらわれるのは精神が弱いせいだって聞きましたわ。
「アレク、あの魔法とやらは感じましたか?」
「うーん、あのおばさん怖かったけど」
「やはりアレクは私を愛してくれてますのね!」
「あ、うんステラは怖いけど優しいし、好きだよ」
アレクが頭をかきます。うーん、怖いだけは余計ですわ。あの魅了の力、どうも本当に真実愛するものがいれば効力が低いらしいのです。
精神力も関係あるらしいですから、ぼんやりお兄様はアレクより精神年齢がたぶん下ですわ。
「……でも調査とかスムーズにできたけど、だれに頼んだの? ステラ」
「お母様とお友達ですわ!」
「そうなの? あの優しいミファおばさんが調査とかなんか信じられない」
「女は見かけで判断しちゃだめですのよ、お母さまはわが国で最強なのですわ」
「ふーん」
抱き合うお兄様とリアお姉様を見ながら、私はよかったけど、たぶんお母さまからお兄様はお灸をすえられますわと少し同情いたしました。
お父様は本性を知りませんが、誰よりお母様は怖い人なのですわ。
「女は男をたて、そして頼りないと思われるくらいがちょうどいい、男を頼るのが一番いいといわれましたわ……」
「ステラはそういう人じゃないけどね、悪知恵あるし悪役令嬢というより悪役王女?」
「放っておいてくださいまし」
アレクが笑います。しかし、私は箱に入った魔法道具は魔法使いのお弟子のお友達に送って封印とやらをしてもらわないとと思います。
とても危険なアイテムらしいのです。昔、ある王国が一人の女によって乗っ取られたらしいのです。
私はメリーという女の処分はお母さまがされますが、多分ひどいことになりそうですわねえと思いましたわ。
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