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手紙  作者: 甲池 幸
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ポップコーン

上がって、急降下して、くるりと一回転してと忙しいジェットコースターの隣の席で片瀬は楽しくて仕方がないという感じてけらけらと笑っている。その笑顔を横目で見ながら、ぎゅっと目つぶっていた洸を思い出す。私や片瀬と違って、ジェットコースターが苦手な洸は、何に乗る時もいつもぎゅっと目をつぶっいて、時には手を繋いで乗ったりした。でも、コーヒーカップは大好きで、いつも得意げにすごく早く回してた。


普段は、一歩前を堂々と歩いている洸の、子供っぽかっまり可愛いかったりする一面が垣間見えるから遊園地に2人で来るのが好きだった。


当たり障りのない普通の日が洸といるだけで、楽しくて輝いていて、特別だった。


また、胸が鋭く痛んだ。


「夏恋チャン?」


「え?」


片瀬に呼ばれて我に返ると、ジェットコースターはいつの間にか終わっていて、ほかの乗客はもうジェットコースターを降りていて、ロッカーに置いた荷物を取っているところだった。スタッフの方も訝しげに私を見ているのに気がついて、慌ててジェットコースターから降りる。


「どうかした?」


「…なんでもないよ」


洸との思い出を言葉にしてアウトプットしてしまったら、今はまだ覚えている洸の手の温かさも私を呼ぶ声も、全部忘れてしまいそうで、それが怖くかった。


片瀬は特に気にした様子もなく笑って、「そっか」と流すとどこで貰ったのかこの遊園地の地図を広げた。


「ご飯とアトラクションどっち行く?」


「アトラクション」


「じゃあ次どこ行こっか?」


片瀬に問いかけられて、一緒に地図をのぞき込む。


この遊園地は、今いる悲鳴と急降下の島を中心に4つの島が並んでいる。それぞれご飯を売っていたり、メリーゴーランドとか子供用のアトラクションがあったり、ホラー系のアトラクションがあったり、シューティング系のアトラクションがあったりする。


「ここ行こっか!」


片瀬が指さしたのは、今いる島にあるアトラクションだった。名前はアップダウンモーション。名前の通り、乗り物が上がっては急降下してを繰り返すものだ。


片瀬が私の手を引いて歩き出す。やっぱり、洸の温かさに、似ている。私は置いて行かれないように隣に並んだ。


「洸、アップダウンモーション苦手だったよね」


片瀬の言葉に、軽く頷く。


「いつも、ぎゅっと目つぶっててさ。

4人出来た時なんか、下で待ってるって聞かなくて」


片瀬が話しているのはたぶん、私と片瀬と洸と洸の妹のここに来た時のことだと思う。本当は凛音が来るはずだったけれど、風邪をひいて洸の妹の夏希ちゃんと一緒に来た。3人で洸を苦手なジェットコースターに乗せたり、アイスを半分こして食べたりすごく楽しかった。夏希ちゃんと家族になったらこんな感じなのかな、なんて恥ずかしいことを考えたりもした。


アップダウンモーションは、基本的に建物の中を椅子に乗って上下するけど、1番高いところでは建物の外の景色が見える。私はそこが一番好きで、洸はその瞬間が1番嫌いだった。


「夏恋チャンはさ、まだ洸のこと好き?」


「え?」


アップダウンモーションの列に並んでいると、突然片瀬にそう問いかけられる。答えは決まっているのに、なぜかうまく言葉にできなくて、片瀬の視線から逃げるように下を向く。もう何年も愛用しているスニーカーが目に入る。つま先がもうぼろぼろになっていて、買い換えなきゃななんてどうでもいいことが頭に浮かんだ。


「……好き、だと思う」


掠れた声でそう言うと、片瀬が私の手を握る力が強くなった。


「そっか、じゃあ、今日は一緒に思い出巡りしよーよ。」


途中の売店で買ったポップコーンを口に放り込みながら、片瀬が優しく笑う。その笑顔がどうしても洸と重なって、泣きたくなった。


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